“VERY RARE”な腕時計を作り続けるH.モーザーが手がけた新たな希少モデルは「真っ黒」&「日本限定」

H.モーザーは、1828年にハインリッヒ・モーザーにより創設された時計ブランドです。「VERY RARE」というスローガンを掲げる通り、このブランドが作り上げる腕時計は非常に手が込んでいるだけでなく、挑戦的なデザインにおいても、時計界で稀有なブランドとなっています。ちょうど正統派なフェイスに秘めた“異端”の片鱗を垣間見れる最新作が入荷したという連絡を受けたので、実際に触れてきました。

文/水藤大輔

世界で最も黒い文字盤で話題を呼んだ2018年発表作

皆さんはヴァンタブラックという黒色塗料をご存知でしょうか。ただ黒いだけでなく、光という光を吸収してしまうため、塗られた場所はまるで底なしの穴が空いているようにさえ見えてしまう塗料です。時計界でもごくわずかのブランドが一部には採用していますが、全面に使った市販品というのはH.モーザーが初めてではないかと思われます。

最新技術がいち早く取り入れられる時計界において、この素材がなぜごく限られた時計にしか使われてこなかったかというと、ヴァンタブラックは非常に高額なため。H.モーザーのモデルも、ケース素材はステンレススチールながら、ゴールドケースのモデルに匹敵する価格となっています。

可視光の最大99.97%を吸収するブラック塗料「ヴァンタブラック」を文字盤に採用したH.モーザーの2018年新作「エンデバー パーペチュアル ムーン」(写真左)(425万円(税抜)/Ref.1801-1200)。筆者着用の黒のジャケットや黒文字盤の腕時計と比較しても黒の濃さは圧倒的。照明の写り込みはガラスの反射で、文字盤には針の影さえ発見できなかった。ムーンフェイズは1027.30年後で1日誤差の超高精度仕様だ。世界限定50本はすでに完売とのこと

ちなみに、この時計のデザイン、ムーンフェイズ以外に情報がなにもないですよね。これは、ブランドロゴなどなくても、「仕上げの美しさと斬新なデザインでH.モーザーの腕時計だとわかる」という自信の表れです。

実はH.モーザーは、ひげゼンマイまで自社内で作ることのできる世界でも稀なブランドで、もちろん自社製ムーブメントも製造しています。また、H.モーザー製の脱進機は他社から注文がくるほど信頼性が高く、外部にも供給するほど。外観でも内部機構でも驚くほどの個性を持ったブランドなのです。

独自の発想力と技術力のみを全面に出した究極のシンプルウオッチ

さて、このようにユニークなタイムピースを手がけているH.モーザーが、2013年より現在のメルブグループの筆頭ブランドになってから初めて日本限定モデルを発表しました。

ベースとなったのは、2017年発表作「エンデバー・センターセコンド」。ダイナミックな曲線、流線的なラインが特徴の直径40mmケースに、次世代を担う自社製の自動巻きムーブメントCal.HMC200を搭載したモデルです。

自社製Cal.HMC 200。フラット オーバーコイルを備えるオリジナルのシュトラウマン・ダブル・ヘアスプリングを備えた脱進機をブルーのブリッジで支持。モーザーストライプとダイヤモンド研磨による仕上げでも独自性を主張する。ローターは18Kレッドゴールド製。パワーリザーブは約3日間。毎時2万1600振動
ダブル・ヘアスプリングは、垂直に連結された2つのひげゼンマイの共振現象によって等時性を保つ。同様のメカニズムは水平設置では複数のブランドから出ているが垂直設置は極めて珍しい

日本限定モデルでは、これにH.モーザーのアイコンである“フュメ”ダイアルの新色となる「ブルーホライズン」を採用。フュメとはフランス語で「煙」を意味するのですが、H.モーザーでは絶妙なグラデーションのついた文字盤を示す言葉となっています。ちなみに、この文字盤は職人が1枚1枚手作業で何度も塗料を重ねながら仕上げています。

くぼみを多用した複雑な曲面構成のケース。絶妙な仕上げの使い分けもなされており、かなりポリッシャー泣かせなデザイン

もちろん、この時計にもブランドロゴやインデックスなどは一切ありません。それでもやはりH.モーザーの時計だとすぐにわかりますよね。

あらゆる手を尽くして作り上げられる至高のシンプルウオッチ。その特別感を楽しむ心のゆとりを持ちたいと思わせるエンデバー・センターセコンド ブルーホライズンは日本限定20本のみの販売と、やはり「VERY RARE」なのでありました。

「エンデバー・センターセコンド・オートマティック コンセプト “ブルーホライズン”」295万円(税抜)/Ref.1200-0204
自動巻き(Cal.HMC 200)。18Kホワイトゴールドケース。直径40mm/厚さ10.7mm。アリゲーターストラップ
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