フェーズ2を締めくくる新作とともに来日したアーノルド&サンとアンジェラスのセールス部門トップにインタビュー

去る10月某日、スイスよりアーノルド&サンとアンジェラスのインターナショナル セールス ディレクターを務めるディミトリ・オベール氏が新作を紹介するべく来日。多くの時計ブランドを渡り歩いたのち、2024年6月より現職に就任した彼に、新作の説明に加えて現在の高級時計界のトレンドについても話を聞いた。

「ビスポークの需要の高まりを実感しています」

アーノルド&サンは、18世紀に活躍した天才時計師ジョン・アーノルドを始祖に持つ時計ブランドで、創業年は彼が歴史的な発明を行った1764年を起源とする。それから紆余曲折を経て現在はスイスの名門ブランド、アンジェラスとともにシチズングループにジョイン。以来、シチズンの海外事業部と連携をとりながら日本展開を行なっている。今回来日したオベール氏もインタビュー前には日本各地の取り扱い店を視察していたとのこと。その際、ショップの顧客から好評を得たという新作が「コンスタントフォース トゥールビヨン 11」のプラチナケース仕様である。

オベール氏が手に持っているのが新作となる「コンスタントフォース トゥールビヨン」のプラチナモデル。文字盤にも特徴がある

オベール氏:2025年のウォッチズ&ワンダーズで披露したのはイエローゴールドケースでしたが、新作ではプラチナで11本を製作しました。文字盤はソリッドゴールドにトランブラージュ仕上げを施しました。模様のモチーフは、ジョン・アーノルドが生まれたイギリスのコーンウォール地方の植物に由来しています。職人が完全に手作業で彫金を施しているため、ひとつとして同じ模様はありません。

マニュファクチュールから徒歩10分程度にアトリエを構えるエングレーバーが1点ずつ手作業で彫金を行う

実は、日本以外でもリテーラーイベントを行ってきていて、11月の情報解禁を待たず10本が成約となり1本を残すのみとなりました。また、第1弾と同じくビスポークのモデルを2本製作しています。また、これ以外にもダブルトゥールビヨンやDSTB(ダイヤル・サイド・トゥルー・ビート)などといった私たちの定番品でもビスポークを受け付けており、それぞれ好評を博しています。こうした特別な1本を求める方は、確実に世界各地で増えていますね。

アーノルド&サン「コンスタントフォース トゥー ルビヨン 11、プラチナ エデ ィション」Ref.1FCBX.Z01A.C0232X 価格要問い合わせ 手巻き(キャリバーA&S5219)、毎時2万1600振動、100時間パワーリザーブ。プラチナケース(シースルーバック)。直径41.5mm、厚さ13.7mm。アリゲーターストラップ。3気圧防水。世界限定11本。

次にお見せする新作はコンパクトになった「グローブトロッター」になります。こちらは45mmから42mmになり、厚みも2mmほど抑えました。同時に文字盤もより実用的にワールドタイムが確認できるよう、アイコニックな地球儀と連動する都市名の短縮コードを追加しています。24時間のスケールも45mmではサファイアのリングに印字していましたが、42mmでは盤面に記載しています。搭載するのは45mmが搭載していたA&S6022から小径化したA&S6122となっています。

アーノルド&サン「グローブトロッター スチール、ストランドブルー エディション」Ref.1WTBS.K01A.C0263S/341万円 自動巻き(キャリバーA&S6122)、毎時2万8800振動、55時間パワーリザーブ。ステンレススティールケース(シースルーバック)。直径42mm、厚さ15.10mm(アーチ部分含む)。アリゲーターストラップ。3気圧防水。世界限定88本。
オベール氏が着用しているのはグリニッジグリーン エディション。こちらも世界限定88本。

