極上のエナメル文字盤は一見の価値アリ! 古の風が感じられる港街・横浜で60年続く老舗が別注した限定ウオッチの魅力とは

「大きな港湾都市には時計の名店がある」。これは筆者の見解だが、例えば名古屋・大阪・神戸などは歴史的に栄え、いずれも日本を代表する港湾都市として知られている。横浜も港のあるシンボル的な都市で、その発展とともに大きくなったのが横浜元町だ。このショッピングストリートには「COMMON TIME 横浜元町本店」という時計の名店があり、運営母体である株式会社 CHARMYが設立60周年を迎えるにあたって特別な限定ウオッチをプロデュース。全国から問い合わせが届いているというこの話題作について、同店のゼネラルマネージャーに詳細を尋ねた。

海や港をイメージさせる機械式時計ブランドとのコラボレーション

 

COMMON TIMEは横浜元町の本店を含めて横浜市内に3店舗、加えて東京・渋谷に店舗を構える腕時計の正規販売店だ。流行に左右されない不変の価値や万全のアフターサービスを整えている本格派の機械式時計ブランドを取り扱っており、多くの時計好きから頼りにされている。熱心なファンも多いCOMMON TIMEだが、ルーツであり、現在も横浜元町を中心に店舗を展開するジュエリーブランドの「CHARMY」が今年、設立60周年を迎えた。これを記念して企画されたのが、ショップとのコラボレーション例が極めて少ないスイス/ル・ロックルの名門ユリス・ナルダン(創業1846年)との共作だ。長年にわたって時計販売に従事されているCOMMON TIMEの佐藤さんは、今回のコラボウオッチを次のように語る。


↑COMMON TIMEを牽引する横浜元町本店のゼネラルマネージャー、佐藤さん。今回の記念コラボウオッチのプロデュースに尽力した。

 

(佐藤さん)「ショップオーダーによるこれまでにないアニバーサリーモデルであること、本物志向のコレクター様にもご満足いただける仕様であること、そして末長く愛用していただけること。欲張りと言われてしまいますが、これらに適う60周年を祝うにふさわしい時計を目指しました。ブランドをセレクトするうえでは、横浜=海というイメージを第一に、かつてマリンクロノメーター(船舶用の高精度時計)をいくつも製造した歴史を持ち、ロゴにアンカーのマークを使用していて、COMMON TIMEで長年取り扱っている縁の深いユリス・ナルダンに決定。定番として根強い人気を誇るマリーンコレクションをベースモデルとして採用しました」


↑エナメル文字盤の多色使いも高度な技術がなければ実現不可能。名窯ドンツェ・カドランだからこそ成し得た。

 

マリンクロノメーターをルーツとするマリーンといえば多岐のバリエーションを揃えているが、その中でも基本となるマリーン トルピユールを選択。ブランドの顔といえる一本だが、COMMON TIMEが今回のコラボモデルにかける情熱は凄まじく、ユリス・ナルダン本社もその熱量に突き動かされる部分があった。

「ユリス・ナルダンといえば、最高品質のグラン・フー エナメル文字盤で名を馳せるドンツェ・カドランを傘下に収めており、度々リミテッドモデルでこの工房が製作した希少なエナメル文字盤を使用しています。過去にマリーン トルピユールのエナメル文字盤モデルもいくつかありました。コラボモデルでは是非ともこのドンツェ・カドラン製のエナメル文字盤を使いたかった。しかもシンプルな一枚文字盤ではなく、上下のインダイアルを別パーツとする三枚構成のエナメル文字盤としてです。このひと手間により、立体感が生まれて視認性が向上しますし、美しさも際立ちます。たった4cmほどの小さな文字盤だからこそ、わずかなディテールの差が格段の違いを生み出すのです。いわゆる“サンクダイアル”を最高峰のエナメルで作り上げることができ、大変満足しています(笑)」

