SIHH2017で発表された新作を紹介していきます。今回はユリス・ナルダン。SIHH初出展となる同社は、果たしてどのような新作を用意してきたのか。ご覧ください。
ヨットを通じて“海”とブランドの繋がりを表現
昨年は、世界で最も有名なヨットレース「アメリカズカップ」が、福岡で日本初開催されて大いに話題となりました。そのレースにも参戦していた「アルテミス レーシングチーム」をスポンサードしているのが、ユリス・ナルダンです。
ヨットレースは、いかに時間通りにスタート地点を走り抜けるかが大きな鍵を握っています。スタート時間まで残り何秒あるのかを逐一知ることは、ヨットマンにとっては非常に重要な情報である一方、大自然を相手にしているので悠長にストップウオッチなどを出してはいられません。
逆進式のクロノグラフカウンターを備えた最新作のマリン“レガッタ”は、最長10分前から残り時間をカウントダウン。レースのスタート時間に合わせて分積算針を設定してからカウントダウンを始動させると、分と秒のクロノグラフ針が反時計回りに運針します。
先端が黄色いクロノグラフ秒針が逆進して12時位置に到達すると、今度は直ちに時計回りで計測をスタート。ここまで考えられた機構は他にはありません。
ユニークな動きを動画でご確認ください↓
スタート前に時計を設定しておけば、あとはゴールするまで時計を触る必要もなく経過時間を確認可能という、非常に実用性に富んだ機能といえるでしょう。
このモデルはブルーとホワイトの文字盤バリエーションのほか、アルテミスレーシングのカタマラン(船艇)の姿がシャンルベエナメル(金属板に彫金を施し、そこにエナメルを埋める技法)で描かれた世界限定35本のモデルも発表されました。
美麗エナメルダイアルが手の届く価格で登場
ユリス・ナルダンのエナメル文字盤は、名窯ドンゼ・カドランによるもの。その銘自体に非常に価値がある少量生産の文字盤は、主にハイエンドウオッチや一部の限定品に採用されてきました。それが、新作ではシンプルなスモールセコンド三針ウオッチで110万1600円という価格で登場します。
美麗なブルーエナメルダイアルには、緻密なフランケ様の彫りが刻まれており、非常にドレッシーな仕上がり。搭載ムーブメントは、自社製の自動巻きCal.UN-320となっています。
極めつけは300万円代のトゥールビヨン!
SIHH2017のユリス・ナルダンの新作テーマは、自社製であること、技術的な先進性があること、類まれな芸術性があること、でした。
この3つの柱のすべてを満たすのが、マリーン トゥールビヨンです。搭載するのは、新しい自社製Cal.UN-128。文字盤はドンゼ・カドランの手によるグラン・フーエナメルとなっています。
すべてのパーツに職人の技が宿るコンプリケーションですが、これをユリス・ナルダンは348万8400円という価格で作り上げてしまったのです。
昨年から価格面におけるコンプリケーションの常識が変わりつつありますが、これだけ手の込んだモデルで350万円を切るには相当な企業努力がなければ不可能。1846年からの歴史を重ね、時計製造を自社で完結できる体制を持つユリス・ナルダンの技術力が見事に発揮された一本と言えるでしょう。
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