新しいCEOが着任したユリス・ナルダンは、2回目の出展となった今年のSIHHでも、同社らしい革新性とユーモアを見せてくれました。
文/鈴木裕之
自動巻き化されたフリーク ビジョン
革新性の最先端にあるモデルが「フリーク ビジョン」です。
これまでも「フリーク」は、新素材や新しい脱進機システムを搭載するショーピースとして機能してきましたが、今年はまったく新しい巻き上げシステムを搭載。自動巻きのフリークへと進化を遂げました。
センターに巨大な香箱を配置するのは手巻きと同様ですが、その外周部分に「グラインダー」と呼ばれるオシレーティングベゼルを配置して、ラチェット式の両方向巻き上げを実現しています。
一般的なローターと異なるのは、グラインダーが大きく回転しなくても、その上部に設けられたシリコン製のビーム(構造物)が、巻き上げの動作を行ってくれること。
ほんの少しのグラインダーの動きでも、そのまま巻き上げ爪に力を伝えることができるため、専門的にはデッドアングル(不動作角)と呼ばれている、“ローターは回っているのに、ゼンマイを巻き上げていない角度”も極めて小さくなっています。
また従来のフリークに盛り込まれてきた、フロントベゼルによる時刻合わせと、バックベゼルによる手巻き機構はそのまま残され、またコンスタントフォース機構を設けているため精度も極めて高くなっています。
伝統を受け継ぐエロティックピース
一方、同社のユーモアを伝統的な手法で表現したのが、ホット オルロジュリー コレクションから発表された「ミニッツリピーター クラシック ボワヤー」です。
ブースの片隅には、まるでジェントルメンズルームのような“秘密の赤い小部屋”が設けられ、新作はそこに展示されていました。男性のみがこっそりと愉しむ“エロティック オートマタ”というわけです。
ふた組の男女が登場するダイアルには、ミニッツリピーターの時、クォーター、分の打鐘に合わせて動く、4つのオートマタ機構が内蔵されています。
まぁ、あまり詳しくオートマタの動きを説明することはできないのですが、リアルな動きに思わず吹き出してしまったほど。
通常ならば、オートマタの動きは3つであるところを、今回は4つに拡大したというあたりに、技術的な矜持を感じることができます。
ユニークな造形のプロダイバー
スポーツウォッチのコレクションでは、1000mの防水性を発揮する「ダイバー ディープ ダイブ」が注目株となりそうです。チタン合金を用いた軽量ケースには、プロ仕様のヘリウムエスケープメントバルブを装備。独特な形状のリュウズプロテクターが、ハンマーヘッドシャークを思わせるキャラクター性を際立たせます。
搭載ムーブメントには、ユリス・ナルダンが得意とするシリシウム製の脱進機が備えられ、精度面でも大きな期待が寄せられます。
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