“THEN & NOW” ポップアップミュージアム in チューリッヒで140年の歴史に触れた!【ブライトリング取材レポート】<1日目>

創業140周年を記念し、1年を通じてさまざまなアニバーサリーキャンペーンを展開してきたブライトリング。その大きな区切りなるのが、2020年から5回目の開催となる「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」での新作発表だ。その世界的時計ショーに先駆け8月28日より約1か月にわたりチューリッヒにオープンしたポップアップミュージアムの全容をレポートする。

 

毎年8月末の時計イベント「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ」について

2020年の発足以来、ブライトリングはジュネーブ・ウォッチ・デイズの共同主催者としてイベントを盛り上げてきた。コロナ禍で思うように時計ショーが開催できないなか有志によって開催され、そのまま初秋の重要なイベントとしてすっかり定着した感もある。実際に、初年度には17だった出展ブランドが今年は52にまで到達。これはもはや春に行われるウォッチズ&ワンダーズと比肩する規模といっても過言ではない。しかも、ジュネーブ・ウォッチ・デイズならではの特色として、あえてメイン会場にブランドやメディア、時計関係者を集中させず、ジュネーブ市街地にあるホテルやブティックなどを巡るサーキット方式を採用。筆者は今年が初めての取材となったが、夏のバカンス時期も相まって、8月29日から9月2日までの会期中は4月のウォッチズ&ワンダーズよりも非常に多くの人々が、ジュネーブ市街地を往来していたように感じた。

ブライトリングのポップアップミュージアムは【THEN & NOW】がテーマ

レン通りに出現したブライトリングのTHEN & NOW ミュージアム

その開催前日、筆者はブライトリングに招待されてチューリッヒに滞在していた。目的は期間限定でチューリッヒにオープンしたポップアップミュージアムのプレスプレビューへの参加である。このミュージアムがあるレン通りは、左右に様々なフラッグが掲げられたストリートで、駅を背にした視線の先に聖ペーター教会の教会時計を望む、チューリッヒでも知られた場所だ。会場となるフラミンゴピンクの建物にはブライトリングイエローのフラッグが掲げられており、離れた場所からでも一目瞭然だった。

プレスカンファレンスに登壇するジョージ・カーンCEO

プレスプレビューの前には、ジョージ・カーンCEOとプロジェクトを主導したジャンフランコ・ジェンティル氏によるプレスカンファレンスが行われた。さらにスペシャルゲストとして、創業一族より3代目ウィリー・ブライトリングの息子、グレゴリー・ブライトリングも登場。このポップアップミュージアムを通じて、より多くの人々にブライトリングの豊かな歴史を知ってほしい、という強い思いが登壇者から伝わってきた。

ミュージアム内部には貴重なアーカイブピースとそれにまつわるストーリーを展示

ミュージアム1階にはナビタイマー コスモノートを軸にブライトリングと空、宇宙の関わりがわかる歴史展示がなされていた

そのまま案内役のスタッフに従ってミュージアムの中に進む。フロアは地下1階、地上2階という構成で、AIR、LAND、SEAの世界に分かれブライトリングのタイムトンネルを旅することができるという。スペシャルフード&ドリンクを提供するキッチンを併設した1階には、希少なアーカイブピースとともにナビタイマーとコスモノートの栄光を讃える歴史的な資料が並ぶ。2階にはパネルと時計の組み合わせたテーマ別の展示がなされており、そこでは気球による無着陸世界一周を成功させたオービターのストーリーに加えて実物の生地に直接触れられるコーナーほか、ツールウオッチをエレガントスタイルへ昇華したプレミエ、レーシングウオッチのトップタイム、またセレブリティに愛用されたタイムピースや、SEAの象徴ともいうべきサーフィンとスーパーオーシャンの世界も鑑賞できた。また、同じフロアにはキャリバー01のヴァーチャル展開図などムーブメント製造の複雑さを探索することができる、インタラクティブな縦型ディスプレイを設置するなど、ブライトリングの100%クロノメーターの拠点である「クロノメトリー」が解説された“ミニクロノメトリー”もあった。