COMMON TIMEのこだわりはこれだけに留まらない。オーナーだけがじっくり楽しめるサファイアクリスタルバックにも、特別な仕掛けを設けた。

「ユリス・ナルダンでは初となる22Kゴールドローターを採用しています。自社ムーブメントの作りや仕上げにも定評のあるユリス・ナルダンですから、せっかくならシースルーバックからの眺めも堪能していただきたいと考えてオーダーしたものです。ですが、三枚構成のエナメル文字盤と同様、通常とは大きく異なる仕様変更のためユリス・ナルダンといえども最初は難色を示していました。しかし屈指の名門マニュファクチュールの技術力を私たちは信じていましたし、スイスの本社が時間がかかっても期待に応えようと努力してくれたことで、ユリス・ナルダン初の22Kゴールドローターが実現したのです」


↑デザインから素材、そしてストーリーまで、時計通も愉悦に浸れるラグジュアリーなマスターピースが誕生。

 

これらだけでも十分に特別なマリーン トルピユールだとわかるが、そのほかにもローマ数字インデックスの「Ⅻ」を深紅に、スモールセコンドの「60」を60周年にちなんだブルーに、ケース左側面には「00/60」の通し限定ナンバーをあしらったメタルプレートを青焼きネジで留めるなど、本格時計を知り尽くすCOMMON TIMEならではのユニークなアレンジが散りばめられている。

「今回のコラボレーションモデルには構想から数えておよそ2年を費やしました。これも、長年にわたってCOMMON TIMEとCHARMYをご愛顧いただいているお客様への感謝の想いを、特別な時計という形で示したかったためです。細部の細部までワガママを聞き入れてくれたユリス・ナルダンには感謝しかありません。エナメル文字盤は単に美しいだけでなく、色褪せずに艶やかさを永年保つことも魅力です。この時計が、お客様とCOMMON TIMEを永年繋いでくれる存在になることを願っています」

COMMON TIMEのモットーは「ひとりでも多くのお客様に、少しでも長く使っていただきたい」。その延長上に生まれたのが今回のコラボモデルだ。横浜は幕末に開港都市となり、スイス時計が正規ルートでもたらされた最初の地でもある。当時すでにユリス・ナルダンはマリンクロノメーターや懐中時計で名を轟かせており、1864年横浜港の商館エリアに設立されたファブル・ブランド商会によって日本へ輸入されていた。さらに横浜は、かつてマリンクロノメーターが搭載された船舶が行き交い、その修理・整備を長年行ってきた宇津木計器のような海洋製品のプロフェッショナルが存在するなど、ユリス・ナルダンと実に縁が深い。そして同ブランドの魅力を広く発信してきたのがCOMMON TIMEだ。数々のエピソードと共に古の風が感じられる港街のこの名店で、海の守護神たるユリス・ナルダンの別注モデルを手にすることは、いつも以上の感動体験となるに違いない。

 

CHARMY設立60周年のアニバーサリーモデル


ユリス・ナルダン「マリーン トルピユール COMMON TIME限定モデル」 Ref.1183-310LE-0AE-J/1A 258万5000円

小型の高速船に由来するネーミングが与えられた2017年デビューの定番コレクション「マリーン トルピユール」をベースに、COMMON TIMEならではのアレンジを加えた60本限定のレアピース。高温焼成によって作られるグラン・フー エナメルの特別文字盤に、時刻表示のほか、スモールセコンド、パワーリザーブインジケーター、カレンダーの表示を配する。独自テクノロジ―を駆使し、シリコンに人工ダイヤモンドを組み合わせたプラズマ表面処理(ダイアモンシル)を施したエスケープメント(アンクル・ガンギ車)とシリコン製ヒゲゼンマイを搭載。COMMON TIME 横浜元町本店での取り扱いで、ストックは残りわずか。

スペック:自動巻き(自社製Cal.UN-118)、毎時2万8800振動、約60時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)、アリゲーターストラップ。直径42mm。5気圧防水。

 

COMMON TIME 横浜元町本店で「ユリス・ナルダン フェア」開催

■開催期間:2024年11月1日(金) ~ 12月1日(日)まで
■開催店:COMMON TIME 横浜元町本店、COMMON TIME 渋谷公園通り店 ※詳細は、いずれかの店舗へお問い合わせください。

 

【COMMON TIME 横浜元町本店】


TEL:045-662-0041
住所:神奈川県横浜市中区元町3-120
営業:11:00~20:00
定休日:元日

https://common-time.jp/

 

※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。

Text/山口祐也(WATCHNAVI編集部) Photo/鈴木謙介(インタビュー)

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