アウトドア向けG-SHOCKの進化版【塵や泥に強いマッドマン】に待望のニューモデル/開発者が語るスリム化のための創意工夫

2023年4月12日に【G-SHOCK】は“満40歳”を迎え、ファンとともに祝福する40周年記念イベントを開催したほか、話題のアニバーサリーモデルを次々とリリースしている。いま最も注目すべき腕時計ブランドといえるこのG-SHOCKが、およそ12年ぶりとなる「MASTER OF G マッドマン」新作を発表した本記事では開発者へのインタビューを通し、最新作「GW-9500」の魅力に迫る。


↑新マッドマンのオリーブカラーモデル「GW-9500-3」

サイズの見直しによって実用性に優れるマッドマンが誕生

 

陸・海・空それぞれの過酷な環境に対応するプロフェッショナルウオッチとして知られるMASTER OF Gにおいて、海の「フロッグマン」(1993年初出)に続いて登場したのが、陸の「マッドマン」(1995年初出)だ。G-SHOCKの持ち味である耐衝撃性に加えて、防塵・防泥という特殊機能を備える本格派として、28年にわたるロングセラーを記録している。新作「GW-9500」の解説に入る前に、ここでマッドマンのヒストリーを振り返りたい。

<1985年>マッドレジスト構造を初搭載したプロトモデル


DW-5500C-1

一体型のウレタンカバーが塵や泥の侵入を防ぐマッドレジストを備えた「DW-5500C-1」。マッドマンのプロトモデルと呼べる一本で、初代G-SHOCKのフォルムを踏襲するユニークなスクエア型だった。ベゼルに印されている通り、G-SHOCK Ⅱという位置付けも興味深い。

 

<1995年>ディスプレイの下部に「MUDMAN」が入る


DW-8400-1

「マッドマン」と名乗った最初のG-SHOCK。“3つ目”として親しまれるDW-6900をベースにマッドレジストを取り入れ、防塵・防泥を実現した。MASTER OF Gの証として、スチール製のパネルバックにドリルを持ったモグラのイラストが初めてあしらわれたモデルでもある。

 

<2006年>デュアルイルミネーターを搭載して闇にも強く


G-9000-1

光透過性のある文字盤を使い、文字盤と液晶部の両方に備えたEL素子によってフェイスを明るく照らすデュアルイルミネーターを採用。モータースポーツのメカニックマンが着用することを想定し、砂塵も防ぐ画期的なマッドレジストを備えるほか、1000時間計測ができるストップウオッチも搭載。

 

<2006年>マッドマンが初めて電波ソーラーモデルに


GW-9000-1

マッドレジストを搭載しながら、標準電波から時刻情報を取得するマルチバンド5とソーラー発電のタフソーラーを装備。製造期間が短かったが、高い機能性や5つのインジケーターを持つ個性的なデザインで愛された。ケースバックにはアンテナを持つモグラのイラストが描かれている。

 

<2008年>ラリーレースに適するスペック&デザイン


GW-9010-1

GW-9000-1の後継機として生まれ、電波受信機能がマルチバンド6へとバージョンアップ。コンセプトを過酷なラリーレースに耐えられるG-SHOCKとしており、本格的なタイムコントロール機能も備える。DW-8400-1から続いたフロントボタンの搭載は、本機で一旦終焉を迎える。

 

<2011年>電波ソーラー&ツインセンサーで多機能化


GW-9300-1

方位と温度を計測するセンサーが付いたことにより、マッドレジスト構造が見直されてデザインが刷新された5代目マッドマン。計測値をダイレクトに呼び出せるボタンを装備するほか、樹脂とカーボンファイバーの混合による特殊バンドをセット。マルチバンド6&タフソーラーも搭載。

2023年、トリプルセンサーを搭載するGW-9500が誕生


ポジ液晶のブラックバリエーション「GW-9500-1」

 

デジタル液晶モデルに絞り、過去に登場したマッドレジスト構造を備える6モデルを紹介した。こうして過去のマッドマンを振り返ると、野外活動に適した仕様に機能がアップデートされ、サブのインジケーターを含めて読み取りやすさも高まり、腕時計らしいスタイルへと進化を続けてきたことがわかる。GW-9500はこれらの系譜を継ぎつつ、トリプルセンサー(方位、気圧/温度、高度を計測)を備える待望のマッドマンといえる。

 