2階では興味深いストーリーが記されたパネルとともに貴重なヴィンテージブライトリングを数多く展示。トップタイムのコーナーなど一部には日本語の広告も

こうした魅力的な展示に後ろ髪をひかれながら、急かすスタッフに誘導されて今度は地下へ(私たちプレスに与えられた時間は30分だけだった)。ここはポップ・アップ・ミュージアムのテーマである「THEN & NOW」(=昔と今)をストレートに表現。スタート地点となるTHENからスタートし、左手側の展示を見つつそのままUターンして戻ってくると、NOWのシンボルとして最新作となるパーペチュアルカレンダークロノグラフキャリバーB19搭載の3部作の展示へと帰結するフロア構成だ。ちなみに最奥の壁の裏には、ブライトリングの歴史を伝えるムービーの内容に合わせて壁面ショーケース内の小物がライトアップされるという隠れ家的なコーナーを展開。正直なところポップアップということで少し甘く見ていたのだが、決められたプレスプレビューの時間内では到底追いつかないほどの充実した内容は、またいつか、そしてできれば日本で実施してほしいと願うばかりである。

左側「THEN」には創業者のレオン・ブライトリングのCG動画が流れている。対する右側「NOW」のショーケース内には新作3部作の木箱が。取材当日は発表前だったため閉じたままだった

プロジェクトを主導した重要人物へのインタビュー

ブライトリングのヘリテージ部門の責任者、ジャンフランコ・ジェンティル氏。当日の着用モデルはツイン ジェットのロゴが入った、1960’s製ナビタイマー Ref.806だった

こうして駆け足でのミュージアムの内覧を終えたあと、運良くジャンフランコ・ジェンティル氏と話すことができた。まず個人的に聞いてみたかったのが、「THEN & NOW」というテーマ。前年末にザ・ビートルズ“最後の新曲”として発表したタイトルに近しいが、これが影響を受けたものかどうしても確認しておきたかったのだ。彼の答えはNO。

「私たちのプロジェクトは長年にわたるもので、テーマもずいぶん前から決まっていました。だから、世界的に注目を集める曲名と近いことに私たちも驚いたぐらい(笑)。今回のTHEN & NOWというテーマは、140周年を記念するのにとても相応しいと思っています。創業した1884年からジュネーブ・ウォッチ・デイズで発表する最新作まで、あらゆる切り口やテーマでブライトリングのことを知ってもらえることでしょう」(ジェンティル氏)

繰り返しになるがブライトリングは2024年で創業140周年。これを記念して1年を通じて様々なトピックスを私たちメディアに提供してくれている。その一環として、今も重要なマイルストーンとなったヘリテージピースの展示会「THE TIME CAPSULE 」を4大陸の世界50都市で実施。日本でも夏に表参道と心斎橋のブティックで行われたので、読者の中にはご覧になった方もいるだろう。驚くのは、チューリッヒのポップアップミュージアムと並行して、世界各地での展示会も引き続き行われていたこと。一体ブライトリングはどれほどの重要なヴィンテージウオッチを所有しているのだろうか。ジェンティル氏に聞いた。

「何世代にもわたりブライトリング家が所有していた特別な時計や、このプロジェクトのために新たに買い付けたものもあります。この数年で200本ほどのヘリテージピースを新たに収集したと思います。今回のポップアップミュージアムで、チューリッヒを訪れる多くの人にブライトリングの豊かな歴史や知られざる物語を紹介したかったので、色々と手を尽くしました。なぜジュネーブ・ウォッチ・デイズが開かれるジュネーブではなく、チューリッヒを選んだのかというと、ここがスイスを代表する都市であることはもちろん、ジュネーブよりもグレンヘンの本社に近いなど、複数の理由があります。いずれは常設のブライトリングミュージアムをチューリッヒに作りたいとも考えていますが、東京と同じようにチューリッヒも広さや立地などの条件が整った物件がないので実現にはまだしばらく時間がかかりそうです」(ジェンティル氏)

THEN & NOW鑑賞を終えて思うこと

インタビューの中でアーカイブピースの正統性を確認する資料などがあるのか聞いたところ、その点については問題ないとのこと。要望があれば鑑定書を用意することもできる体制はあるという。まだまだ私たちの知らないブライトリングの世界があることは間違いなく、そうした歴史的事実の積極的な掘り起こしは2017年にCEOに就任したジョージ・カーン氏の体制になってから急加速したように思う。後日、カーンCEOは新作発表の場で「これまでの7年間、すべての判断が正しかったとは言えない」ということを自認していたが、どのような道を歩むにせよその足跡が後年になって意味を変えることなど往々にしてある。なにしろ彼のキャッチフレーズは、“This is just the beginning”(=これはほんの始まりに過ぎない)だ。そのようなことを考えながら、ふと筆者もまだ取材が1日目であることに気づく。翌日はジュネーブに移動し、いよいよ新作のお披露目に立ち会うことになる。

 

https://www.breitling.com/jp-ja/

Text/Daisuke Suito (WATCHNAVI)

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