<取材・撮影協力>
オメガブティック六本木ヒルズ
宇宙へ、深海へと、時計界随一の伝説的なストーリーを有する【オメガ(OMEGA)】は、先進的な技術力やデザインの優秀さで知られている。だが、オメガの魅力は製品だけではない。5年に及ぶ長期国際保証をはじめ、アフターサービスの充実にも力を入れているのだ。その一環として、2023年5月からオメガブティック(路面直営店)で始まった新しいワンストップサービスが、ブティックテクニシャンによるアフターケアである。
↑「オメガブティック六本木ヒルズ」。らせん階段を上がった2階フロアにワークベンチが設けられている
技術的な専門知識を持つ「ブティックテクニシャン」とは?
ブティックテクニシャンは、セールススタッフでありながら、オメガウオッチのメンテナンスや修理の技術と知識を持ったスタッフのこと。2024年1月現在、オメガブティック銀座本店、六本木ヒルズ、心斎橋の路面直営3店に、4名のブティックテクニシャンが在籍しており、今後も順次拡大の予定だ。その役割と意義について、「オメガブティック六本木ヒルズ」のブティックテクニシャン・中田慶太さんにインタビュー。もともと中田さんは接客のプロフェッショナルで、“良いものを修理しながら末永く大切に使う”という高級時計業界の考え方に共感し、ブティックテクニシャン制度をきっかけに時計のアフターケアについて勉強をスタートしたという。
(中田さん)「ブティックテクニシャンになるには、スイス本社から来日したトレーナーが2か月に渡って行う研修を受ける必要があります。研修ではメンテナンスのやり方はもちろん、カスタマーサービスのウオッチメーカーと同じように、自分で使うピンセットやドライバーなど工具のカスタマイズ方法まで学びます。この認定プログラムは欧米やアジアなどのオメガブティックでも共通の内容になっており、つまり、世界のオメガブティックで同じレベルのアフターケアサービスが受けられることになります」
↑整理整頓されたワークベンチに使用するメンテナンスツールが並ぶ
気軽に受けられる名門ブランドの「アフターケア」
これまでもブレスレットの付け替えやコマ調整にはブティックで対応していたが、1994年以降に発表されたオメガ製品については、新たに「精度チェック」「磁気帯びチェック」「防水チェック」「ワインディング、パワーリザーブテスト」「クリーニング(ケースとブレスレットに対して)」「電池交換」を、ブティックテクニシャンにお願いすることができるようになった。これらのサービス内容は、カスタマーサービスセンターで行われているオーバーホールの前段階に相当するものだ。
「1994年以降のモデルに限定している理由は、その年にオメガ製品の仕様が変わって、シリアルナンバーの刻印が裏蓋内からラグなどの外観から目視できる位置に変更されたためです。アフターケアサービスを始めるにはシリアルナンバーを確認する必要があり、そのため我々が裏蓋を開けられるのは、1994年以降のモデルに限られるのです」
嬉しいことに、アフターケアサービスを受ける当日に時計以外で必要なのは、購入店舗と日付の記載がある国際保証書(赤いカード)だけ。どの店舗で購入したかは不問のため、国内正規店だけでなく、海外の免税店などで購入した製品でもサービス対象となる。では、実際の作業内容を中田さんの解説と写真で追ってみよう。
↑「お客様の時計をお預かりしたら、まずは外装チェックから始めます」と中田さん。傷の有無を確認するだけでなく、実際にプッシュボタンを押して、正しく機能しているかもチェックする
↑「一番多い案件は、季節によってブレスレットとレザーを交換される方や、コマ調整のご依頼です」。ラグやブレスレットに傷をつけない自信があるユーザー以外は、ブティックでお願いしたほうが安心だ
↑コマのねじ留めのような簡単な作業であっても気を抜かない。「スイス本社のマニュアルで定められたトルクで締めるため、トルクドライバーを使います」
