タグ・ホイヤーは常に新しい時代、新しい世代に適合していく
新作発表イベントの後に、さっそくビバー氏への個別インタビュー!
──現在のタグ・ホイヤーにとって大切なのは、若い世代に語りかけていくこと。今春、ビバー会長はそうおっしゃいました。彼らがデジタルを言語としているなら、我々も同じ言語を使わなければいけない、もしテクノロジーが彼らの言語であるなら、私たちもテクノロジーを使って語りかけていかなければいけない、と。今回、18歳の息子さんのアドバイスを聞いて、藤原ヒロシ氏にアプローチしたのも、その一環でしょうか?
「その通りです。彼は息子であると同時に、未来の世代を代表する身近な存在です。若い人は、私よりも未来のことをよく知っているはず。だから、彼らから学ぶし、耳を傾ける」
──息子さんが推薦したデザイナーが、たまたま日本人だった?
「はい、そうです。日本人を前提に探したわけではありません。息子は日本のことがすごく好きで、何度も旅行しています。だから、藤原ヒロシ氏のことをよく知っていたのだと思います。最初にプロトタイプを見たとき、“Less is more”と直感しました。“より少ないことは、より豊かなこと”といった意味合いです。一番気に入ったのは、クラシックでありつつ、非常に強いデザイン性を持っていること。控えめなのに、とても強さを感じさせるデザインです。
──話は変わりますが、ビバー会長がビジネスの第一線から退くとのニュースが9月に配信されました。今後はアドバイザー的な役割になるのでしょうか?
「新しい役職は代表権のない会長で、これまでに存在しなかった役職です。正式な表記は“LVMHウォッチメイキング ディヴィジョン 会長”で、11月1日に正式に発令されています。今回も新しい役職で来日しているので、9月のニュース記事を読んでいないと、ほとんどの人は役職が変わったことにも気づかないと思いますね。ただ、時計作りに関する権限はありません。私ももう70歳になりましたからね」
──ご自身の関わり方は少し変わるわけですが、今後、タグ・ホイヤーはどう変わっていくと思いますか?
「タグ・ホイヤーは、変わるとも言えますし、変わらないとも言えます。常に新しい世代、新しい時代に適合していくと思います。それはカスタマーが変わるから。時計が変わるのではなく、カスタマーが変わるので、その時代ごと、その世代ごとに求められるものを提供できる、魅力のあるブランドであり続けたい。いま、語りかけなければならないのは、先ほどの話にも出てきましたが、ミレニアル世代です。20歳を中心としたこの世代も、やがて25歳になり、さらに上の年齢になっていきます。そのときどきで、時計が時代とともに変化していく、というか、適合していくことが、タグ・ホイヤーのあるべき姿だと思っています。そういった意味で新しい方向性を最初に示してくれたのが、藤原ヒロシさんの作品です」
──「ホイヤー モナコ バンフォード」があまりに好評で、もっと作っておけば良かったとビバー会長は冗談交じりにお話ししていましたが、「タグ・ホイヤー カレラ キャリバー ホイヤー02 by Fragment Hiroshi Fujiwara」の世界限定500本も、すぐ売れ切れてしまいそうですね。
「いや、もう少し作っておけばよかった、と思うくらいがちょうどいいんです(笑)。今回のような一流デザイナーとのコラボレーションは、これからも予定しています。匠と呼ばれる方々との仕事は、本当に楽しみです。ぜひ、ご期待ください」