マルチパーパスなスポーツウオッチ「クロノマット」が“スタイル”を獲得した日【ブライトリング140周年連載 第2話】

<取材協力>
ブライトリング

ブライトリング創業140周年という偉大な節目に敬意を表した連載企画の第2話は、時計界の重鎮たちに「機械式を復活させた功績は大きい」「キャラクターが複雑なため意匠の再解釈が一番難しかった」と言わしめた「クロノマット」をクローズアップ。腕につける計器として誕生し、マルチパーパス(万能)モデルへと進化した現行コレクションと、新作チタンバージョンの魅力を、30年にわたってブライトリングを取材してきたベテラン時計ジャーナリスト・大野高広が掘り下げる。

イタリア空軍フレッチェ・トリコローリと共同開発。市場の熱狂が機械式時計再興の起爆剤に

薄型クオーツウオッチが全盛だった1980年代、ブライトリングは次世代に向けて、あえて全く新しい機械式時計の開発に着手した。もともと同社には1884年創業以来の膨大なノウハウがあった。だが、プロの飛行士に満足してもらうには、現役パイロットたちのアドバイスが必要だ。ちょうどイタリア空軍のエアロバティックチーム、フレッチェ・トリコローリが公式時計採用のためにコンペを開くことを知り、さっそく腕利きパイロットたちに話を聞いて回った。


↑フレッチェ・トリコローリの公式クロノグラフとして1983年に誕生したクロノグラフ「フレッチェ・トリコローリ」。回転ベゼルのライダータブは取り外し可能で、15と45を入れ替えればカウントダウン用の目盛りになる。翌1984年のバーゼルフェアにて、市販モデルとしてクロノマットの名で正式発表された。

 

パイロットからの膨大な意見は、ライダータブなど革新的なディテールに昇華され、プロトタイプは見事にコンペを勝ち抜いた。そしてフレッチェ・トリコローリ公式モデルの完成を経て、1984年に市販されたクロノマットは世界的に大ヒット。興味深いのは、プロのパイロットがその機能性を絶賛したのに対し、一般ユーザーはデザインに惚れ込んだこと。最初に人気に火がついたのが、ファッションにうるさいイタリアだったのも面白い。


↑フレッチェ・トリコローリの編隊飛行をイメージ写真に使用した1987年のクロノマットの広告。パイロットの要望に応じて開発されたライダータブやルーローブレスが特徴的だ。

 

「機械式時計を復活させたのは、ブライトリングの功績だと思っています」と、のちにジラール・ペルゴを率いることになるルイジ・マカルーソ氏(故人)は語った。当時、イタリアでブライトリングの販売代理店を営んでいた彼は、時計好きの有名人が競うように買い求め、売り切れが続出し、多くの時計店が「ブライトリング完売」と貼り紙を出す様子を目撃していた。クロノマットの洗練された新しいスタイルは、スイス機械式時計復活の起爆剤となったのだ。

 

軽快なチタン仕様のクロノマット爆誕! その流麗な外装&仕上げを徹底チェック!!

1984年の初代モデルで機械式クロノグラフの本来の地位を取り戻したあとも、クロノマットは飽くなき進化を継続した。当初は“プロのための計器”として革新を続け、2020年に誕生した現行モデルでは、マルチパーパス(万能)クロノグラフという新たなステージに到達。モダンレトロなルックスはさまざまなシーンに溶け込みながら、スタイリッシュに新スタイルを主張する。

そして2024年、ついにクロノマット初のチタンバージョンが登場。ケースとブレスレットのスタイリッシュなデザインはチタンになっても変わりなく、軽量でありながら耐久性に優れる素材特性を最大限に生かした待望のニューモデルである。

 

 

■2024新作「クロノマット B01 42」チタンバージョン

新クロノマットに採用されたチタンはグレード5。純チタンにアルミニウムやバナジウムを加えて硬度を高め、加工しやすく合金化したチタンだ。ブレスレット仕様でも約150gと軽快で、見た目はステンレススチールと見まがうほどに色合いが近く、質感も高い。そのためチタンモデルにはブルーのクロノグラフ秒針を与えて区別している。


↑サファイアクリスタル・バックを通して、自社開発・製造キャリバー01の精緻な仕上げとパワフルな鼓動が堪能できる。コラムホイールとテンプが同時に見える新デザインの中空きローターを採用。

〈チタンモデル&ステンレススチールモデル ディテール比較〉

【ダイアル】

↑チタンモデル(左)は従来のオールステンレススチールモデル(右)にはなかった新色アンスラサイト&ブラックインダイアルを採用。視認性を確保しながら、ビジネスシーンにも適した知的な雰囲気だ。盤面のヘアライン仕上げが繊細で美しい。

