時間は誰にでも平等。だからこそ1日24時間、その限られた時間をどう使うかが「人生を楽しむ」ための鍵となります。様々な業界で活躍する人物から「時間術」を聞く本連載。第6回は歯科医の藤田晃大さんにお話を聞きました。
撮影/高橋敬大 文/赤坂匡介
歯科医の藤田晃大さんが院長を務める「フジタデンタルクリニック」では、医師と患者という枠組みにとらわれず、人として密な信頼関係を築くことを大切にしています。そのため藤田さんは、「予約を個人LINEで受け付けることもある」と言います。
そんな藤田さんに、日々、どんな時間の使い方をしているのか聞いてみると、そこには「オンオフの切り替えはしない」という藤田流の時間術がありました。
――藤田さんは歯科医であると同時にクリニックの経営者でもあります。忙しい日々の中で欠かさずしていることはありますか?
最近は週に2回、パーソナルトレーニングのジムに通っています。仕事終わりの時間にウェイトトレーニングを中心にするのですが、それがいい気分転換になっていますね。
仕事は大好きなんですが、どうしても仕事中は分刻みのスケジュールに追われてしまうので、仕事以外の時間を大切に使うことを常に心掛けています。ただ、患者さんとの距離感が私は近いので、一緒にご飯に行くのも患者さん、なんてことも多いですね。だから同業者からは、「マメだ」とよく言われます(笑)。
――患者さんとそれだけ近い距離にいる歯科医は珍しそうですね。
珍しいと思います。予約も個人的にLINEでいただくケースも多いでので、LINEを返信し忘れないように気をつけています(笑)。でも私は、それが嫌ではないんです。
――昔からそのスタイルなのですか?
いえ、昔は患者さんと距離を置くようにしていました。むしろそれが正しいと思っていました。ただ、その頃はオンオフの切り替えがうまくできず、友人といても、仕事モードだと冗談も言えない、ということが多々ありました。
そんなとき、ある患者さんから「先生のキャラクターはそれじゃない」と指摘されたんです。そのときからオンオフの境を作ることをやめて、いまのスタイルにしました。そうしたら、ストレスもなくなって、すごく楽になりました。
――休日はどんな風に過ごされているのですか?
車の運転が好きなので、出掛けることが多いです。休日は妻を連れて、思いついたところにドライブしたりもしますね。私にとって「自由に時間を使う」ということ自体がすごく贅沢なんです。だから好き勝手な時間を過ごせると、とてもリフレッシュになります。
とはいえ、休日だからといって仕事のことを忘れるわけではないんです。やっぱり気になりますから、一度はクリニックに行きますし、LINEが来れば返信もします。ですから本当の意味での休みというのは、ほとんどないかもしれませんね。
――患者さんも色んな人がいると思います。接し方を変えることもありますか?
そうですね。人それぞれ性格やペースは違いますから、「何を求めているか」を考えながら接している部分はあります。
それでもやっぱり、最終的には距離を縮めて、患者さんにとって居心地のいい環境作りをしたいと思っています。だから治療中も患者さんの呼吸を感じながら、それに合わせて無理のないように治療を進めています。
――そのサービスが患者さんに届いているかどうかは、どうやって確かめるのですか?
満足度というのは、可視化しづらいですが、たとえば、新しい患者さんを紹介してくださったりすると、「満足してくれているんだ」とうれしくなります。
私はカルテに、治療の進捗だけでなく、その日に交わした会話もメモしておくんです。そうした小さな努力によって、ゆっくりでも関係性を向上させていけたらと思っています。
叔父がくれたチュードルは傷だらけですが絶対捨てられません
――今日はいくつか腕時計を持って来ていただきましたが、いちばんのお気に入りはどれですか?
すべて気に入っているのですが、ブライトリングの腕時計は、父の形見なので、とても大切にしています。私の父も歯科医だったこともあり、着けていると、気が引き締まりますし、何となく父を感じられるような気がします。
ブルガリの時計も思い入れがあります。社会人3年目に、初めて自分で買った時計がこれです。デザインが気に入って買ったのですが、着けるとその頃のことを思い出しますね。
腕時計は一緒に時間を共有するので、それぞれに想い出が詰まっています。それがすごくいいなと思うんです。一緒に人生を歩んでいるような感覚になれるというか。
――となると、クオーツよりも機械式の方がお好きですか?
そうですね。車も優等生は好きじゃないんです。クオーツなら少しくらい放っておいても止まることはないですが、やっぱり機械式の方が手間もかかる分、愛着が湧きます。
私が初めて手にしたブランド時計は、高校の卒業祝いに叔父がくれたチュードルの腕時計でした。今では傷だらけですが、絶対に捨てられません。今でもよくしていますし、どの時計も、私にとって想い出が詰まったパートナーですね。
――今後の目標は何ですか?
もう少し都心に、分院を出せたらと思っています。父は、神奈川県でずっとクリニックを経営していたのですが、生前、東京の都心に分院を出そうと考えていたんです。場所も決めて、そこで「一緒に働こう」なんて話もしていました。しかし、その矢先に亡くなってしまいました。だからその辺りに分院を出せれば、「父の夢を叶えてあげたことになる」のではと思っています。
実際、今でも遠くから来てくださっている方もいますし、遠いから来られない、という方もいるんです。私の気持ちとしては、タクシー代を出してでも、全員を診てあげたいという思いがあります。分院を出すことでそれが叶い、もっと多くの患者さんを笑顔にできたらうれしいですね。
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