ウオッチナビ編集部が選ぶカーボン素材を使用した時計3選

近年、腕時計に使用されるようになったカーボン素材は、軽量で高強度であることが特徴だ。そんな実用的なカーボンを使用した時計をウオッチナビ編集部が3本セレクトして紹介する。

機械式ムーブメントにアルティメーター表示機能を搭載

オリスは2014年、自動巻きムーブメントに機械式高度計を備える「ビッグクラウン プロパイロット アルティメーター」を発表し、航空時計のジャンルに衝撃を与えた。新作「プロパイロット アルティメーター」はその後継機にあたり、3年間の開発プロジェクトを経て完成に至ったという。前作が高度表示の上限が4500メートル(1万5000フィート)だったところ、今回は6000メートル(1万9700フィート)まで計測できるアップグレードがなされている。前作同様、あらゆるユーザーを想定して高度表示が異なる2型をラインナップしており、航空分野での標準単位であるフィートの表示モデルに加えて、登山やアウトドア活動での使用に扱いやすいメートル表示タイプの設定もある。そのようなユーザー本位の配慮も実にオリスらしい。

「プロパイロット アルティメーター」は、ケース右側面にリューズを2つ備えているのが特徴のひとつだ。2時位置のリューズは時刻調整に使い、4時位置の2段階設計リューズは高度計の操作に使用する。高度を測る際は4時リューズのロックを緩めて引き出し(この時に防水性は保たれなくなる)、もう一段引いてインナーリングを回転させて赤い▼マークに基準気圧(空港の管制塔から指示されるものなど)を合わせ、一段引きのポジションに戻す。この単純作業によって、黄色のポインターがリアルタイムの高度を、赤のポインターが絶対気圧を示す。なお高度計測中は、特許取得済みの高度計調整機構とPTFE防湿壁を備えた通気リューズにより、ケース内部への湿気侵入を抑える。

また外装にもこだわり、スイスのチューリッヒに拠点を置くハイテク企業「9T研究所」が製造するカーボンファイバーと、高分子化合物PEKKの複合素材をケースに採用している。PEKKは熱耐性、機械的性質に非常に優れ、カーボンファイバーと融合することで金属より強くなり、プラスチック並みの軽さも実現。現在、飛行機から人工衛星、自動車、自転車などのパーツに使われているが、時計メーカーとしてはオリスが初めて採用したマテリアルであり、本機はわずか98gという驚きの軽量化を達成している。

オリス「プロパイロット アルティメーター」(フィート表示モデル) Ref.01 793 7775 8734-Set 99万円/自動巻き(Cal.793)、毎時2万8800振動、56時間パワーリザーブ。カーボンファイバーケース、テキスタイルストラップ。直径47mm。10気圧防水。

 

強さと軽さの象徴的先進素材「カーボン」を駆使

 

発表された「GCW-B5000UN」は、記念するべきG-SHOCKのファーストモデル「DW-5000C」が採用していたスクエアフォルムを、カーボン製のケース&バンドで再現した初のコレクションとなっている。いわゆる「5000」系の外装は、樹脂からメタルへと進化し、さらなるタフネスを追求する過程で、ステンレスより約7倍も硬質で軽量な特性を持ったカーボンが今回セレクトされた。なおデザインは、進化を続ける姿勢を広がり続ける宇宙空間に重ね合わせ、ビッグバンや惑星をモチーフとしたもの。ベーシックなブラックと、混色成形によるパープルの2ラインナップとなっている。

新作「GCW-B5000UN」は、G-SHOCK固有の複雑なフォルムを踏襲しているため、ケース、ベゼル、バンド、そしてバックルの中留のそれぞれに適するカーボン(カーボンは製造方法により特性が異なる)を使い分けている。これによって、2018年の登場以来人気を博しているステンレス製の現行フルメタルモデル「GMW-B5000D」(約167g)よりも61%も軽量な約65gを実現している。

ベゼルとバンドにはフォージドカーボンを採用しているが、この素材は成形の自由度が高いうえ、カーボン繊維と樹脂などを混合成形させて作り出すのが特徴であり、表面に現れる模様や色調、オパールの分布と量に個体差が出る。これが“個性”に繋がるといえよう。また、中留には曲げに強い積層カーボンを、ケースバックと一体化させたモノコックケースにはカーボンファイバー強化樹脂が使われている。