【ケース&ブレスレット】

↑複雑な設計のルーローブレスやライダータブを含めて、外装のサテン&ポリッシュ仕上げはステンレススチールモデル(右)もチタンモデル(左)も同レベル。ベゼルに刻まれたバーインデックスは、わずかにチタン仕様のほうが太いようだ。

【バックル】

↑着脱しやすい観音開きのバックルは、閉じたときルーローブレスが連続して見える仕様。仕上げはチタンモデル(左)、ステンレススチールモデル(右)ともに基本はサテン仕上げ、コマの一部がポリッシュ仕上げとなる。


↑ブライトリング「クロノマット B01 42」Ref.EB0134101M1E1 163万3500円/自動巻き(自社製ブライトリングCal.01)、毎時2万8800振動、約70時間パワーリザーブ。チタンケース(シースルーバック)&ブレスレット、ドーム型サファイアクリスタル風防(両面無反射加工)。直径42mm、厚さ15.1mm。200m防水。

 

 

■2024新作「スーパークロノマット B01 44」チタンバージョン

44mm径のスーパークロノマットは、グレード5チタン採用のメリットがさらに大きい。機能美あふれる重厚な意匠を、軽快にデイリーユース可能なのだ。プッシュボタンとベゼルにインサートしたセラミックや、ブラックインダイアル、ルーローにインスパイアされたラバーストラップなど、モノトーンのコンビネーションが腕元で強烈なインパクトを放つ。


↑直径でわずか2mmの違いでも、見た目の違いは明らか。エレガントさが残る42mmモデル(左)に対し、44mmモデル(右)はよりスポーティな印象。ブルーのクロノグラフ秒針は、両機ともチタンバージョン共通の仕様だ。


↑44mmモデル(右)はセラミックパーツの存在感が強く、タフな印象。手首に沿うようにラグが大きく下がっているのも特徴だ。また、42mmモデル(左)がドーム型風防なのに対して、44mmモデルはフラットな風防の採用でシャープな印象。


↑ブライトリング「スーパー クロノマット B01 44」Ref.EB0136251M1S1 144万1000円/自動巻き(自社製ブライトリングCal.01)、毎時2万8800振動、約70時間パワーリザーブ。チタンケース(シースルーバック)、ラバーストラップ、ドーム型サファイアクリスタル風防(両面無反射加工)。直径44mm、厚さ14.4mm。200m防水。

 

 

■2024年は新コラボレーションモデルが次々とデビュー

NBAヤニス・アデトクンボ選手のシグネチャーエディション「クロノマット B01 42 ヤニス・アデトクンボ」と「クロノマット オートマチック GMT 40 ヤニス・アデトクンボ」が鮮烈デビュー。センター針のカウンターに「GA」のイニシャル、クロノグラフのスモールセコンドにバスケットボールのエンブレム、そして所属チームのグッドランドグリーンを彷彿とさせるダイアルカラーがスペシャル感を盛り上げる。同時発売の「クロノマット B01 42 トライアンフ エディション」にも注目!


↑GMTモデル(左/「クロノマット オートマチック GMT 40 ヤニス・アデトクンボ」Ref. A32398A11L1A1 79万2000円)のケースバックにはアデトクンボのサインを刻印。グリーンラバー製ルーローストラップを装着した18Kレッドゴールドケースのクロノグラフ(右/「クロノマット B01 42 ヤニス・アデトクンボ」Ref.RB01344A1L1S1 319万円)は、サファイアクリスタル・バックを通して、自社製キャリバー01と、金色に輝くローターを鑑賞できる。


↑ブライトリングとパートナーシップを結ぶ“トライアンフ”は、1902年創業の英国最大の老舗モーターサイクルブランド。そのコラボレーションモデル第3弾(「クロノマット B01 42 トライアンフ」Ref.TB0134101M1X1 154万円)は初めてのクロノマットベースで、リューズやベゼルの一部に採用した18Kレッドゴールドとチタンケースのコンビネーションが際立つ。このほか、今回トライアンフが発表した新バイク「スピードトリプル RR 1200 ブライトリング リミテッド エディション」の購入者だけが手に入れる権利を持つ「クロノマット B01 トライアンフ オーナーズ エクスクルーシブ」も発表された。

 

 

広がり続ける「クロノマットの世界」。誰もが最適な一本を見つけられる

 

ブライトリングを代表するモデルといえば、ナビタイマーとクロノマット。前者が“永遠のクラシック”ならば、後者は“モダンかつレトロ”なスタイルが魅力。ともに堂々たるフラッグシップモデルだ。

