創業92年の老舗が手掛けるウォッチ&ジュエリー販売会「TOMIYA 創業祭」の取材から見えてきた選ばれる時計店のセオリー

<取材協力>
トミヤ(TOMIYA)

高級時計や高価なジュエリーを購入する際、店選びは何を基準とするべきか? この問いかけに対して大半の人は、信頼感や安心感のある店を優先すると答えることだろう。では、信頼や安心は何に裏付けられるものかといえば、ずばり実績だ。創業92年を誇る【トミヤ】は、国内において最も実績のある腕時計正規販売店のひとつで、毎年7月の第一週にウォッチ&ジュエリー販売会「TOMIYA 創業祭」を開催していることでも知られている。2024年は7月5日(金)〜8日(月)までの4日間にわたって実施された。この一大イベントを主催者と来場者それぞれの目線からレポートし、選ばれる時計店の在り方について探る。

高級時計店とは異なる雰囲気が巨大会場を包む

 

高級時計を販売しているショップといえば、一般的には重厚な店構えで、初訪問時は入店しにくいという感想を抱くことだろう。長い歴史を有する“老舗”となれば、さらにそのハードルは上がってしまう。だが、カメラがとらえたTOMIYA 創業祭の様子を見てもらえば、そのイメージは払拭される。高級時計店の厳かな空気とは相反する、楽しげな雰囲気で会場が満たされていることが容易に想像できる。来場者を応対するスタッフたちにも笑顔があり、談笑している姿が印象的だ。これはTOMIYA 創業祭に限ったことではなく、普段のトミヤ各店でも見られる光景。スタッフの明るさこそが、トミヤが長く愛されている理由のひとつとなっている。


↑創業から92周年を数え、TOMIYA 創業祭は今年で第18回目を迎えた。“旅”をイメージさせる仕掛けが会場の至るところに散りばめられている。

 

地元への想いがTOMIYA 創業祭を続けるきっかけとなった

「2024年のTOMIYA 創業祭は、“旅”というコンセプトのもと、スタッフ一同で作り上げました。つい数年前まで、コロナによる行動制限があって旅を楽しむことができない環境でした。この経験を経て、旅が心を豊かにしてくれることや、自由に行動できることの魅力を改めて認識された方も多かったことでしょう。今回の創業祭では、旅に連れ出したくなるようなアイテムを揃え、会場には旅行のワクワク感を擬似体験してもらえるような装飾や工夫を凝らしました」


↑主催者としてインタビューに答えてくれたのは、トミヤコーポレーション代表取締役社長・古市聖一郎さん。

 

そう語るのはトミヤコーポレーションの代表取締役社長、古市さん。1979年生まれの若きリーダーは、トミヤには2003年に入社。2010年には祖父と父を継いで3代目社長に就任し、有名無名を問わずあらゆるブランドに目を向けて、西日本を中心に出店している店舗で時計の魅力を発信してきた。独立経営の時計店としては、トミヤは売り上げ実績でも取り扱いブランド数でも国内有数の規模を誇る。そんなトミヤでマルチブランドを展開しているのが、創業の地である岡山市内表町の複数店舗と、トミヤ初の郊外型大型店となった倉敷店、さらに中国エリア最大の都市にある広島店。これらで扱われている時計とスタッフ約120人が一堂に介し、4日間で来場者数2000名以上という巨大なウォッチ&ジュエリー販売会がTOMIYA 創業祭だ。


↑TOMIYA 創業祭 2024のエントランス。毎回、“夢の世界”への入り口のような演出で楽しませてくれる。左が取り扱いブランドの紹介、右が旅客機の窓のモチーフ。

 