そのほか、ケースバックへのG-SHOCK40周年記念ロゴ(著名なグラフィックアーティストでG-SHOCKとの絆が強いエリック・ヘイズ氏作)の刻印、保存性とコレクション性を高めるスペシャルパッケージ、Bluetoothや標準電波による正確な時刻表示、定期的な電池交換を不要とするソーラー駆動、高輝度なフルオートLEDバックライト、傷に強く透明度が高い反射防止コーティングサファイアガラスなど、アニバーサリーモデルとしての特別感や実用性においてもファンの期待に十分に応える仕様となっている。

G-SHOCK「GCW-B5000UN-1JR」 29万7000円/クオーツ(Bluetooth搭載電波ソーラー)。フォージドカーボンや積層カーボンなど複数種類のカーボンから成るケース&バンド。縦49.1×横45mm、厚さ14.5mm、重量65g。20気圧防水。

問い合わせ先:カシオ計算機 お客様相談室 TEL.0120-088925 https://gshock.casio.com/jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。

 

「シデラル S」のリバイバルとなる「ティソ シデラル」

「ティソ シデラル」は、ブランドの1970年代を代表するアイコンモデル「シデラル S」のリバイバルとなる。「シデラル」というネーミングは、星や宇宙を意味し、1969年に軽量かつ頑丈なスタイルを持った世界初のグラスファイバー製の時計として初代モデルが誕生。自動巻き、超耐水性、耐衝撃性といった高精度の腕時計としての特性をすべて備えた「シデラル」は、ファッションや流行に敏感な人達やスポーツ愛好家から支持を集め、1971年にはシリーズのシグネチャーエレメントとなるイエローラバーストラップと革新的なクリップシステムを採用した「シデラル S」が登場した。ティソはこのシデラルのヴィンテージの世界観に最先端の素材を融合させることで、現代的なタイムピースとして新たに甦らせた。

「ティソ シデラル」のケース素材には、通常のカーボンより強靭かつ軽量で、耐久性と耐摩耗性に優れるとともに、大理石のようなマーブル模様を持つフォージドカーボンを採用。これは、初代モデルが伝統を打ち破る時計として構想され、軽量性、革新性、弾力性に優れたグラスファイバーをケース素材に用いたことへのオマージュとなる。このタフネスケースに、ダイバーズとレガッタの目盛りが刻まれたブラックPVDの逆回転防止ベゼルをセット。さらにグリーンとレッドのレガッタカウントダウンゲージ、2カラーで描かれるミニッツトラックが配されたカラフルな文字盤によって、個性溢れる外観に仕上がっている。標準装備となるラバーストラップにはパンチング加工が施され、独自のクリップシステムを搭載。この従来のバックルとは一線を画すユニークなデザインは、ティソのクリエイティブなデザインへのこだわりを反映したものとなる。ラバーストラップは交換可能で、オプションのグリーン、オレンジ、ブラックのストラップへと付け替えできる点も、本機の魅力のひとつとなる。

「ティソ シデラル」は、プロユースともいえる30気圧(300m)の防水性能をはじめ、文字盤3時位置の日付表示、スーパールミノバコーティングのインデックスなど機能性は申し分ない。ムーブメントには80時間のパワーリザーブを誇る自動巻きキャリバー、パワーマティック80を採用しており、3日間着用しなくても正確な時刻表示が可能となっている。裏蓋はシースルー仕様となるため、時計を裏返せば新型スケルトンローターを搭載したムーブメントの姿がいつでも鑑賞可能だ。「ティソ シデラル」はイエロー、レッド、ブルーの色鮮やかな3色を展開。文字盤のミニッツトラックとラバーストラップの配色が異なり、カラーリングでそれぞれのキャラクターをしっかりと確立。購入時、どのカラーをチョイスするかは、大いに悩むところだろう。

ティソ「ティソ シデラル」 (左)Ref.T145.407.97.057.01 (中)Ref.T145.407.97.057.00 (右)Ref.T145.407.97.057.02  各14万8500円/自動巻き(Cal.パワーマティック80)、80時間パワーリザーブ。フォージドカーボン&ステンレススチールケース(シースルーバック)、ラバーストラップ、ドーム型サファイアクリスタル風防(傷防止加工無反射加工)。直径41mm、厚さ14.4mm。30気圧防水。

問い合わせ先:ティソ TEL.03-6427-0366 https://www.tissotwatches.com/ja-jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。

Text/平野翔太(WN編集部)

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