現在、製品開発に深く関わっている“世界一のブライトリング蒐集家”フレッド・マンデルバウム氏は、両モデルの開発時の難しさは対照的で「ナビタイマーはキャラクターが明確なので、わりと安産。一番大変だったのは現行クロノマットです」と語った。聞けば、開発時のプロセスはどのモデルも同じで、「まず、デザインチームといっしょに、オリジナルモデルを目の前に並べて、それぞれのユニークな点は何か、当時の人々にとって何が魅力的だったのか、などの要素を抽出し、言語化します。そこからアイコニックな要素を残して、新しいデザインとしてどうあるべきかをディスカッションしていきます。次に最初のデザインを起こしてもらい、それに対して私がフィードバックするという作業を、1年かけて何回も繰り返していくのです」とマンデルバウム氏。そして「クロノマットはブランドにとって非常に大事なアイコンモデルなので、絶対に間違えられないというプレッシャーがありました。しかも特徴的なディテールがたくさんあり、それら全部をバランスよくアイコニックな意匠として残すのは、実に複雑で大変な作業でした」と明かしてくれた。


↑ルーローブレスをモチーフに新たに開発されたクロノマット向けのラバーストラップとの組み合わせ。

 

こうして1984年誕生のオリジナルモデルから、左右対称ケースやルーローブレス、ライダータブ、タキメーターといった意匠を継承しつつ、現代的な解釈を加えて2020年に完成した「クロノマット B01 42」は、スーツやタキシード、ジーンズスタイルにも似合う汎用性を身に付けた。42mmケースはサテン中心の派手さを控えた仕上げで、細部に凝り、エッジが立った手間のかかる作り込み。もちろん自社開発・製造キャリバー01を搭載し、防水性能は200m。日常のあらゆるシーンで、共に人生を刻むに相応しい相棒である。今年6月にはルーローブレスレットにインスパイアされたラバーストラップが初登場し、選択肢も広がっている。


↑「クロノマット B01 42 」にニューカラーとなるグリーンが追加された。

 

同じ世界観を共有しつつ、32mm径から44mmのクロノグラフまで、現行コレクションは多彩な広がりを見せている。セラミック採用でよりタフで仕上げた「スーパークロノマット B01 44」をはじめ、デュアルタイムゾーン表示機能を備えた「クロノマット オートマチック GMT 40」、セラミック製のライダータブとリューズ、ラボグロウンダイヤモンドベゼルが特徴的な「スーパークロノマット オートマチック 38」、さらには女性のためにデザインされた初めてのクロノマットも、32mm(スーパークオーツ)と36mm(自動巻き)が用意される。


↑「クロノマット B01 42 」のチタンモデルは軽量で装着感に優れる。ライダータブを含めてベゼルもチタン製だ。

 

ブライトリングが2018年にスタートさせた「スクワッド・コンセプト」にも触れておこう。これは芸術やスポーツなど、各分野でその道を極めた複数のセレブリティでスクワッドを組む独自のプロモーションで、有名人をアンバサダーに迎える広告キャンペーンとは一線を画すもの。これまでもブライトリングと価値観を共有するセレブたちがチームを作り、社会貢献など同じ目標に向かって取り組む活動が、大きな成果と感動を生んできた。今回発表されたモデルで活躍するのは、2年連続となるプレミアリーグ得点王に輝いた、アーリング・ハーランドとバスケットボールのヤニス・アデトクンボである。


↑「スーパークロノマット B01 44」を着用するアーリング・ハーランド。プレミアリーグのマンチェスター・シティで、センターフォワードとして絶対的なスピードとパワーを見せつけるスーパースターだ。

 

 

《NEWS》6/20~23:東京ミッドタウン、6/27~30:グランフロント大阪で「ブライトリング・ラウンジ2024」開催

ブライトリングは日本のファンとブランドの距離感が近いことでも有名だ。たとえばクラブ・ブライトリング メンバーの祭典「メンバーズサロン」では、ブライトリングのスタッフや時計技術者とも直接話すことができ、新型コロナの影響で3年ぶりの開催となった昨年のメンバーズサロンは大盛況となった。今年は装いも新たに、東京と大阪で期間限定のポップアップ・ラウンジをオープン! ふだん店頭にはないE-COM限定モデルを含めて、約200本の最新コレクションが集結するほか、創業140周年を記念したヒストリカルモデルの展示や、未発表デルも先行展示、公認技術者による時計診断“メンテナンスアドバイス”も予定されている。クラブ・ブライトリング メンバーには「ブライトリング キャップ」のプレゼントもあり!!


↑大阪会場の最終日6月30日(日)には、室屋義秀さんのトークセッションも開催予定。写真は2023年メンバーズサロンでの様子。

「BREITLING LOUNGE 2024」

[東京会場]
2024年6月20日(木)~23日(日) 11:00~19:00
会場:東京ミッドタウン ガレリアB1アトリウム

[大阪会場]
2024年6月27日(木)~30日(日) 11:00~19:00
会場:グランフロント大阪 北館1F ナレッジプラザ

※「BREITLING LOUNGE 2024」の詳細はコチラ>>>

 

 

問い合わせ先:ブライトリング・ジャパン TEL.0120-105-707 https://www.breitling.com/jp-ja/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。

Text/大野高広 Photo/吉江正倫

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