陸・海・空 人は腕時計でサバイブできるのか!? 【陸編】北米大陸間移動の安全性を 大いに高めた鉄道時計――ボール ウォッチ「トレインマスター スタンダードタイム」
時間を知ることは生きていくうえでとても重要なことです。では、時間さえわかれば人は過酷な環境下でも生き抜いていくことができるのか? そんな疑問を、いかなる環境でも「正確な時間を報せる」ことを宿命づけられた時計にまつわる3つのエピソードとともに、ひもといていきます。【陸編】
悲劇の事故から生まれた真の鉄道時計の歴史
19世紀後半のアメリカは、懐中時計の量産体制を築いていた時計大国でした。なかでも有名だったのが、ウォルサム、エルジン、ハミルトンの3社。加えて1896年に100万個の懐中時計を販売したという、インガソルの1ドルウオッチ「ヤンキー」もあり、懐中時計はアメリカで急速に大衆化。これらは1880年代以降、急速に北米大陸全土に拡張されていった鉄道に関わる人々の手にも渡っていきました。
当時、機関士や鉄道員は、上りと下りの鉄道の待避線を導く作業や、急行列車を駅などのポイントで通過させる安全確認を、自分の懐中時計を手にしながら行っていました。しかし、当時の時計は機械式のみで、しかも精度などに明確な基準はなかったようです。なにせ鉄道会社がアメリカ全土を4つの時間帯に分け、標準時を採用することを決めたのも1883年のこと(しかも、アメリカ議会がこれを正式に認可したのは1918年)です。
標準時間はあるが、個々の時計の精度は未確認。そんな状態が続いた1891年、ついに悲劇が起こりました。
それが、4月19日に発生した速達郵便列車「No.4」とアコモデーション号の衝突事故です。両列車の機関士と6名の乗務員が犠牲になった大惨事の原因は、アコモデーション号の機関士が手にしていた"4分遅れ"の懐中時計でした。これを突き止めた人物こそ、ボール ウォッチ創業者のウェブ・C・ボールなのです。
彼は事故の原因が「時間と時計」にあることを突き止め、鉄道関係者が持っていた時計に明確な基準を制定。標準時との誤差が30秒以上ある時計に調整を義務付ける他、視認性や耐久性などで、多くの項目を取り決めたといいます。この徹底したシステムはのちに腕時計にも適用され、北米を縦横無尽に走る鉄道の安全性向上に大いに貢献。ボール ウォッチが時間と時計を厳格な基準で標準化することで、鉄道を使ったアメリカの繁栄は成し遂げられたのです。
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