そしてこちらは、私の好きなコレクションDSTBの新作で、“グレイニーテクニック”を文字盤に採用したモデルになります。光の当たり方によってキラキラする表情を楽しんでいただけます。ちなみに私たちの手がけている時計でトゥルー・ビート(=デッドビートセコンド/1秒ずつステップ運針する機構)は、コンスタントフォース トゥールビヨンを除けばDSTBコレクションのみとなります。誕生以来とても人気があるので、サイズやデザインをアップグレードしながら定番コレクションとして展開を続けており、最新作ではユニークなダイアルとともに正確な1秒を刻む構造が鑑賞できます。

アーノルド&サン「DSTB 42」(Pt)Ref.1ATCX.U01A.C0263X(RG)Ref.1ATCR.F01A.C1242A、ともに日本発売未定 自動巻き(キャリバーA&S6203)、毎時2万8800振動、55時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールド、またはプラチナケース(いずれもシースルーバック)。直径42mm、厚さ12.95mm。アリゲーターストラップ。3気圧防水。各世界限定18本。
オベール氏はブルーダイアル仕様のDSTBを愛用。

–……ちょっと待ってください。すごくたくさんの新作があって驚いています(汗)。せっかくなら9月初旬のジュネーブ・ウォッチ・デイズに出展すればよかったのに、なぜ今年は不参加だったのですか?

オベール氏:前の年は260周年のアニバーサリーというテーマがあったので出展しましたが、今回はコストに見合うだけの効果をジュネーブでのイベントに求める必要がないと考えたのです。それと、11月にはドバイ・ウォッチ・ウィークがありますからね。そのような理由もあって、2025年の下半期に関してはイベントで一点集中するよりも世界各地で顧客やリテーラーと対話していくことを選びました。だから私はいまここにいるわけですよ(笑)。ちなみに、まだ新作の紹介が終わっていないので続けても良いですか?

–もちろんです!

「2026年からは第3チャプターに突入していきます」

オベール氏:続いてご紹介するのは、ロンジチュードの新色となります。こちらは新しいダイアルカラーで、おおよそ西経5度、北緯49度に位置するイギリス本土最南端「リザードポイント」の風景にインスピレーションを得ています。ケースはチタニウムで、ベゼルリングには18Kレッドゴールドをセット。このモデルについてはラバーではなくアリゲーターのストラップが付属します。ロンジチュードは誕生から3年目となるコレクションですが、早くもグローバルでブランド全体の1割を占めるほどの成長を遂げています。

アーノルド&サン「ロンジチュード・チタン5°W」Ref.1LTAT.N01A.N0262U/462万円 自動巻き(キャリバーA&S6302、COSC認定)、毎時2万8800振動、60時間パワーリザーブ。チタン+18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)。直径42.5mm、厚さ12.25mm。チタンブレスレット(アリゲーターストラップ付属)。10気圧防水。世界限定38本。
ロンジチュードのバンドはインターチェンジャブルタイプにつき、工具不要でストラップの付け替えが可能。ブレスレットはエクステンション構造が組み込まれている。

また、パーペチュアルムーンからも新作が出ています。やや価格を抑えたモデルを作りたいと思い、GPHGにもノミネートされた従来のモデルから文字盤をシンプルにしました。ただ、ムーンフェイズディスクはアベンチュリンですし、月にはマザーオブパールを使っているので、このモデル固有の幻想的な雰囲気は楽しんでいただけます。

アーノルド&サン「パーペチュアルムーン 38 レッドゴールド クリフ グレー・エディション」Ref.1GLBR.U02A.C283A/682万円 手巻き(キャリバーA&S1612)、毎時2万16000振動、90時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース(シースルーバック)。直径38mm、厚さ10.44mm。アリゲーターストラップ。3気圧防水。世界限定28本(同時発表のブルー アベンチュリン エディションは世界限定88本、Ref.1GLBR.A01A.C282A/792万円)。