「時計ブランドだけでも例年、30ブランド以上を集めています。今回新たに加わったのがタイムアートで販売がスタートしたばかりのジェラルド・チャールズと、まだトミヤでは取り扱いのないユリス・ナルダンです。反響が気になるところです。もちろん高級時計だけでなく、カジュアルなところではG-SHOCKから揃えており、ジュエリー、アイウェア、ライフスタイルアイテムまで、ファミリーでご来場いただいても十分に楽しんでいただくことができます。お父さんもお母さんも寛ぎながらショッピングをしていただくため、専門スタッフが常駐するキッズルームも毎年設けています」


↑TOMIYA 創業ではキッズルームが設けられており、毎回好評を博している。そのほか大人も楽しめるマジックやバルーンアートのサービスも用意。

 

筆者は創業祭の初日と2日目に取材に入ったが、両日とも開店時から来場者が途絶えることなく、大いに盛り上がっていた。その多くは岡山周辺の地元の人々だが、中にはかなりの遠方から足を運んだ人もいた。

「たくさんの方にご来場いただいていることは、トミヤへの信頼と期待の深さでもあり、大変励みになっています。今回で18回目となった創業祭ですが、コロナの影響下にあった年には中止を検討したことがありました。万全の感染症対策を講じれば開催に問題がないことはわかっていましたが、イベントやフェアの多くが自主的にキャンセルされる時期だったためです。しかし地元のお客様から開催を望む声をいただき、予約制による時間帯を分散させたご来場方法を取らせていただき、無事に実施することができたのです。この出来事も1932年創業の歴史も、岡山や中国エリアの皆様のご愛顧とご支援があってこそ。創業祭はその感謝の表れです。そして地元を元気にしたいという想いもあり、今後も継続していく方針です」

 

来場者が語るTOMIYA 創業祭の魅力とトミヤを選ぶ理由

顧客と地元への恩返しを込めた主催者の想いが、TOMIYA 創業祭を類を見ないウォッチ&ジュエリーの販売イベントとしている。これを受けて、来場者はどのような点に魅力を感じているのだろうか。また、数ある時計店の中でもトミヤを選んだ理由についても尋ねた。そこから垣間見れたのは、トミヤスタッフたちの真摯な接客とやはり明るさだった。

来場者1 T.Kさん(40代)の場合

トミヤとは10年来の関係というT.Kさんは、この日、グランドセイコーを目当てに来場。最新の白樺ダイアルモデルを検討中のところ、話が聞けた。

「TOMIYA 創業祭は、毎年の夏の楽しみのひとつです。これだけの数のブランドを一気に見れるのが、このイベントの醍醐味ですし、他では味わえない特別な体験です。私は時計も日本製にこだわりたく、いま着けているグランドセイコーもスタッフさんに勧めてもらい、購入に至りました。顔馴染みのスタッフさんもいらっしゃいますし、前もって連絡しておけば担当の方が対応してくれるので安心感があります。そうしたアットホームな環境作りや、心配りが行き届いたサービスがトミヤを利用している理由です」

 

来場者2 タカトリさん(40代)の場合

TOMIYA 創業祭は初訪問というタカトリさん。時計選びは直感を大切にしていると語り、この日も気になるモデルと運よく出会えたようだ。

「時計は価格で決めるのではなく、着用したときのフィーリングの良さを重視しています。初めての本格時計として手に入れたチューダーも、今日着けてきたエドックスもトミヤの店頭で気に入って購入したものです。スタッフさんはどなたも温かく、気さくに話しかけられるお店なので度々訪問しています。今日のイベントはお祭りに似た楽しい感じもあって、来てみて正解でした。富士山をモチーフにしているというホワイトダイアルが印象的な、日本限定のノルケインとも出会えたのでとてもラッキーです!!」

 

来場者3 トミタさん(30代)の場合

TOMIYA広島店の常連というトミタさんは、多くのブランドから気になる時計を一度に集めて見比べられる場として、創業祭を楽しみにしていたとのこと。クラシックスタイルでありながら、ひと工夫のある時計をリサーチ中だった。

