高級時計専門店にあるG-SHOCKのコンセプトコーナー【EDGE】の誕生と現状を訪ね歩く<岡山・トミヤ クロノファクトリー表町店編>

2006年、G-SHOCK販売の在り方にまったく新しい道が拓かれた。「EDGE」と銘打たれたG-SHOCKコンセプトショップの誕生である。それから17年余りが経ち、高級舶来ブランドを展開する有力時計専門店のみで展開される「EDGE」はどのような歴史を重ねてきたのか。G-SHOCK誕生40周年の節目に、導入各店の取材を通じてその存在意義を改めて考察する。シリーズ第2回は、岡山の表町商店街にある【トミヤ クロノファクトリー表町店】を訪ねた。

TEXT/Daisuke Suito(WATCHNAVI) PHOTO/Atsuyuki Shimada

トミヤの企業方針に合致したEDGEの展開

トミヤは岡山を中心とし、主に関西以南にて系列店舗を展開している日本の有力正規店。本拠地は、全長1kmにもなるアーケード街「表町商店街」の下之町エリア。ここにコンセプトの異なる複数の店舗を構えている。G-SHOCKコンセプトコーナー「EDGE」は、比較的買い求めやすいアイテムが揃う「クロノファクトリー表町店」にて展開。

手前が「トミヤ クロノファクトリー表町店」 岡山県岡山市北区表町2-2-61●086-223-1038。その横には高級時計を扱うトミヤの系列店「タイムアート店」「ユーロサロン店」が続く

店内ではプレミアムラインMR-Gを筆頭に、高価格帯から定番品、BABY-G、G-MSまで250本以上のバリエーションに富んだラインナップを見ることができる。EDGE導入の背景を、代表取締役社長の古市聖一郎さんに聞いた。

「クロノファクトリーは、2008年にオープンしました。その以前から機械式時計のブームが起きていて、私たちも2000年代前半から本格的に取り扱いを始めたのですが、そうするとメインはどうしても高額品になっていく。もっと気軽に時計選びを楽しんでいただきたい、という思いで立ち上げたのがクロノファクトリーです。そしてその店舗の主力となる存在がG-SHOCK。EDGEとして展開できるG-SHOCKの品揃えは、とてもありがたい話でした」

クロノファクトリー表町店は2017年のリニューアルを経て現在の内装に。EDGEを象徴するアルミの巨大オブジェが映える

クロノファクトリーがオープンした2008年はG-SHOCKが誕生25周年を迎えた年でもある。これは高級時計専門店でG-SHOCKを専用コーナーで扱うという、EDGEの構想が立ち上がってから2年近くを経てからのスタートだった。

「EDGEを始めた当初から、G-SHOCKはずっと右肩上がりで売れ行きを伸ばしています。ただし、当初は高額モデルへの需要が今よりも低く、例えば2010年に出た300本限定、30万円以上する村上 隆さんとのコラボフロッグマンがしばらく店頭にあるような状況でもありました。ちなみにこのモデル、現在はオークションサイトでのプレ値がすごいことになっていますし、それでも欲しい人がたくさんいるでしょう。店頭にしばらくあった当時の自分に『買っておけ』と言いたいぐらい(笑)。それほど、G-SHOCKの高価格帯の需要は伸びていますね」

岡山を拠点にする創業91年の名店トミヤ コーポレーション代表取締役社長・古市聖一郎さん

編集部がMR-Gのような高額品を記事にすると、たまに「G-SHOCKも高くなったもんだ」という声が届く。だが実際は、期待に応える手の届きやすい1万円台からのエントリーもある。要するに高くなったのではなく、幅が広くなったのだ。そして、そうしたネガティブな声をよそにクロノファクトリーのEDGEでも、G-SHOCKは高価格帯を含め好調に売れているのである。

店舗の入り口、EDGEの手前にはカシオコーナーも展開。G-SHOCK以外にも多くの時計を見ることができる

「私たちトミヤは、超高額品を社員一丸となって販売するのではなく、多くの方々がお買い物を楽しんでいただけるようなお店でありたいと思っています。こうした思いを社員と共有するうえでも、G-SHOCKの存在は欠かせませんね。EDGEを展開できて本当に良かったです」

取材後記

現在のEDGEは全国にわずか7店舗のみ。しかも、それらは主に2007年〜2008年の時期にオープンしたショップである。きっと今なら多くの時計店がEDGEのオープンを希望するはず。一方で、製造に手間のかかるMR-GやMT-Gのような高額品を十分に流通させるには、これ以上EDGEを増やせないという事情もあるに違いない。そうした背景もあって、古市社長はインタビューで感謝の意を表したのだろう。今回の取材を通じて、G-SHOCKほどトミヤの理念に相応しい時計はないのではないか、とさえ感じた。パテック フィリップを筆頭とするハイエンドブランドも扱うトミヤだが、リーズナブルなイメージのあるG-SHOCKにも等しく敬意を表する。そうした姿勢が、90年以上の歴史を重ねてきた理由なのかもしれない。

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