第2回目は「ラグジュアリースポーツウォッチ」をテーマに、世界3大ブランドから「パテック フィリップ」と「オーデマ ピゲ」の時計を見ていきましょう。ご存知のとおりどちらも前回記事のロレックスより高価でマニアックな世界最高峰のブランドです。誰もが手を出せる世界の時計ではありませんが、だからこそ時計好きなら誰もが持ってみたいと憧れる時計ですね。
1.オーデマ ピゲ ロイヤルオーク(グレー文字盤)
こちらの男性の時計は「オーデマ ピゲ」のロイヤルオーク。今回のテーマでもある「ラグジュアリースポーツウオッチ」というカテゴリを切り拓いたモデルで、1972年に誕生しました。”ステンレススチール素材で高級時計を作る”という当時では前衛的なモデルで発売当初は全く売れなかったようですが、最近はプレミアがつくほどの人気。流石は世界最高峰ブランドが手間暇かけてディテールを仕上げているためとても品格があります。
ピーコートは日本ではコンサバなマリンルックというイメージありますが、イタリアではミリタリー的なカテゴリで着る方が多いです。日本では寒々しく見えてしまう冬の白パンもイタリアでは普通に見かけます。黒タートルネックにスエードの茶靴を合わせることでしっかり冬の表情を出していますね。このようなシンプルなスタイルのときこそ時計でさりげなくクラス感をアピールするのがイタリアミドルエイジの定番。よく見たらロイヤルオークだった、なんて粋ですよね。
2.パテック フィリップ ノーチラス(Ref.5712/1A)
こちらの時計は「パテックフィリップ」のノーチラス5712モデル。ノーチラスもロイヤルオークと同様にラグジュアリースポーツウォッチの代表的モデルで、最もシンプルな3針モデルはいまや10年待ちというから恐るべし… ステンレス素材の5712モデルにはムーンフェイズが付いているのが特徴です。
スーツにブレスレットの「パテックフィリップ」という組み合わせはイタリアのトップビジネスマンにはありがちなスタイル。 王道ルールでは「クラシックなスーツには同じパテックでもカラトラバにするのが正解だ‼︎」と異論を唱える方もいらっしゃるとは思いますが、ここはイタリア的なちょいハズし。”わかっていて敢えてハズす”という見せ方こそ格好いい。日本でもいまではスーツにブレスレットのスポーティーな時計を合わせる男性の方が多いですが…どうか”わかってやっている”のだと願いたいものです。
3.パテック フィリップ ノーチラス(Ref.5740/1G)
こちらの時計も「パテックフィリップ」のノーチラス。パーペチュアルカレンダーの5740モデルです。5740モデルはシルバー色ですがホワイトゴールド素材のため、ステンレス素材より高級感が数段上です。重量も驚きの200g超!「オシャレは忍耐」とよく言いますが、手首にこんな重さの時計を巻いてでも颯爽と着けこなせるのはイタリア男性だからこそでしょう。日本人には重すぎてちょっと厳しいかもしれませんね。
イギリス的なコートにGジャンを合わせた貫禄のある彼のカジュアルスタイルは若い世代の着こなしとしては野暮ったくなりがちですが、彼のようにさりげなくホワイトゴールドのノーチラスを合わせてクラス感を演出する見せ方は見習いたいですね。
4.オーデマ ピゲ ロイヤルオーク(青文字盤)
こちらは「オーデマピゲ」ロイヤルオークの青文字盤。前出のロイヤルオークはグレーの文字盤でしたが、こちらは青の文字盤。いまやプレミアがつくほど人気のロイヤルオークの中でも、特にこの青文字盤はなかなか手に入りません。
2019年春夏のトレンドカラーでもあるオレンジイエローのコートが良いアクセントになっている着こなし。コート単品で見ると強烈なのですが、こういう場合はパンツやインナーを定番アイテムでシンプルにまとめて、オレンジ系(コート・靴)と黒系(ストール・ソックス)とネイビー系(パンツ・時計のフェイス)のように色の数を抑えてトーンを合わせるとバランスが取れるので試してみてくださいね。
世界三代ブランドともなると、あまりに高価であるために日常ではなかなかお目にかかれない時計です。Pittiのファッション関係者でもやはりビジネスで成功した40代以上がこのランクの時計を身につけていて、30代ではほとんど見かけることはありません。人としてビジネスパーソンとしてキャリアと歴史を重ねた男性に相応しい時計とも言えますね。では、30代以下の男性が「パテックフィリップ」や「オーデマ・ピゲ」クラスの時計を身につけるのはどうなのでしょうか。30代でこのクラスの時計を身につけられるステージにあることは素晴らしいことですが、大切なのはその身につけ方です。仕事柄、30代から60代まで幅広い年齢層のエグゼクティブ男性にお会いしてきましたが、エグゼクティブの若い男性は、例えば手首ほどの大きいフェイスにゴールドケースなど”存在感のあるわかりやすい時計”を好んで身につける傾向があるように思います。主張の強い時計を全面に目立たせるスタイルで「ちょっと品がないなぁ」と感じてしまうケースもしばしば。もちろん年齢によって”格好よさ”の定義は違いますが、”カッコいいかもしれないけど品がない”というのはとても残念ですよね。
けれども難しいもので、スポーティーだけどシンプルで品格あるオーラを宿しているロイヤルオークやノーチラスの場合、20代30代の若い男性は時計のもつ風格に負けてしまうことがあります。内面から滲み出る味わいや風格が届かず、時計に着けられている状態になってしまうのです。これが「パテックフィリップ」のカラトラバのようにクラシカルな革ベルトの時計だったらなおさらですね。しかし逆説的にはなりますが、”身につけられるなら若いうちからクラス感のある時計を身につけておくと馴染んでくるのも早い”というのも事実。意識が変われば行動が変わるように、自分自身が時計の風格に追いつこう、相応しい男になろうとするのです。若いと「まだ自分には早い、似合わない」と尻込みする方もいますが、初めは似合わなくても早いうちから少しずつ自分に馴染ませていくことで、やがてPiitiの男性たちのようにをさりげなく格好よく着けこなせるようになるのでぜひトライしてみてください。
シンプルで品格ある時計でさりげなくクラス感を出す Pittiのミドルエイジの着けこなし、ぜひ参考にしてみてくださいね。
▼ライタープロフィール
中里 彩(Aya Nakazato)
メンズスタイルデザイナー。コラムニスト。日本にて熟練の仕立て職人のもとでテーラリングを学んだ後、エグゼクティブの男性を対象に装いのコンサルティング・スタイリングを行う。WEBメディア「Aya Nakazato Official Medium」では、独自の目線からメンズファッション業界におけるものづくりの魅力やメンズ服の着こなし解説などを発信している。
https://aya-nakazato.com/
https://www.instagram.com/il.colore/
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