【FASHIONスナップ】Vol.6 「ミリタリースタイルと高級腕時計」中里 彩のWatch × Fashion Conscious

さて、連載の第6回目はミリタリースタイルをテーマに着こなしと腕時計を解説します。ミリタリースタイルは元々が”戦場で敵に見つからないように自然に溶け込むための究極の作業着”であるために、どうしても定番のカーキ色をはじめとしたアースカラーに無地、というシンプルで主張の少ない着こなしになってしまうのが難しいところ。野生的で泥臭いイメージをいかにうまく昇華させられるかがお洒落な着こなしのポイントになります。Pittiのイタリア人ファッショニスタがミリタリースタイルをどのようにまとめあげるのか見ていきましょう。

 

ミリタリージャケット & 白ドレスシャツ & デニム  × 「BAUME & MERCIER(ボーム&メルシエ)」ケープランド

 

こちらの男性が着ているのは最もメジャーなミリタリージャケット。古着のように見えますが、実は古着ではありません。4つポケットに立ち襟という特徴をもつ、マニアの間では「M65」と呼ばれているタイプのものです。エイジングされた風合いのジャケットにダメージデニムの合わせはとてもお上手ですね。これがもし真っさらなデニムだったらこの方のような全体的なエイジングの味わいは生まれません。統一感はとても大事なのです。またこうしたミリタリージャケットを着るときには、ドレスシャツを合わせ、足元を革靴にすると砕けすぎずカチッとした印象を与えることができます。ドレス寄りにすることで泥臭さが抜けるのです。これならカジュアルなビジネスシーンでもOKですね。

 

 

最近のメンズファッションのトレンドの1つになっているミリタリーデザインのアウターは、ヴィンテージや古着のブームとも相まって年配から若手まで愛用者が急増しています。これまでクラシカルなデザインしか取り入れてこなかったブランドも続々とミリタリーデザインのアイテムを増やしていて、Pitti Uomoはもちろんミラノなどでもストリート系と同じく力を増している新勢力です。

 

 

こちらの時計は、「BAUME & MERCIER(ボーム&メルシエ)」のケープランドというコレクション。2000年くらいのモデルのようですが、シンプルなクロノグラフです。ちなみに現行モデルは他にも色々なメーターが付いていて、メカニカルな印象を受けるデザインになっています。一見するとあまり特徴のない時計なのですが、使い込まれて自然とケースやブレスに入ったキズが良い味を出していてミリタリースタイルによくマッチしています。ミリタリー的な服にはブレスレットを合わせると、キャタピラーを思わせるその無機質でタフな雰囲気が調和しますね。

 

 

ミリタリージャケット & ペイズリー柄シャツ × 「ROLEX(ロレックス)」サブマリーナー

 

こちらの男性も4つポケットのミリタリージャケットを着ていますが、見え方がガラッと違います。この振り幅があるのがミリタリーデザインの素晴らしいところです。オンオフと着られるのは、同じくミリタリー出自のトレンチコートと共通していますね。この季節にはインナーにTシャツを選ぶのが定番ですが、この方のように柄シャツにすると一気に表情が出てミリタリー要素が弱まります。しかも王道の迷彩柄ではなく、ブルー系のペイズリー柄を合わせることで泥臭さを感じない爽やかな印象になっていますね。お見事です。

 

 

イタリアでは昔からこちらのようなミラータイプのサングラスが人気です。迷彩のようにも見える玉虫色のグリーンのパイロットグラスを合わせるあたり、もはや計算され尽くされていますね。クロップドパンツは人によって裾丈の長さが難しいので日本の方の場合は全身のバランスを考えて選んだほうがいいかもしれません。

 

 

こちらの時計は「ROLEX(ロレックス)」のサブマリーナー。この連載でももはや定番になっている王道ブランドですね。画像だけで判断が難しいのですが、1、2世代前のデイト付きモデルを愛用されているようです。強靭な作りと防水性を腕時計にもたらしたことで知られるロレックスとしては、ミリタリールックとの相性がよく無骨なオイスターブレスレットもいい雰囲気を出しています。

ブルーの時計のフェイスとブルー系のペイズリーシャツもしっかりカラーコーディネートされています。「いやいや、色なんて偶然でしょ」と思われるかもしれませんが、これまでの連載をお読みくださっていれば、Pittiのファッショニスタたちはこれを意図的に合わせていることはもうおわかりいただけていますよね?

 

今回も見てきたとおり、ミリタリースタイルは“泥臭さをいかに昇華させるか”がPittiのファッショニスタのお洒落ポイントでした。ウォッチナビ読者の皆さまの場合は、特に2人目の方のように色柄を少し足してあげると爽やかさが出ていいかもしれません。ミリタリースタイルの着こなしと腕時計の合わせ技、ぜひトライしてみてくださいね。

 

 

▼ライタープロフィール

中里 彩(Aya Nakazato)

メンズスタイルデザイナー。コラムニスト。日本にて熟練の仕立て職人のもとでテーラリングを学んだ後、エグゼクティブの男性を対象に装いのコンサルティング・スタイリングを行う。WEBメディア「Aya Nakazato Official Medium」では、独自の目線からメンズファッション業界におけるものづくりの魅力やメンズ服の着こなし解説などを発信している。

 

<WEBメディア 「Aya Nakazato Official Medium」>
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