流れ続ける「滝」と「時間」
千住氏:私が描く「滝」は風景画ではないので、特定のモチーフはありません。なので、今回のコラボレーションで描いた作品にあえて名前をつけるなら、「ブルガリの滝」と言えるでしょう。といっても、制作中はブルガリのことを考えたり、時計のことを考えたりはしませんでした。特定のイメージに寄ると作品がいびつな仕上がりになってしまう。だから、制作中は無心になるよう心がけているんです。
ボナマッサ氏:博の作品は非常にスケールが大きいのですが、それを腕時計で表現するというのが非常にユニークな試みだと思ったんです。しかも世界最薄記録を持つ「オクト フィニッシモ オートマティック」で。
たとえば料理でも、意外な組み合わせの食材がいざ調理してみると驚くほど美味しい、ということがありますよね。今回のコラボレーションは、まさにそのように仕上がっていて非常に嬉しく思っています。
千住氏:何年にもわたって彼とやりとりするなかで、大体100パターンぐらいは提案したんじゃないでしょうか。その中で一貫してキーワードになっていたのが「五感に訴えかける時計を作りたい」ということ。それを感じられるものが、最終的に文字盤に採用した作品になります。
私は地球が地球たり得るためには、3つの重要な要素があると考えています。それは「水」と「重力」と「温度」。これが一体になっているものこそ、まさに「滝」なのです。また、滝は一瞬たりとも同じ状態に留まることがありません。絶えず流れるのは時間も同じですよね。だから、私は滝と時計というのは、非常に相性の良いものだと考えていました。逆に、なぜそうしたテーマの時計がないのか不思議に思っていたぐらい。
今回の「オクト」は、身に着けて時間を読むだけでなく、文字盤に描かれた「滝」から水の流れや音、匂いなどまで想像を巡らして楽しんでもらえたらと思います。
- TAG