時計の機能を100%活用できる知識を紹介!実用機構の使い方完全丸わかりマニュアルVol.2【計測編クロノグラフ】

腕時計には時刻を知る以外にも、日付や月齢などのカレンダー情報を確認したり、精密なタイム計測を行ったり、他国の現在時刻を知ったりと、さまざまな機能が装備されている場合が多い。そんな各種機能の基本的な使い方や機構の原理などを初心者にもわかりやすく丁寧に解説していく。知っておけば役立ち度は満点なので、しっかり学習しておこう!

 

計測編 〈クロノグラフ〉

最大12時間まで秒・分・時単位の精密計測が可能。ベゼルに記されたタキメーターと併用すれば平均時速なども算出することができる

飛行士やレーサーのために開発された精密計測機能。クロノグラフとは、簡単に言えばストップウオッチを組み込んだ時計のことだ。一見すると複雑そうだが、操作はリューズ上下にある2つのボタンで、スタート&ストップ、リセットの操作を行うだけと簡単。計測をスタートすると中央のクロノグラフ秒針が動き始め、2つのサブダイアル(30分積算計と12時間積算計)もタイムの積算を開始する。

クロノグラフを搭載するモデル オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」


Ref.310.30.42.50.01.002 106万7000円

NASAによる月面着陸すべてに公式装備品として携帯された、歴史に残る伝説モデルの最新鋭バージョン。長期間にわたり高精度を維持するコーアクシャル機構を採用し、1万5000ガウスの高耐磁性を誇るマスター クロノメーター認定キャリバー3861搭載。直径42mm。手巻き。ステンレススチールケース。5気圧防水。

問い合わせ先:オメガお客様センター TEL.03-5952-4400 https://www.omegawatches.jp/ja/

 

時刻を刻む正確なリズムと動力を機構に伝達&解除

クロノグラフ機構の原理を簡単に説明すると、①クロノグラフ機構のうちドライビングホイールと呼ばれる部品は、時刻表示用の秒針の歯車と噛み合い、常に回転している。②スタートボタンを押すと作動制御カムが動き、カップリングクラッチやキャリングアームなどが作動。③ドライビングホイールの回転(動力)がトランスミッションホイールを介してクロノグラフランナーに伝わりクロノ秒針をスタート。④30分や12時間積算計の針も順に駆動させていく、という構造になっている。

ストップボタンを押すと、再び作動制御カムなどが動き、それらの動力伝達を解除。動力を失ったクロノ機構は作動を停止する。

リセットの場合は、リセットボタンを押すとクロノグラフ計測の秒・分・時針用歯車のハートカム(針の動きに応じて1回転する)をリセットハンマーが叩き、カムの向きを0位置状態に戻すことで針も0にリセットされる仕組みになっている。

 

【機構の仕組み】主要パーツとその役割を詳細解説

Cal.3861

スピードマスターの初代キャリバー321(1957年誕生)をルーツに持つ伝統ムーブ。キャリバー321はその後、精度や耐久性などを向上させる進化を遂げ、最新鋭となるキャリバー3861は2019年からスピードマスターに搭載されている。クロノグラフの作動制御には水平クラッチ式(キャリングアーム式)、作動方式にはカム式を採用。

ドライビングホイール
時刻表示用の針(秒)の歯車と連動。スタートボタンを押すと、この歯車の動力がトランスミッションホイールを介してクロノグラフランナーへと伝わる

ハートカム
クロノグラフ計測用の秒・分・時針を動かす歯車の頭に付いたカム。リセットハンマーで叩かれることで元の位置に戻り、針を0位置に戻すようになっている

クロノグラフランナー
ドライビングホイールからトランスミッションホイールを経て伝わった動力で動き出す、クロノグラフ機構のメイン歯車。クロノグラフ秒針がセットされている

ミニッツレコーディングホイール
30分積算計の針を動かす歯車。隣にあるクロノグラフランナーから小さな歯車(インターミディエイトホイール)を介して動力を受け取り、30分で1回転する

リセットハンマー
リセットボタンを押すと、バネの力で駆動。クロノグラフ秒針・30分積算計・12時間積算計の歯車頭部に設置されたハートカムを1回叩き、針をリセットする

作動制御カム
クロノグラフの作動(スタート・ストップ・リセット)を制御する部品。溝や山が設置された上部と、各種歯車やレバーに連動する下部の2層構造になっている

カップリングクラッチ
クロノグラフのスタートやストップのボタン操作に合わせて作動。トランスミッションホイールとクロノグラフランナーを接触させたり、切り離したりする

キャリングアーム
作動制御カムが左右に動くのに応じて先端部が山に乗り上げたり、溝に入り込んだりするように移動。内部奥にある歯車やカムを動かしたり停止させたりする

トランスミッションホイール
カップリングクラッチに付いている歯車。スタートボタンを押すと歯車が嚙み合い、ドライビングホイールの回転(動力)をクロノグラフランナーへ伝える

 

【基本の操作とムーブメントの動き】

スタンバイ

↑クロノ機構をスタートする前の状態。ドライビングホイールは秒針を動かす四番車に噛み合い、常に回っている。

 

スタート

↑2時位置のボタンを押すと作動制御カムが回転し、キャリングアームが乗り上げるなどして機構に動力伝達を開始。

 

ストップ

↑もう一度ボタンを押すと作動制御カムなどが作動前の状態に戻り、クロノ機構への動力伝達が解除され針が停止。

 

リセット

↑4時位置のボタンを押すとリセットハンマーが横に動き、3つの歯車のハートカムを叩いて針を0にリセットする。

【タキメーターの使い方】


↑スタート地点でクロノグラフ秒針の作動を開始。1Kmを通過した瞬間にストップさせる。


↑クロノ秒針の先端が指し示すタキメーターの目盛りが、その間の平均時速(写真は約時速100km)だ。

 

【計測時の読み取り方】


計測を終了した状態。秒単位はクロノグラフ秒針(37秒)、分単位は30分積算計(18分)、時単位は12時間積算計(0時間だが、半分以上進んでいるので30分以上経過している)。つまり、計測時間の合計は(30+18=)48分37秒を示している。

 

Text/外山明秀(トイズハウス)、平野翔太(WN編集部) Photo/山口雅則

◎本記事は『ウオッチナビ 2023 Summer Vol.90』より抜粋・編集しています。

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