スイス高級時計界の名門、ジラール・ペルゴがいまスゴいことになっているという。その真偽を確かめるべく、国内の有力取扱4店舗を取材し、各ショップの担当者に聞き取り調査を行った。ちょうどオンラインで即完売を記録した限定モデル「キャスケット 2.0」の国内入荷が開始される時期でもある。果たして噂の真相やいかに!?
TEXT/Daisuke Suito(WN) Photo/Katsunori Kishida(新宿)、
Keiichi Wagatsuma(ONE PUBLISHING)(横浜、京都)、Atsuyuki Shimada(心斎橋)
オンラインも国内入荷分も即完売の「キャスケット 2.0」
すでに記事でも取り上げたように、このたびジラール・ペルゴが手がけた「キャスケット 2.0」は、1976年〜78年にかけて8200本製造されたLED表示ウオッチの復刻版だ。ケースは当時のマクロロン(ポリカーボネイト)からブラックセラミックに置換され、LED表示を司るキャリバーも時刻表示の単機能からマルチファンクションへと進化を遂げた。とはいえ、デジタルクオーツウオッチに50万円台である。いかに名門ジラール・ペルゴのエントリープライスとはいえ、限定製造820本が売り切れるかどうか、懐疑的に見る人も少なくなかった。そしてオンラインでの先行販売が2月22日に開始されるやいなやあっという間にECサイトにはSOLD OUTの文字が出現。かくして、入手できなかったGPファンは店頭入荷を待つ他なくなったわけだ。そこへきて有力4店舗に「キャスケット2.0」の専用ディスプレイと実機が登場である。一体どのような反響があったのだろうか?
※各ショップのスタッフの方には撮影のため一時的にマスクを外していただきました。通常営業時にはマスク着用を含め、感染症対策は徹底されております。
証言1:ISHIDA新宿
ジラール・ペルゴの歴史が伝わる一本
「ブランドの方からは、『ジラール・ペルゴの歴史を伝えるために820本限定でこのような時計を作る』と最初に聞いていました。そして発表された時点ですぐにお問い合わせが入り、あっという間に当初予定分が完売。質感の高い仕上げや装着性の良さなど、実際に手にしたときの魅力は多いですが、なによりこの限定モデルのために新型キャリバーを開発する気概に驚きました。
昨年11月あたりから徐々にロレアートの注目度が高まってきて、3針、クロノグラフと徐々に品切れ、入荷待ち、ご予約と、人気に拍車がかかってきたところへ、『キャスケット 2.0』の登場。ジラール・ペルゴはますます入手困難なブランドになっていきそうです。嬉しい反面、ご期待に応えられるような品揃えの確保に向けて日々交渉を重ねています」(ISHIDA新宿・玉田さん)
ISHIDA新宿https://ishida-watch.com/ |
証言2:COMMON TIME 横浜元町本店 by CHARMY
かなりの人数がウェイティングリストに
「いまも創業者一族のフランソワ・ペルゴが眠る横浜元町の人にとってジラール・ペルゴは特別なブランドですし、当店でも毎年の命日にはお墓参りを行うほど思い入れがあります。そうした背景もあって、かねてからの定番『ヴィンテージ 1945』は“横浜の時計好きなら一本は持っている”と言えるほどお客様の所有率が高いです。そこに昨年末から徐々に新規のお客様から『ロレアート』についてのお問い合わせが増え始めて、今年に入ってからは入荷してもほぼ店頭に並ばない状況に。時計YouTubeで取り上げられたことも大きかったと思います。中には遠方から来られた方もいらっしゃいましたよ。
このような状況の中に『キャスケット 2.0』の発表ですから、その反響の大きさたるや。2月22日の発表当初からお問合せが殺到し、ウェイティングリストはかなりの人数になっています。実際に展示品をご覧いただく機会も多く、懸念していた価格面についても仕上がりを見てみなさまご納得いただいています。ロレアートもそうですが、こうしたブランドの歴史が詰まったモデルは、『知られざる魅力を持つ時計を通じて時計ファンを増やしたい』という当店のテーマとも合致しており、ありがたい限り。ジラール・ペルゴは、いまなら希少なトゥールビヨンなどもございます。見て触って体感していただくだけでも大歓迎ですので、ぜひお気軽にお立ち寄りいただきたいですね」(COMMON TIME 横浜元町本店 by CHARMY・佐藤さん)
COMMON TIME 横浜元町本店 by CHARMYhttps://common-time.jp |
証言3:oomiya 心斎橋店
周囲と違う時計を探している人を魅了
「oomiya 心斎橋店に来られる時計愛好家の中には『人と違う時計を持ちたい』とお考えの方が少なからずはいらっしゃいます。そういった方に『キャスケット 2.0』はとても魅力的なモデルで、実際にかなりの反響があります。装着してこそわかる判読性の良さや複雑な形状のブラックセラミックをきっちり仕上げる完成度の高さ。ブレスレットはラバーの裏貼りのおかげでフィット感がとても良く、ジラール・ペルゴの技術力の高さを至るところで感じることができます。
この限定モデルだけでなく、ラグスポの流行でロレアートも爆発的な人気になっていて、ジラール・ペルゴの認知度はかなり上がってきているのを実感します。そのほかにも良い時計が多く、ヴィンテージ1945やブリッジに注目が集まるのも時間の問題かもしれません。ブランド自体もYouTubeやSNSで存在を知ってお問い合わせをいただくことが増えていますし、ジラール・ペルゴ人気はまだまだ続きそうですね」(oomiya 心斎橋店・田井さん)
oomiya 心斎橋店https://www.jw-oomiya.co.jp/ |
証言4:oomiya 京都店
移転リニューアル後の話題の中心に
「ジラール・ペルゴは、2022年2月より現在の四条通に移転をしてからの導入となります。四条烏丸の交差点から約徒歩3分という、普段から人通りの絶えない場所となったこともあり連日多くのお客様にご来店いただいていますが、お目当てのブランドがジラール・ペルゴという方がかなりいらっしゃいます。とくにロレアートの人気は凄まじく、リニューアルオープンから数日でご用意していた分が売り切れに。
接客を重ねるうちにわかったのですが、ジラール・ペルゴは京都ではかなり知られたブランドだったんです。いまは府内で唯一の正規取扱店ですし、『キャスケット 2.0』が発表されたときもすぐに多くのお問い合わせがきました。実際に触れると予想以上に着け心地が良く、デザインも男心をくすぐります。このモデルをきっかけにジラール・ペルゴの歴史をお伝えできたり、ヴィンテージ 1945や1966といった他のコレクションをご案内できたりと、話が広がることも多く、話題の中心となっています」(oomiya 京都店・岡本さん)
oomiya 京都店https://www.jw-oomiya.co.jp/ |
4名店の証言で分かった爆発的人気の牽引モデル
4店舗を取材してわかったのは、間違いなくジラール・ペルゴが売れまくっているという事実。この勢いはロレアートからキャスケット 2.0を経て、これからヴィンテージ1945や1966、ブリッジにまで人気が波及していくに違いない。実際にアヴェンチュリンやオニキスを文字盤に使った限定など、希少モデルから徐々に店頭から姿を消しているという。ジラール・ペルゴは機械式はもちろんのこと、クオーツを含むすべてを自社で内製するマニュファクチュールだ。それゆえコロナ禍を抜けたとて、急激に製造本数が増えるとは考えにくい。ラグジュアリー・スポーツウオッチのブームで存在を知った人も、クラシカルなコレクションに宿る名門の時計製造の技術力の高さに目を向けていただきたい。そう筆者は心から願うばかりである。
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