連載の第5回目からは、Pitti(ピッティ)のスナップに戻り、これまでとは少しアプローチを変えてイタリアでも鉄板の夏のカラーコーディネート「ネイビー×白」のジャケパンスタイルをテーマに着こなしと時計を解説します。それでは早速見ていきましょう。
ストライプジャケット&白パンスタイル × ロレックス「コスモグラフデイトナ」
こちらの男性の時計は初期のロレックス「コスモグラフデイトナ」。一見するとボロボロに見えますが、実は今や1000万円級の値段がつく超絶高価な手巻きのデイトナ6263です。高価なものでもためらうことなく普段使いするのがヨーロッパの人びとの素敵なところ。傷付いたガラスやプラスチックベゼルの風合いが唯一無二な存在感を放っていますね。
このようなコントラスト強い「ブルー×白」のストライプジャケットの着こなしは日本人にとってかなり難度が高く感じられるかもしれませんね。この方はインナーにジャケットのくすんだブルーと同じトーンのデニムシャツを入れることでうまくバランスを取っています。カジュアルに色柄が目立つジャケットを合わせたいときにはインナーやパンツなどその他のアイテムは無地で落ち着かせ、ジャケットの色(この場合はブルー)をうまく拾いながら2〜3色でまとめるのがポイントです。さらにネイビー×白に靴やネクタイでブラウンを足す色遣いもイタリアらしいコーディネートなので参考にしてみてください。
ネイビージャケット&デニムスタイル × パテックフィリップ「アクアノート」
この男性の時計はパテックフィリップ「アクアノート」。おそらくステンレススチールケースのもので、ラバーベルトでカジュアルダウンしています。主張しすぎないブラウンのダイアルがさりげなく存在感を出していますね。黒のラバーベルトと同色のブレスレット、眼鏡、クラッチバックのさりげない色の合わせで全体的に落ち着いた雰囲気にまとまっています。
ネイビージャケットに白シャツ・デニムパンツとこちらも全世界の鉄板的な着こなしです。ジャケットとパンツが同系色でも、異素材を組み合わせることで違和感なくまとまります。この方はデニムの裾を太めにターンナップすることでさらにカジュアル感をプラスしています。日本ではクールビズが浸透したとはいえ、まだまだデニムNGの会社もありますが、このようなきれいめな着こなしならビジネスシーンにデニムも取り入れやすくなるのではないかと思います。その場合、デニムは「リジッド」と呼ばれる洗っていないものが必須。穴あきや色落ちはカジュアル過ぎるので避けたほうが良いでしょう。
ダークネイビージャケット&白パンスタイル × ロレックス「サブマリーナー」
こちらの時計はイエローゴールドケースが眩しいロレックス「サブマリーナー」。通称「青サブ」と呼ばれるサブマリーナーの中でも高級なモデルであり、イエローゴールドがさらにクラス感を醸し出しています。この方はおそらく純正でないレザーストラップに付け替えつつ、日常使いしているようです。ここまで着用キズのついた金無垢モデルは逆に見ていて気持ちいいくらいで、決して時計を甘やかさずに相棒として使う持ち主の品格がうかがえます。
こちらの男性は「ネイビー×白」の2色だけでコーディネートをまとめた一例です。ニットポロを敢えてジャケットと同じ濃紺で揃えることで上半身が引き締まって見えますね。スポーティーなカノコ生地のポロシャツと比べ、ドレッシーなニットポロは単品でもインナーとしても使い勝手抜群なので、日本のクールビズでも大活躍してくれること間違いなしです。フロントボタンがないスキッパータイプのニットポロならよりエレガントに見せてくれるのでオススメ。
テーパードした白パンツはくるぶしが見えるくらい短めにし、今トレンドでもあるボリューミーなソールが特徴のダッドスニーカーを合わせることで、軽くなりがちな下半身の白にボリュームを加えています。ちなみに、こちらのスニーカーは「ヘンダーソン」という北イタリアのブランドのものだそうです。服は2色でシンプルに抑えつつ、時計とアクセサリー・ポケットチーフでアクセントをつけた大人な着こなしですね。
今回見てきたように、一般的にヨーロッパの方は高級な時計やクルマでさえも甘やかさずにガシガシ使うのが当たり前という文化の中に生きています。意外ですが1000万円超のクルマも泥やホコリまみれで、日本のようにワックスを綺麗にかけてピッカピカという方はほとんどいません。時計に対しても同じく、彼らは”傷がつくと資産価値が下がる”といった考えは持ち合わせません。”傷がつくと味わいが増す”というように経年変化もポジティブに考える傾向があり、気にせずガシガシと使う方が多いようです。古きを愛でる。ヨーロッパの街並みを眺めてみてもそんな価値観が根付いているのがよくわかりますよね。
時間を重ねるにつれて味わいが増すのは、男性も同じです。時計と共に自分も味わいを増していく。”傷つくと資産価値が下がる”なんて思わずに、そんな格好いい生き方も選ぶのも良いものではないでしょうか。
▼ライタープロフィール
中里 彩(Aya Nakazato)
メンズスタイルデザイナー。コラムニスト。日本にて熟練の仕立て職人のもとでテーラリングを学んだ後、エグゼクティブの男性を対象に装いのコンサルティング・スタイリングを行う。WEBメディア「Aya Nakazato Official Medium」では、独自の目線からメンズファッション業界におけるものづくりの魅力やメンズ服の着こなし解説などを発信している。
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