2026年5月より世界最大級の時計専門マーケットプレイス「CHRONO24」(クロノトゥエンティーフォー)のCEOに着任したホセ・ガステル氏が、日本市場を視察するため急遽来日した。WATCHNAVI編集部は複数メディアが集う合同取材の場に赴き、インタビューを実施。CHRONO24の視点から見た現在の時計市場の傾向や、CHRONO24の現状について話を聞いた。
テック企業としての注目を集めるCHRONO24

CHRONO24は2003年の創業以来、時計専門のマーケットプレイスとして成長を遂げており、今や月間のサイト訪問者数は900万人以上。販売事業者数は3000社を超え、150以上の国と地域に対応し、これまでに160万本以上の時計を世界中で販売してきた。2022年7月には日本法人「Chrono24 Japan合同会社」を設立。このタイミングでWATCHNAVI編集部は、CHRONO24が持つ膨大なデータに基づく時計マーケットのトレンドレポートの連載協力を同社に依頼。その関係はいまも続いているが、新CEOとは今回が初対面となった。
なお、当日のホセ氏の囲み取材はIT系や経済系のメディアが多く、その大半がテック企業としての質疑応答となった。唯一、時計メディアとして参加した筆者の主観込みで、現場での各インタビュアーとCEOのやりとりを要約した内容を先に取り上げておこう。
CHRONO24は新規顧客の取り込みやデータ分析、内部業務の効率化、そして真贋鑑定などで早くからAI技術を活用しているとのこと。ただし、真贋鑑定は95%程度までAIで対応できる時代に来ているものの、最終的には人の目で行うのだという(そのため、CHRONO24では弊社ではパートナーCertified(真贋鑑定)プログラムを導入している)。
取引の量は機械式時計の市場が世界的に異常な盛り上がりを見せた2022年をピークとしてCHRONO24でも下降していたが、最近は緩やかながら再び増えているという。一方で、取引額については「クロノパルス」(同社が提供している人気ブランドの主要モデルの相場変動がわかるツール。サイト内で誰でも閲覧できる)を見ても、近年の正規定価と同じく上昇傾向にあるそうだ。

こうした時代にあってCHRONO24はラグジュアリーウオッチの循環型経済の主役となるべく、企業としての透明性を高めて顧客のさらなる信頼を獲得し、ディーラーに対しては自社の持つデータを積極的に提供しながら値付けなどの販売サポートを行っていくとのこと。

入社1年足らずで8本の時計を購入したCEOの本気度
こうしたテック系、ビジネス系の流れのなか、いよいよ筆者が質問できる順番が巡ってきた。限られた時間でどうしても聞きたかったのは、時計に対するホセ氏の熱意である。
–ホセさんの時計への愛を聞きたいのですが、そもそも、どのような経緯でCHRONO24に入社することになったのでしょうか?
「私はこれまでファッションや住宅、クリエイティブ系の教育など、複数の会社のデジタルプラットフォームで責任者として携わってきました。そのキャリアを活かせる次の場所として選んだのがCHRONO24です。2025年7月にCGO(=Chief Growth Officer/最高事業成長責任者)として入社し、今年の5月からCEOになりました。
私はいわゆる腕時計のコレクターではありませんが、幼い頃からフィルムカメラのようなメカニカルなアイテムは好きでしたよ。だからCHRONO24に入社してすぐに自社のプラットフォームを利用して日本のディーラー様から時計を買いました。レビュー数が約3000件、評価の星は4.9という情報の通り、とてもスムーズに取引ができました。それと、昨年、叔父が亡くなった際、遺品の中にあったオメガの『ベビー プロプロフ』を譲り受けたんですが、その時計が私の生まれ年、1979年に作られた時計だったことも運命を感じましたね。
私は1957年製のライカのカメラを所有しているのですが、そのように昔のものでも問題なく使える機械仕掛けのアイテムは本当に素晴らしい。私はテクノロジーが好きですし、AIも素晴らしいと思っていますが、それらと同じぐらい歯車で動くアイテムにも愛情を持っています」(ホセ氏)
–ちなみに今日着けている時計はなんですか?
「今日はチューダーのブラックベイ 58 GMTです。とても気に入っています。これ以外にも入社してから何本か買っていて、CHRONO24アプリには8本のコレクションを登録しています。時計について調べていると、やはり欲しいモデルが出てきてしまうんですよね(笑)。
日本のグランドセイコーやG-SHOCKも持っていますよ。日本は時計の製造技術が優れていますし、独自のイノベーションにも長けていて本当にリスペクトしています。ディーラーもコレクターも時計を大切にしている方が多く、マーケットとしても成熟していますね。私自身、実は2本目の時計も日本のディーラーから購入しましたし(笑)、CHRONO24のCEOという立場からみても、とても重要な国だと認識しています」

インタビュー後記
創業から23年の蓄積により150以上の国と地域での流通実績があるマーケットプレイスを新たに率いることになったホセ氏は、まさしくエリートビジネスパーソンといった立ち振る舞い。各国を飛び回っている疲労感を出すこともなく、各社の質問について真摯に受け答えする姿はとても好感が持てた。
CHRONO24は、ただ時計を売り買いする場だけでなく、自分の所有するモデルの現在相場がグローバル基準で把握できる「ウォッチスキャナー」などのツールもあるほか、また最近巷を賑わせたRoyal Popについての分析のような記事を配信する時計メディアとしても機能している。

サイトを見ればわかるように、たとえAIを活用しているといえど、日々の業務は膨大に違いない。これからさらに会社を成長させ、同時に信頼のおけるマーケットプレイスとしての地位を盤石にするために、新CEOはどのような手を打っていくのか。その手腕に引き続き注目していきたい。
Text/Daisuke Suito (WATCHNAVI)、Photo/Kensuke Suzuki (ONE PUBLISHING)
- TAG