そしてアーノルド&サンで最後にご紹介するのが、タイム ピラミッドの新作となります。こちらはケース内部のケースバック側にプレシャスストーンを配置したモデルで、かつてアベンチュリンで出したモデルの第2弾です。新作ではマラカイトを採用しており、天然素材固有のランダムな筋目が入ったグリーンの盤面とスケルトンムーブメントの緻密な動きが同時に楽しめます。

アーノルド&サン「タイムピラミッド 42.5 マラカイト エディション」Ref.1TPER.F01A.C1250A、日本発売未定 手巻き(キャリバーA&S1615)、毎時2万1600振動、90時間パワーリザーブ。18Kレッドゴールドケース。直径42.5mm、厚さ10.72mm。アリゲーターストラップ。3気圧防水。世界限定8本。(同時発表のプラチナ仕様も世界限定8本、Ref.1TPEX.F01A.C1250X)
インタビュー中、オベール氏自ら着用して新作をプレゼンテーション。

アンジェラスの新作としてはテレメーターのゴールドモデルがあるのですが、こちらはすでにジュネーブで見ていただいたかと思います。このモデルは37mmのサイズ感やデイトのない文字盤、ヴィンテージルックに、テクニカルな手巻きクロノグラフムーブメントなど、多くの面で時計愛好家の方からとても良いリアクションをいただき、GPHGのクロノグラフ部門にもノミネートされました(※編集部注:インタビュー後に行われたGPHG(ジュネーブ ウォッチ メイキング グランプリ)授賞式にて、見事クロノグラフ部門で賞を獲得!)。ステンレススティールのモデルはすでに完売しており、ゴールドのモデルも今回の来日に伴うショップでのイベントで最後の1本が完売しました。

アンジェラス「クロノグラフ テレメーター」Ref.0CHC.QI01A.V010Q/627万円 手巻き(キャリバーA5000)、毎時2万1600振動、42時間パワーリザーブ。18Kイエローゴールドケース(シースルーバック)。直径37mm、厚さ9.25mm。カーフストラップ。3気圧防水。世界限定15本。

これで今回お見せできる新作はすべてお見せしましたが、どれが一番お好みでしたか?

–私は2025年初頭にグローバルセールスのバイスプレジデントであるパスカル・ベシュさんにインタビュー後、こっそり見せていただいて以来、「コンスタントフォース トゥールビヨン 11」の虜です(笑)。このモデルのバックグラウンドにあるエピソードを含め、とても素晴らしいと思っています。

オベール氏:きっとそうだと思いました(笑)。ただ、私たちは2025年をもって第2チャプターを終えますので、「コンスタントフォース トゥールビヨン 11」も、これでディスコンにします。翌年から始まる私たちの第3チャプターにぜひご期待ください。

ディミトリ・オベール(Dimitri Aubert)/1974年、ブラジル生まれ。経済学とマーケティングを専攻して卒業後、1994年に家族経営企業のカテナの創設に携わるところからビジネスキャリアをスタートさせる。その後、アメリカ時計ブランドのベルトゥッチへ入社すると中東市場のブランド展開に貢献。同社での6年の経験を経たのちに移ったジラール・ペルゴでは、アジア太平洋地域におけるブランド展開を担当。中国本土市場への進出やインド初の世界直営ブティック開設、日本子会社の再編などに携わるなどの貢献が認められ、2006年よりブランドの販売部門の副部長に就任。同年にはソーウィンドグループのバイスプレジデントに就任した。2010年からはユリス・ナルダンに転職し、アジア太平洋地域とフランスおよびベネルクス地域担当マネージャーを担当。さらに2011年からはシンガポールにてF J BENJAMIN HOLDINGS Ltd.の東南アジア高級時計部門ゼネラルマネージャーとして入社。その後、ブランパンのエリアセールスマネージャー、ブレゲのインターナショナルセールスバイスプレジデントを経て、2024年6月1日より現職に就任した。

Text/Daisuke Suito(WATCHNAVI)、Photo/Keita Takahashi(TRS)

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