「ロレックス」の腕時計は、26歳のときに買った“思い出の1本”
――いくつか時計をお持ちいただきましたが、特に思い入れのあるものはどれですか?
この中では、やはり初めて購入した機械式時計「ロレックス」ですね。
当時26歳だった1988年の10月、作家の宮本輝さんと取材旅行に出ていました。
輝さんが着けていたのが「ロレックス エクスプローラーⅠ」でした。カジュアルにもフォーマルにも使えるデザインでしたし、輝さんから「水上勉さん、それに小林秀雄さんも使われていた」と聞き、「いつか自分もほしいな」と思っていました。
輝さんとの旅行で、リスボンを訪れた際に、時計店に寄ったんです。そこで「ロレックス エクスプローラーⅠ」を見つけ、迷う間もなく購入したのが、この時計です。
当時の僕からすれば、非常に高価でしたが、30年経った今も愛用していることを考えれば、安い買い物だったと感じます。ある意味で、編集者としての道を一緒に歩んできた時計ですから、相棒と言えます。
――今日お持ちいただいた時計には、パテック フィリップのワールドタイムもありますね。
はい。10年ほど前に銀座・和光で購入したものです。パテック フィリップといえば、アインシュタイン、ワーグナーも愛用していたことで知られています。僕にとって憧れの1本でした。
この時計は日本だけでなく、ニューヨーク、パリ、ロンドンの他、全24の都市の時刻も同時にわかるんです。日本にいても、海外で過ごしているような気持ちになれるのが楽しいですね。
――時計好きの石原さんが、時計を選ぶ際の“こだわり”は何ですか?
愛嬌のある顔をした時計が好きです。やはり安いものではないですから、長く使いたい。だから、いつも側に置いておきたくなるよな1本を選ぶようにしています。
――最後に、石原さんの夢を教えてください。
人生は、制限をした途端、つまらないものになると僕は考えています。だからある程度、自分をなるたけ許容してあげることが大事です。
出版業界は現在、日本国内中心のビジネスになりがちですが、制限を突破する気持ちで、もっとグローバルに展開するべきだと思っています。幻冬舎としても、今後は注力すべきところだと考えています。何物にも囚われず、絶え間なく新しい世界を見つけていきたいですね。
石原正康(いしはら・まさやす) 株式会社幻冬舎 取締役 兼 専務執行役員
1962年生まれ。新潟県出身。大学卒業後、角川書店に入社。1993年、幻冬舎設立に参加。編集者として、五木寛之、村上龍、山田詠美、吉本ばなな、天童荒太、といった日本を代表する作家の名作を数多く手掛ける編集者。