時間は誰にでも平等。だからこそ1日24時間、その限られた時間をどう使うかが「人生を楽しむ」ための鍵となります。様々な業界で活躍する人物から「時間術」を聞く本連載。第17回は元プロ野球選手、現在は埼玉県にある『上尾ベースボールアカデミー』の塾長を務める増渕竜義さんにお話を聞きました。
撮影/高橋敬大 文/赤坂匡介
小学4年生から野球をスタートし、高校卒業後、東京ヤクルトスワローズにドラフト1位で入団。投手として活躍した増渕竜義さんは、2014年に日本ハムファイターズに移籍し、翌年引退。現在は野球スクール『上尾ベースボールアカデミー』の塾長と並行して、同スクールの運営などを手がける株式会社King Effectの代表を務めています。
そんな増渕さんに、日々どんな時間の使い方をしているのか聞いてみると、そこには「時間が来たらスイッチを入れる」という増渕流の時間術がありました。
――プロ野球選手時代と現在、時間の使い方は変わりましたか?
はい。現役時代は、練習のルーティンとして、バドミントンのラケットを振ることで、リリースポイントを毎日確認していましたが、現在は“日課”のようなものは特に設けていません。
プロ野球選手というのは、いつでもスイッチをオンにできる準備をしておく必要があります。なぜなら、試合の途中から出場することもあるからです。
僕はピッチャーとして、先発もリリーフも経験しましたが、リリーフで出場するときの方が気持ちを作る上では大変でした。途中出場して、マウンドに立った瞬間から、グラウンドにいる選手と同じ気持ちになっていなければ、試合には臨めないんです。だからベンチにいても気は抜けません。常に集中していました。
そのせいか、現役時代はすぐ痩せました(苦笑)。動くだけでなく、集中力も使うので、不思議と痩せちゃうんです。
――当時と比べ、時間への意識も変わりましたか?
いまも昔も、時間は大切にしています。時間はお金では買えないですから。それは現在、『上尾ベースボールアカデミー』で指導する上でも意識しています。子どもたちに時間を無駄にしてほしくないので、練習の間はきっちり集中できるように、時間が来たら僕も“塾長として”スイッチを入れています。
“変わらない”という意味では、自宅に帰ってからのオフ具合は、現役時代もいまもさほど変わりません、だいぶオフです(笑)。
――増渕さんがいま、いちばん好きな時間は?
子どもたちに野球を教えている時間です。ここは元々、倉庫だった場所を改装しているのですが、砂埃がすごくて掃除から始めたんです。レイアウトや設備も自分で選んでいますし、とても愛着があります。
ありがたいことに僕自身が埼玉県出身ということもあって、生徒も順調に集まっているので、毎日とても充実しています。
僕が子どもの頃は、公園でキャッチボールができましたが、いまは違います。「危ないから」という理由で、どこでも気軽に野球を楽しめる環境ではありません。それもあって野球人口も減少傾向にあります。だから身近に、元プロ野球選手のレッスンが受けられる場所があれば、少しでも野球に興味を持ってくれる子どもたちが増えるんじゃないかと思い、このスクールを始めました。
子どもたちにはぜひ、野球を好きになって、夢を持ってもらえたらうれしいなと思っています。そのためのサポートを僕は全力でしていきたいです。
レッスン中も使えるG-SHOCKが、最近のお気に入り
――今日お持ちいただいたのは、G-SHOCKですね。
はい。これはスクールの開校記念にもらったものなんですが、汗をかいても大丈夫ですし、レッスン中も使えるので便利です。
元々、時計は好きで何本か持っているんです。19歳のときに、プロ入りのお祝いに購入したのがロレックスの「サブマリーナー」でした。その後、(東京ヤクルト)スワローズ時代に、宮本慎也さんから時計をプレゼントされたことがあり、以来、興味を持つようになりました。
――時計を買う際のこだわりはありますか?
僕にとって時計は、時間を見るものではなく、ファッションアイテムという感覚です。腕時計をしているかどうかで、印象もぜんぜん変わりますし。だから大切なのは、デザインです。あとフェイス(文字盤)は大きいものが好きです。身体が大きいので、フェイスが小さいとバランスがおかしくなるんです(苦笑)。
――今後の目標は何ですか?
いまの僕があるのは、「野球のおかげ」です。野球もビジネスもひとりではできません。誰かと協力する喜び、チームワークの大切さ、それを僕は野球から学びました。だからスクールの生徒たちにも、野球を通じて、人間的にも成長してもらえたらうれしいなと思っています。
夢は、スクールにいる生徒の中からプロ野球選手を輩出することです。そしてプロになった彼の試合を、スタジアムで観戦したいです。
増渕竜義(ますぶち・たつよし)
『上尾ベースボールアカデミー』塾長/株式会社King Effect代表/元プロ野球選手
1988年生まれ。埼玉県草加市出身。小学4年で野球を始め、高校3年時には全国高校野球選手権埼玉大会で準優勝。2006年、東京ヤクルトスワローズにドラフト1位で入団。投手として、時速150キロ台のストレートを武器に活躍。2014年に日本ハムファイターズに移籍し、翌年引退。現在は野球スクール『上尾ベースボールアカデミー』塾長と並行して、同スクールの運営などを手がける株式会社King Effectの代表を務める。
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