【Pittiスナップ】Vol.1「ロレックス(ROLEX)」中里 彩のWatch × Fashion Conscious

イタリア・フィレンツェで毎年開催されるメンズファッションの祭典「Pitti Immagine Uomo(以下「Pitti」)」のスナップ写真をとおして、メンズスタイルデザイナー中里 彩がファッションと時計を解説する連載です。ぜひお付き合いくださいね。

栄えある連載の第1回目は王道の「ロレックス(ROLEX)」から見ていきましょう。ロレックスといえば、エグゼクティブのステータスとして昔から多くの日本人に所有されている高級時計ブランドの1つではないでしょうか。まず初めの1本として男性が憧れる時計ブランドですね。日本では昔から絶大な人気を誇っているロレックスですが、意外にも「Pitti」に参加するイタリア人の大半がロレックスをしているほど今や世界的なロレックス人気が起こっています。しかしそこはやはりイタリア人。彼らのロレックスと装いの合わせ方は日本人とは異なり、「こんな格好にロレックスしちゃうの?!」というほどとてもユニークで粋な合わせ方をしています。

 

1.黒でまとめたドレッシースタイル×サブマリーナ

 

こちらの男性の時計は日本でも大人気の「サブマリーナ」。黒とシルバーのクラシックなダイバーズウオッチの色合いはスーツスタイルにも落ち着くため、日本でもビジネスシーンに着用している方が多いです。

この方はコートやスカーフ・ベスト・パンツとドレッシーなアイテムにスポーティなサブマリーナと革靴を合わせることでややカジュアルダウンしています。普通のイタリアの方ならインナーや靴を茶系でまとめてエレガントな雰囲気にしがちですが、この方は黒でまとめるモード系の新しいテクニックを取り入れています。茶色のコート × 茶色のスカーフ、サブマリーナの黒いフェイス × 黒い革靴と茶と黒の色使いをうまくまとめているところがお洒落のポイントですね。

 

2.コートとスニーカーのヨーロッパの休日スタイル×コスモグラフ デイトナ

 

こちらの男性の時計はロレックスで最も有名かつ手に入らない「コスモグラフ デイトナ」。時計好きでなくとも喉から手が出るほど欲しいといわれるモデルです。ブレスレットのイメージが強いコスモグラフ デイトナですが、ゴールドケースに敢えてモスグリーンの革ベルトにすることでエレガントな大人な雰囲気を醸しだしていますね。

この方もオレンジ色のチェックが入ったグリーン系コート × モスグリーンの時計の革ベルト、同じくオレンジ色のセーター × スニーカーと統一感のあるコーディネートでまとめているところがポイント。休日にサラッとコートを羽織ってちょっとお出かけするようなヨーロッパ的な着こなしです。さらにカジュアルな装いの中に革ベルトのエレガントな時計を溶け込ませる合わせ方もまたヨーロッパ的なスタイルといえます。

 

3.スポーティなコーデュロイスーツスタイル × オイスターパーペチュアル デイトジャスト

 

こちらの男性の時計はエントリーロレックスとして人気の「オイスターパーペチュアル デイトジャスト」。薄いケースとローマ数字のインデックスのドレッシーで落ち着いた雰囲気はビジネスでもカジュアルでも重宝する1本です。

オレンジ色に近い茶色のコーデュロイダブルスーツは日本人が普段着るにはなかなか難しいのですが、この方は中に白いタートルネックを着ることで主張の強いスーツの色とのバランスを落ち着かせています。ちなみにキャップとデイパックはアメリカ発祥のファッションスタイルのためか、イタリア人でキャップを被る人はあまりいません。白い時計のフェイス× タートルネック × スニーカー、黒のキャップ× デイパックとスーツ以外をモノトーンで抑えることで、スーツの存在感を引き立てるテクニックは若い男性ながらとてもレベルが高いのではないかと思います。

 

4.綺麗めなミリタリーヴィンテージスタイル×GMTマスター

 

こちらの男性の時計は「GMTマスター」。青赤のペプシベゼルが特徴的で、第二時間帯が表示可能とグローバルな香りのするややマニアックな時計です。

ボアブルゾンにグリーンのミリタリーパンツを合わせたこの方の着こなしは、日本でもトレンドになっているヴィンテージ感のある王道なスタイルです。野外的な泥臭さを感じてしまいがちなミリタリーアイテムを、白いタートルニットと白スニーカーを合わせることで綺麗めな印象にまとめているところがポイントでしょう。また、GMTマスターといえばブレスレットで身につける男性が多いイメージですが、この方は敢えて茶色の革ベルトに変えることでヴィンテージスタイルの中に時計だけが浮いてしまわないよう全体のバランスを計算し尽くしているのはお見事です。

 

世界的に人気のロレックスですが、ことさら日本では「誰もが持っている時計」「わかりやすいステータスの象徴」のイメージが定着しているようにも見受けられます。特にエントリーモデルの「サブマリーナ」や「デイトジャスト」はビジネスからカジュアルシーンまで街なかでもよく見かけますね。まさに「時計のルイ・ヴィトン」のような存在。これってどうなのでしょうか。ブランドや時計そのものへの思い入れや愛情、自分のスタイルがあって身につけるのなら大賛成ですが、「わかりやすいからとりあえずロレックスをしておけばいいよね」くらいのメンタリティでロレックスを着用する男性が少なからずいるのは事実です。自身の軸となるスタイルや世界観があるからこそ、その男性と時計が魅力的に映るのであって、「とりあえずロレックスをしておけばいい」は今の時代あまり格好いいとは言えませんよね。惰性でロレックスを選ぶのは避けたいところです。

Pittiの彼らのようにコーディネートに溶け込む時計の選び方、ベルトを変えてたまには雰囲気を変えてみる遊び方などぜひ参考にしてみてくださいね。次回のテーマは「ラグジュアリースポーツウオッチ」です。お楽しみに。

 

 

▼ライタープロフィール

中里 彩(Aya Nakazato)

メンズスタイルデザイナー。コラムニスト。日本にて熟練の仕立て職人のもとでテーラリングを学んだ後、エグゼクティブの男性を対象に装いのコンサルティング・スタイリングを行う。WEBメディア「Aya Nakazato Official Medium」では、独自の目線からメンズファッション業界におけるものづくりの魅力やメンズ服の着こなし解説などを発信している。

WEBメディア 「Aya Nakazato Official Medium」
https://aya-nakazato.com/
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