高級時計をダメにする「リューズ操作の罠」。防水機能を一瞬で失う原因と対策

腕時計は精密機械であり、現代ではクロノグラフやGMT、パーペチュアルカレンダーなど、多種多様な腕時計 機能が搭載されている。その中でも、実用性において最も重要視され、かつ日常的に頼りにされている機能が「防水性能」である。

しかし、長期間腕時計を愛用していると、「ねじ込み式リューズが根元まで閉まらない」というトラブルに見舞われることがある。実はこの状態、大切な時計にとって致命傷になりかねない非常に危険なサインなのだ。本記事では、リューズが閉まらなくなる原因と具体的な対処法について解説する。

閉まらないリューズが招く悲劇。「10気圧防水 どのくらい」の基準も無意味に

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時計のスペックに関して、「10気圧防水 どのくらいの水圧や環境に耐えられるのか?」という疑問を持つユーザーは多い。一般的に10気圧防水(日常生活用強化防水)であれば、水仕事や急な雨、水上スポーツ、素潜り程度なら耐えうるとされている。

しかし、それはあくまで「ねじ込み式リューズが完全に閉まりきっている状態」を前提とした話である。リューズが根元まで閉まらず、わずかでも浮いている状態であれば、いくら堅牢なダイバーズウォッチや10気圧防水モデルであっても、その防水性能は「ゼロ」に等しい。そのまま手洗いや雨に晒せば内部への浸水を許し、ムーブメントのサビや文字盤の腐食といった、取り返しのつかない甚大なダメージを引き起こす原因となるのである。

なぜ根元まで閉まらなくなるのか?原因は「汚れ」と「サビ」

ねじ込み式リューズが閉まらなくなる最大の原因は、ネジ山部分への汚れの堆積やサビの発生である。

リューズのネジ山は、日々の着用で皮脂やホコリ、汗などが非常に溜まりやすい箇所だ。これを放置すると目詰まりを起こし、物理的にネジが回らなくなる。さらに進行すると金属部分にサビが発生し、作動不良を引き起こす。動きが鈍いと感じたら、まずはリューズを引き出し、ルーペなどを使ってネジ山の細部を観察してみてほしい。

【対処法1】汚れが原因ならセルフケアで解決可能

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観察の結果、単なる汚れの堆積であれば、自宅での簡単なケアで改善する可能性がある。

用意するものは、柔らかいブラシ(柔らかめの歯ブラシなどで代用可)と爪楊枝である。ブラシをネジ山に沿って上下左右に角度を変えながら動かし、丁寧に汚れを掻き出す。リューズの根元など、ブラシが届きにくい細部の汚れは、爪楊枝を使って優しく取り除くのが効果的だ。これだけでスムーズにねじ込めるようになるケースも少なくない。

【対処法2】サビや部品の損傷は迷わずプロの修理へ

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入念に汚れを除去してもリューズが閉まらない場合、無理にペンチなどで回そうとしたり、市販の潤滑油を吹き付けたりしては絶対にいけない。この場合、ネジ山部分の深刻なサビや腐食、あるいはリューズチューブやリューズ軸の凹み・損傷が原因である可能性が高いからだ。

こうなっては素人の手には負えない。外装部品やムーブメントを分解し、該当部品の点検・交換、再調整が必要となる。プロの時計修理技術者に速やかに相談するべきである。

【修理費用と期間の目安】

  • 費用: 分解・洗浄・交換・再調整などで約2万円〜6万円 + 交換部品の実費

  • 期間: 約6週間程度

まとめ:日常ケアこそが最大の防御

時計の中で最も指で触れる機会が多いリューズは、構造上どうしても汚れが溜まりやすい場所である。異常を放置すれば、高い確率で内部の故障を招き、高額な修理費用と長い修理期間を費やす「大ごと」に発展してしまう。

腕時計が持つ本来の性能を長く維持するためにも、使用後は柔らかい布で拭き取るなど、リューズ周辺の日常的なセルフケアを怠らないことが肝要である。

取材・撮影協力/五十君商店

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