【GW-9500開発者インタビュー

今回、GW-9500のチーフプランナーである小島一泰さんと、デザインを担当した森 翔馬さんへのインタビューが実現した。お二人を含む開発陣が新マッドマンに求めたこと、こだわりのディテール、そして苦労などを率直に語ってくれた。


(左)小島 一泰さん
1992年にカシオ計算機に入社。2018年までデザイナーとしてG-SHOCKやプロトレックのデザインディレクションを担当し、2019年からはチーフプランナーとして従事。ハートレート搭載のDW-H5600や、バイオマス樹脂を採用したプロトレックの企画を推進する。

(右)森 翔馬さん
自動車メーカー、飲料メーカーにてデザイナーとして活躍後、2019年にカシオ計算機入社。G-SHOCKの伝統を重んじながら独自のアイデアを持ち込み、今回フィーチャーするGW-9500やDW-H5600といった新世代G-SHOCKのデザインに携わる。

真のプロフェッショナリズムを追求した結果のダウンサイジング

―― まずうかがいたいのが、新マッドマンの開発経緯です。前作から実に12年ぶりというのは長かったですね。

(小島さん)「ファンの皆様、大変お待たせしました。MASTER OF Gの中でもフロッグマンと並ぶ人気コレクションですから、かなり気合の入ったモデルとなっています。新しいモジュールを搭載しているのですが、その開発におよそ3年をかけました」

(森さん)「外装のデザインは、構成感を出すためにパーツを細かく分けて別体とし、CMF展開の幅が広がるようにしています。じっくり見ていただくと、あらゆるパーツが別体型になっていることに気付いていただけるはずです。これはダウンサイジングのためにも必要でした」

―― GW-9300に比べると、明らかに小さくなった印象です。

(小島さん)「今回の開発に先駆け、マッドマンやG-SHOCKを過酷な環境で着用されている消防士レンジャー部隊の方々からフィードバックをいただき、従来よりも薄く小さくすることを方針として定めました。そのような現場でミッションを行う方にとって、袖口に引っ掛かってしまうような腕時計は装備品として相応しくありません。プロの方にも認めてもらえる実用的なマッドマンを目指しました」


↑ケースの厚みは14.8mmで、トリプルセンサー搭載モデルとしては随一のスリムさ。ベゼルの出っ張りも少ない

 

―― スリム化のための工夫がフラットな設計ですね。

(森さん)「先ほども説明した別体式パーツやカーボンコアガードの採用により、スリムなデザインを実現しました。従来のマッドマンはベゼルに厚みがあったのですが、今回は四隅の爪のような部分がやや高くなっているだけに留めています。この爪を含むベゼルパーツは上下で分かれており、4本のビスは飾りではなくてベゼルから下層のミドルケースまで貫いて固定しています。これら複数のパーツを組み合わせた構造によって、MASTER OF Gの耐衝撃性をクリアするとともに、アウトドアツールを彷彿とさせるエクステリアの形成にも貢献しているのです」


↑複数のパーツからケースが構成されており、複雑な造形を可能にしている。これもカシオならではのCMFがなせる業

 

―― フラットな風防ガラスによって読み取りやすいですね。

(森さん)「風防は無機ガラス素材の削り出しで、外周を斜めに面取りしてリング状ベゼル(G-SHOCK、COMP、BARO、ALTIが刻印されているパーツ)との設置に段差がつかない工夫を凝らしました。そしてこのカッティングガラス自体に機能を意味する英字をプリントすることで、スペースを有効に利用しています」




↑無機ガラス風防の加工工程を順に追った写真。上から外周部の面取り前・後で、さらに外周をブラックに仕上げて機能表記文字をプリント

 

(小島さん)「ディスプレイには、デュプレックスLCDと呼ばれる2層液晶を採用しています。これはプロトレックで使われている先進テクノロジーで、G-SHOCKでは2000年代にデザインの一環として採用例がありましたが、MASTER OF Gでは初採用となります。しかも今回はノーマルなポジバージョン(GW-9500-1)と、反転のネガバージョン(GW-9500-3とGW-9500-1A4)の二種類を用意しました。いずれも、時刻や各種計測を表示する液晶と十字で示す方位角表示用の液晶を分けており、強い日差しの下での読み取りやすさも追求しています。もちろん暗闇ではLEDのスーパーイルミネーターが判読を助けます」