「TOMIYA広島店でブランパンの取り扱いがスタート(2024年2月)したと聞き、さっそく訪問してこのフィフティ ファゾムス バチスカーフを購入しました。レトロなデザインでありながらスポーティなルックスで、コンパクトなところにも惹かれましたね。今日はクロノスイスのレギュレーター クラシックを見てみたかったんです。創業祭では、住んでいる広島では見ることができないブランドのレアな時計を試着できたり、メーカーの人とも直接話しができるため貴重な機会ですね。これからも続けてもらいたい」

 

来場者4 ノブアキさん&ミホさん(20代)の場合

早朝に九州地方を出発し、およそ6時間をかけてTOMIYA 創業祭の会場にたどり着いたご夫婦。ノブアキさんの時計趣味が高じて、今ではミホさんもコレクターに! 互いに似合う時計を選び合う姿が、微笑ましい限りでした。

「待ちに待ったTOMIYA 創業祭。どのブランドのどんな時計が見てみたいか、そうした会話で持ちきりの道中だったため長いドライブも苦ではありませんでした(笑) 今日着けてきたお気に入りのタグ・ホイヤーのモナコとベル&ロスは、それぞれトミヤが運営している福岡のタグ・ホイヤーとベル&ロスのブティックで購入したもの。親身になって相談に乗ってくれるスタッフさんの心遣いが嬉しく、それ以来度々寄らせていただいています。今日もスタッフさんにお勧めを教えてもらいながら、二人にとってのお守りとなるような時計を見つけたいですね」

 

〈時計をマルチブランドで展開するトミヤ各店〉

◆トミヤ タイムアート店


↑2階に最高峰のパテック フィリップとウブロを、1階にチューダー、グランドセイコー、ジラール・ペルゴ、ベル&ロスなどのメジャーブランドを揃える。

TEL:086-235-1038
住所:岡山県岡山市北区表町2-2-60
営業時間:11:00~19:30
定休日:火曜

 

◆トミヤ ユーロサロン店


↑カルティエを筆頭に、ブレゲ、ブランパン、ジャガー・ルクルト、ブルガリ、ショパールといった本格派マニュファクチュールブランドのコーナーを設置。

TEL:086-232-1038
住所:岡山県岡山市北区表町2-2-58
営業時間:11:00~19:30
定休日:火曜

 

◆トミヤ メカミュージアム店


↑入口からブライトリング、IWC、ゼニスといった人気ブランドが並び、吹き抜けを上がった2Fにはパネライとロジェ・デュブイの独立コーナーが設けられている。

TEL:086-226-1038
住所:岡山県岡山市北区表町2-1-39
営業時間:11:00~19:30
定休日:火曜

 

◆トミヤ クロノファクトリー店


↑G-SHOCKのコンセプトショップ「EDGE」、日本初の「エドックスギャラリー」など、全国でも珍しいコーナーを設置。ボーム&メルシエやハミルトン、ティソといったファースト時計に最適なブランドも多数。

TEL:086-223-1038
住所:岡山県岡山市北区表町2-2-61
営業時間:11:00~19:30
定休日:火曜

 

◆トミヤ 倉敷店


↑2019年にオープンしたトミヤ 倉敷店は、倉敷ICから10分以内という好立地。駐車場を完備しており、ロレックス、チューダー、ブライトリング、タグ・ホイヤー、ゼニス、ジラール・ペルゴなどを揃える。

TEL:086-430-1038
住所:岡山県倉敷市宮前380-119
営業時間:11:00~19:30
定休日:火曜

 

◆トミヤ 広島店


↑広島市を代表する繁華街・袋町に立地。県内唯一の取り扱いとなるウブロをはじめ、シャネル、IWC、ジラール・ペルゴ、ブランパン、ブルガリ、ショパールといった本格派を集めている。

TEL:082-236-6690
住所:広島県広島市中区袋町1-15-1
営業時間:11:00~19:30
定休日:水曜

 

トミヤ公式サイト https://www.tomiya.co.jp/

Text/山口祐也(WATCHNAVI編集部) Photo/鈴木謙介

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