【編集長の腕時計ジャーニー】第1回・ロンジン コンクエストV.H.P. GMTフラッシュセッティングと、クオーツに改めて魅力を感じたローマへの旅

2018/9/21 12:00
SHARE ON
LGCT of Rome – Grand Prix – Ben Maher (GBR) on Explosion W
– Rome, Stadio dei Marmi, 8 September 2018
– ph.Stefano Grasso/LGCT

文/関口 優(WATCHNAVI編集長)

僕にとって、イタリアへの旅はいつだってわくわくさせられるものが詰まっていて、はじめての体験や感動がある。さいしょに彼地を踏んだのは大学生の頃で、春休みを利用して格安のツアーで訪れた。ヨーロッパ自体もはじめてで、趣のあるブラウンに染まった建物は日本では見られない美しさがあり、石畳の路面は慣れない僕にとってスムーズに歩くのがなかなか難儀だったことを覚えている。時計以上に無類の靴好きである僕は、だからヨーロッパの人は底の厚いブーツを履くのかと膝を打ち、そのままフィレンツェ街中のトッズに駆け込んでウィンターゴンミーニを手に入れたものだった。

前置きが長くなったが、今回の目的地はローマで、馬と腕時計がテーマである。時計好きならば、このキーワードでピンとくるブランドがあるだろう。そう、ロンジンの新作ローンチイベントと、格式ある障害飛越レースであるロンジン グローバル・チャンピオンズ・ツアー観戦への参加のため訪れたのだ。

ダービーよりも魅力的に映った障害飛越レース

ロンジンは日本人にとって馴染みのある高級時計ブランドである。そのロンジンが2013年よりタイトルスポンサーを務める「グローバル・チャンピオンズ・ツアー」の観戦。正直筆者は、唯一2006年の有馬記念にディープインパクトの引退レース見たさが故訪れた、にわかもにわかであるため、この世界的な障害飛越レースをどう楽しむべきかずっと悩んでいた。

会場内に設置されたロンジンショップ。最新作が並んだこともあり、黒山の人だかりだった
レース後のショーも楽しみどころ。ローマっ子たちも日が暮れるまで馬と人によるエンタテインメントを楽しんでいた

一般に、馬の世界での序列として競走馬が最も高位であるとされているし、どうせならそちらを観たかった……と思っていたぼくの常識はレースの開始とともに覆された。緻密にレイアウトされたコース上の障害をダイナミックに翔け、飛ぶ馬とジョッキー。人の操作なしには複雑なコースを決められたように走ることは不可能であるし、ジョッキーとの呼吸を合わせた躍動なしには何度も飛翔を繰り返すことは無理だろう。最終的にタイムと飛越時の優劣による減点で順位が決まるのだが、その明快なルールもまさに、人馬一体の様はぼくにとって興奮のるつぼだった。

ローマの競技場スタジオ・ディ・マルミは、夜が更けても幻想的なショーが続けられた

世界最古のクオーツ開発を礎とし、今、新たなる最先端のアンベール

コンクエストV.H.P. GMTフラッシュセッティングのワールドプレミア会場。世界的建築家であるマッシミリアーノ・フクサスによる建物だ

さて、もうひとつの(?)主目的である新作のローンチであるが、今回お目見えしたのは2017年に発表されて以来、同社が最も注目を集めるコレクションから、その名も「コンクエスト V.H.P. GMTフラッシュセッティング」だ。“クオーツは日本の技術”と思っている我々には衝撃的なのだが、実はロンジンはセイコーに先んじて1954年にクオーツ時計の開発を完了している。そして、2017年には年差5秒というそれまでの最高精度を塗り替える性能を引っ提げて「コンクエスト V.H.P.」を発表したことは記憶に新しい。

スマートフォンの光の点滅によって、時刻情報を同期できる

「コンクエスト V.H.P. GMTフラッシュセッティング」はその名の通り、“光”でGMTの時刻調整ができる時計なのだが、非常に革新的で驚いた。日本で一般的な方法と異なり、スマホのWi-FiやBluetoothを用いずに、専用アプリを介した“光の点滅”でもって時刻情報の同期が行える。頻繁に2つのタイムゾーンを行き来する欧州の人々だからこそ生み出せた、利便性の高い機能である。もちろん、世界中を旅するすべての人に有用な時計であることも間違いない。

ロンジンにとって、クオーツはアイデンティティを表すものであり、革新性の表現であることを恥ずかしながら今回初めて思い知った。電気回路を持つこうした時計は日本の独壇場だと思っていたが、クオーツ時計の少ないトルクでGMT機能を実装し、なおかつスマホとのリンク機能まで備えてしまうのだから、スイスブランドの実力もまた底知れないものがあるのだ。CEOであるフォン・カネル氏は、”我々のプライスゾーンで、高品質なものを数多く提供することが自分のビジネスであり、使命”と、今回の旅で決行したインタビューで明かしてくれた。いかにもぼくたち日本人が共感できる想いであり、ロンジンがこれからも高級時計に興味を持つ人々にとって、もっとも身近な存在であろうとする決意表明であるようにも感じられた。
またひとつ、時計ブランドの知られざる魅力に気づいてしまった。やはり、イタリアへの旅は新しい発見で満ちている。

ロンジンCEOのフォン・カネル氏。1988年より現職。鋭い洞察力と時計への愛で、実に30年にも渡りロンジンを率いる偉人。スウォッチグループ発展の立役者のひとりでもある
TAG