―― 薄型化による装着感の良さや、デュプレックスLCD液晶による視認性の向上など、新マッドマンは語りどころが多くこれまでにないバージョンアップといえそうです。象徴的なライト点灯用のフロントボタンも一新されましたね。

(森さん)「アナログ式のマッドマスターともレンジマン(GW-9400)とも異なる、新開発のパイプ型ボタンです。操作のしやすさを考慮して大型とし、たとえ泥水が浸入してもスムーズに排出される仕組みになっています。各センサーをワンプッシュで起動できる右サイドのダイレクトキーボタンも、フロントより径が小さいですが同様の設計です。このデザインも建設機械やレスキュードローンからインスパイアされたもので、GW-9500の特徴といえます」

(小島さん)「G-SHOCKの強みのひとつが、あらゆるプロの方々によって実際に使われ、その機能が評価されてきたことにあります。マッドマンはその最たるシリーズであり、今後もその役割りを求められることでしょう。泥や砂、水にさらされる過酷な環境に対応するGW-9500ですが、十分に実用的なサイズに収められたことによってアウトドアを楽しむ際にも利用できるG-SHOCKとなっています。そのようなニーズに応えるために3色のバリエーションを揃えるとともに、バイオマスプラスチック素材を使って環境意識の高まりを具現化しています」


↑植物由来のバイオマスプラスチックをケースやバンドに使用。当然、耐衝撃性や耐久性においてG-SHOCKのクオリティが実現されている

 

(森さん)「人気シリーズのメインデザイナーを担当することはプレッシャーでもありましたが、同時に楽しみが湧いてきましたね。開発時は外装のフォルムやカラーのわずかな差を確認するために、プロトタイプだけでも7本くらい作りました。腕時計という小さなプロダクトですが、とくにサイズがポイントですので実物に近い状態のモックアップが不可欠だったのです。アナログな手法ではありますがしっかり実物で確認しながら制作することこそ、G-SHOCKが皆様に愛され続けている秘訣であると考えています」

時代背景や新技術を取り入れながら、G-SHOCKはロングセラーブランドとして確立されてきた。その間に工場のオートメーション化も進んだが、同時にカシオでは古くからのモノ作り精神を重視している。森さんのように若い世代のデザイナーを抜擢しつつ、カシオウオッチの歴史を知る小島さんがコンダクターとして方向性を示す。そんな両者が手掛けた新マッドマンは、G-SHOCKの明るい未来を示唆する一本といえるだろう。


↑(中央)マウンテンパーカーにマッチしそうなオレンジが際立つ「GW-9500-1A4」。カラーバリエーションは全3色

 

≪トリプルセンサー搭載モデルのサイズ比較≫

新マッドマン「GW-9500」は、トリプルセンサーを搭載するG-SHOCKとして最薄クラスの製品厚を実現。しかも軽量なため、着用時のストレスが低減されている。


<新マッドマン>
GW-9500

<マッドマスター>
GWG-2000

<レンジマン>
GW-9400
3時 – 9時 52.7mm 54.4mm 53.5mm
12時 – 6時 56.7mm 61.2mm 55.2mm
厚さ 14.8mm 16.1mm 18.2mm
重さ 81g 106g 93g
搭載機能 ●タフソーラー
●マルチバンド6
●タフソーラー
●マルチバンド6
●アナログ
●タフソーラー
●マルチバンド6

 


G-SHOCK「GW-9500-3」 5万5000円/クオーツ(電波ソーラー)。バイオマスプラスチック+カーボン強化樹脂ケース、バイオマスプラスチックバンド。縦56.7×横52.7mm、厚さ14.8mm、重量81g。20気圧防水。

モデルの詳細はコチラ>>>

GW-9500/搭載機能一覧
●ショックレジスト(耐衝撃構造)
●トリプルセンサー(方位、気圧/温度、高度を計測)
●カーボンコアガード構造
●タフソーラー(ソーラー充電システム)
●マルチバンド6(日本・北米・ヨーロッパ・中国地域の標準電波に対応)
●デュアルタイム
●ストップウオッチ
●タイマー
●時刻アラーム
●フルオートカレンダー
●ホワイトLEDライト(スーパーイルミネーター、残照機能付き)

 

問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.0120-088925 https://gshock.casio.com/jp/ ※価格はすべて記事公開時点の税込価格です。

Text/山口祐也(WATCHNAVI) Photo/吉江正倫(時計)、鈴木謙介(取材)

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