シチズンが開発を担うスーパーチタニウム製の月着陸船パーツの試作品が完成!! 腕時計で培ったチタン技術が、憧れの宇宙で活用されるまでの物語

硬質かつ軽量、さらに耐メタルアレルギーの特性を持つ「スーパーチタニウム」は、シチズンが独自に開発し、自社コレクションのケースやバンドなどに採用している。世界でもっとも進んだチタンである同素材は、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のランダー(月着陸船)の着陸脚の一部パーツに採用される予定となっており、7月30日にその試作品が完成したことが発表された。

宇宙への憧れから、実際に宇宙へと飛び出すシチズンのテクノロジー

シチズンは1970年、世界に先駆けてチタンケースウオッチ「X-8 クロノメーター」を発売した。当時、米ソの対立で知られるように宇宙開発が盛んで、この分野で使われていたのがまだ未知の部分が多かったチタンだったのである。軽く、サビに強いことで知られていたが、加工が難しいため一般的ではなかった。しかしシチズンはいち早くこのマテリアルに着目し、次々と革新的な技術とプロダクトを生み出してきた。その現在地こそ、ステンレスの約5倍の表面硬度と平滑な鏡面仕上げを可能にする「スーパーチタニウム」だ。

2000年に独自に開発した表面効果技術「デュラテクト」の進化により、ステンレススチールはもちろんチタン(デュラテクトで加工することでスーパーチタニウムとなる)であっても、現在では様々なカラーリングを施すことができる。これによってバリエーションは無数に増え、好みに合わせた新しい時計選びの提案「FTS( ファイン・チューニング・サービス)」も誕生。傷や打痕への強さ、さらにはゴールドのような美しい表現を獲得するに至ってる。

 

最新こそ最良を示す世界限定550本のアニバーサリーモデル

6月に発表された「サテライトウェーブ GPS F950 チタニウム技術50周年記念モデル」は、半世紀におよぶシチズンのチタン加工技術の集大成といえる逸品。デュラテクトDLCとデュラテクトサクラピンクを施したスーパーチタニウム製のケースとバンドは、エッジの効いた直線的なラインで構成されており、チタンでは極めて困難といえる立体的な造形美を生み出している。そしてGPS衛星と繋がって正確な時刻を表示するサテライトウェーブのコンセプトは、ずばり“宇宙”。バンドの形状は人工衛星がソーラーパネルを広げているイメージで、6層構造の文字盤は宇宙空間の無限の奥行きを彷彿とさせるものだ。

サイズは直径47.5mmとやや大型だが、スーパーチタニウムのメリットを生かした軽量な仕様。得意とするブラックの高級感はもちろん、悲願としていたゴールド色はベースがチタンであることを忘れさせてしまうほどの輝きを放つ。さすが、集大成と位置付けるだけのことはある!

シチズン「サテライトウェーブ GPS F950 チタニウム技術50周年記念モデル」Ref.CC4025-82E 55万円/エコ・ドライブGPS衛星電波(自社製Cal.F950)。スーパーチタニウムケース&バンド(デュラテクトDLC、デュラテクトサクラピンク加工)。直径47.5mm(厚さ14.7mm、設計値)。10気圧防水。2020年冬発売予定。世界限定550本

 

地上から約2万km上空を周回するGPS衛星から、位置・時刻の情報を取得して時刻とカレンダーを自動で修正する本機。その外装素材にも使われているスーパーチタニウムの性能が認められ、同様のものが月面へと降り立つ「HAKUTO-R」のランダーにも採用されることになっている。

スーパーチタニウムで作られているのが、ランダーの着陸脚の回転軸および連結部。表面硬化技術「デュラテクトDLC」が使われており、耐傷性が高められ、表面が滑らかになるため耐摩耗性においても優れている

 

宇宙分野にインスパイアされた50年前から、シチズンのチタン技術は実際に宇宙へと飛び出すことになる。先人たちから受け継がれてきた飽くなき探求心と情熱が、憧れだった宇宙をチャレンジの場へと導いたストーリーは、実にドラマチック。2022年に「HAKUTO-R」が月へと旅立つその日まで、スーパーチタニウムはさらなる改良が加えられることになる。それはやがて、シチズンの腕時計の技術的進化として還元されるに違いない。

 

問い合わせ先:シチズンお客様時計相談室 TEL.0120-78-4807
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