↑「マスター クロノメーター認定モデルは6姿勢で精度チェックを行い、それ以外はキャリバーにより決められた姿勢数での精度チェックとなります。日差とビートエラーは我々が調整しますが、振り角の異常はカスタマーサービスで対応します」
↑磁気帯びチェック中。「もし磁気を帯びていたら、そのまま同じ装置で磁気抜きが可能です」。日常生活のあちこちに磁気があふれる現代、マスター クロノメーターでない時計にとっては極めて重要なテストだ
↑空気圧で防水性をチェック。合格すればグリーン、不合格ならレッドに光る。「5気圧防水まで確認できます。10気圧防水以上のテストは、カスタマーサービスで対応します」
↑ブレスレットのクリーニングに対応。「超音波洗浄機で10分~15分。その後にじっくりと乾燥ドライヤーをかけ、トータルで1~2時間かかります」
↑「汚れの程度や場所によっては柔らかいブラシも使用します」。中田さんの丁寧で的確な作業は、見ていて安心感がある
↑「特にメタルバックのモデルはムーブメントを見る機会がめったにないため、メンテナンス作業を熱心にご覧になるオーナーの方も多いですね」
↑ワークベンチを内側から拝見。「すべてスイス本社から納品された機器を使用しています」。クオーツモデルのバッテリーチェッカーやワインディングマシンも常備
ブティックテクニシャンによるアフターケアサービスは、基本的に時計をブティックに預けることになる。空き状況については電話での事前確認がお勧めで、運よく順番待ちがなければ、磁気帯びチェックや磁気抜き、精度チェック、防水チェックなどは、店内で待っている間に作業が終わって愛機を持ち帰れることもあるという。
「ブレスレットのクリーニングですと、2時間ほど六本木ヒルズでショッピングや映画を楽しんでいただいたあと、ブティックに立ち寄っていただければ、きれいになったモデルをお渡しすることも可能です。いずれにしても、時計の製造年代や状態によっても変わりますので、まずはご相談ください」
ブティックテクニシャンは“かかりつけ医”
この新しいワンストップサービスの最大のメリットは、スピードと利便性にある。公認ウオッチメーカーが常駐するカスタマーサービスセンターが“大病院”だとすると、アフターケアサービスを担当するブティックテクニシャンは“かかりつけ医”。もし愛用時計の時間が極端に遅れ始めたら、多くのユーザーはカスタマーサービスセンターへ行く前に、身近なショップへ向かう。そこに技術的な知識を持ったブティックテクニシャンがいて、アフターケアサービスで解決すれば万々歳だ。場合によっては、メーカー修理(カスタマーサービス)へスムーズに橋渡しすることもできる。たとえば“故障かも……?”と悩んでいるユーザーの話を店頭で聞き、その症状から予想されるトラブルの原因や修理内容、おおまかな納期の見込みや見積もりなどを、その場で伝えることもできるのだ。
「オメガは新技術の開発に積極的ですから、ブティックテクニシャンとしても常に最新技術について勉強しないといけません。たとえば、日差0~+2秒の超高精度を実現するスピレート™システムが2023年に製品化され、その精度調整も将来的にブティックで受け付けることになりそうです」と中田さん。そして最後に「ブティックテクニシャンはお客様とのコミュニケーションを重視していますので、まずはお気軽にお声かけください」と呼びかけた。
サービス対象となるオメガの時計をお持ちの方は、ぜひ一度ブティックテクニシャンに相談してみてはいかがだろうか。愛用モデルの状態がわかるだけでなく、最新モデルの特徴などについても詳しく教えてくれる。そして帰るときにはきっと、来たとき以上にオメガが好きになっていることに気づくはずだ。
【オメガブティック六本木ヒルズ】
TEL:03-6434-9505
住所:東京都港区六本木6-10-3 六本木ヒルズ 六本木けやき坂通り
営業時間:(日-木)12:00〜20:00/(金・土・祝前日)12:00〜21:00
定休日:不定休
Text/大野高広 Photo/岸田克法
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