フィフティ ファゾムスのエッセンスを受け継ぎつつ、人間工学に基づく設計で進化
では、「フィフティ ファゾムス テック ゴンベッサ」の細部に迫りたい。まず3・6・9・12を配するブラックダイアルや表面にサファイアクリスタルを使った逆回転防止ベゼル(セラミックインレイ)、ダイビングスケールの菱形マークはお馴染みの仕様。だが、ダイアル上の時刻表示関連はオレンジカラーに合わせ、潜水時に重要な3時間針(3時間をかけてダイアルを一周する針)とダイビングスケールはホワイトで統一。各インデックスはメタルの縁がないモノブロック体になっており立体的で読み取りやすく、6時位置には同色でプロ仕様を意味する「Tech」があしらわれている。3時間針は秒針とほぼ同等の長さで、夜光塗料で加工された先端がベゼルのスケールを確実に指し示す。
要所に夜光処理がなされており、暗闇でブラックライトを当てると写真のように発光する。リブリーザー・ダイビング向けという特別なコンセプトからベゼルのスケールと3時間針がとくに強く光り、ダイビングのための安全装置として機能する。これは仮説だが、時刻表示部の蓄光性能はあえて控えめにし、ダイビング時に不可欠な表示部のみ目立たせる選択を採ったため、このような仕様になったと考えられる。なお、風防もベゼル天面も硬質なサファイアクリスタル製のため、傷が付きにくいうえ極めてクリア。長期使用しても視認性が著しく低下することはない。
ケースは、時計界では最高ランクのチタンとされているグレード23チタンを使用。サテン仕上げを多用して反射を抑え、プロツールとしての機能美に徹している。ラグは持たず、専用の湾曲したラバーストラップがケースから“生えている”ような構造になっており、直径は47mmで厚さは14.81mmと大型ではあるものの、腕に載せた際のストレスは大きくない。むしろ、多くの人がこのサイズながらの軽快さに驚くことだろう。防水スペックはフィフティ ファゾムス オートマティックと同じ30気圧防水で、3時側面にねじ込み式のビッグリューズを、10時側面に手動開閉式のヘリウムガス排出バルブを備え、飽和潜水に対応している。
搭載ムーブメントは、自慢のマニュファクチュールキャリバー「1315」をベースに3時間針を追加するなど手を加えた「13P8」。こちらもゼンマイをフルに巻き上げた状態ならば120時間駆動するロングパワーリザーブを有し、耐磁性や耐久性が高められているためダイバーズに適したスペックとなっている。また、飽和潜水対応モデルながらケースバックがシースルーな点もユニークである。気密性を高めるために通常はメタルの裏蓋となる例が多いが、本機は特殊な形状のねじ込み溝を採用するなど、サファイアクリスタルバックを実現している。これを通し、ゴンベッサ プロジェクトのロゴを刻印するゴールド製ローター、美しいコート・ド・ジュネーブ装飾、精緻なメカニズムを鑑賞できる。こうした卓越した技術者の手の込んだディテールも味わえる本機からは、伝統あるフィフティ ファゾムスが掲げる実用的なラグジュアリーダイバーズとしての矜持が感じられる。
「フィフティ ファゾムス 70th アニバーサリー Act 1」に続く「フィフティ ファゾムス テック ゴンベッサ」も、傑作ダイバーズのアニバーサリーイヤーに相応しい逸品といえる。果たして“第3幕”はどのようなモデルなのか!? 次回作に向け、時計好きはブランパンから目が離せそうにもない。
「フィフティ ファゾムス テック ゴンベッサ」 Ref.5019-12B30-64A 387万2000円(税込)
スペック:自動巻き(自社製Cal.13P8)、毎時2万8800振動、120時間パワーリザーブ。グレード23チタンケース(シースルーバック)、一体型ラバーストラップ(ダイビング用エクステンションラバー付き)、球面サファイアクリスタル風防、サファイアクリスタルベゼル(ブラックセラミックインレイ)。直径47mm、厚さ14.81mm。2023年ブティック先行発売予定
問い合わせ先:ブランパン ブティック銀座 TEL.03-6254-7233 https://www.blancpain.com/ja ※価格はすべて記事公開時点の税込価格です。
Text:山口祐也/Yuya Yamaguchi(WATCHNAVI)
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