2024年11月22日、日本時間の15時より日本の時計コレクター界に特化した初のテーマオークション「TOKI -刻-: Watch Auction」(TOKIは日本語の刻)が香港で開催される。110を超える出品の中から、編集部では東京時計精密株式会社のモデルに注目したい。
栄えあるGPHG受賞作のユニークピースを出品する「大塚ローテック」
「大塚ローテック」とは、片山次朗氏の時計ブランドだ。片山氏はカーデザイナー/プロダクトデザイナーとして活動していたが、約20年前に「機械の練習のつもりで」ヤフオクで旋盤を購入したことをきっかけに独学で時計製作技能を習得。2012年にブランドを立ち上げ、自身が製作した腕時計の販売をスタートさせた。
その作品はスイスの国際時計博物館(MIH)収蔵、ドイツのiFデザイン賞受賞など国際的にも高い評価を獲得。社内外を問わず後進の育成を行うなどの功績が認められ、2024年には厚生労働大臣が定める卓越した技能者「現代の名工」に選出されることとなった。また、「大塚ローテック」の作品「6号」は、11月13日に発表された“時計界のアカデミー賞”と称されるジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)において、3000スイスフラン(約50万円)以下の時計を対象とした「チャレンジ部門」賞でグランプリを獲得。同部門で初めて国産時計が受賞する快挙を成し遂げている。以下、受賞時の片山氏のコメント。
“世界中の素晴らしい時計が集まるコンペティションで選ばれたことを大変光栄に思います。私の時計製作は、約20年前ヤフオクで旋盤を購入し、機械の練習のつもりで腕時計の外装部品を作ったことから始まりました。どんどん楽しくなって、やりたいことが増えていきました。5番目に作った時計を恐る恐る売ったところ、喜んでくれる人がいたことが嬉しくてこれまで時計を作り続けてきました。これからも大塚で時計作りを続けていきます”
片山氏は現在、時計製造を行う「東京時計精密株式会社」に所属している。同社は、日本人独立時計師であり、スイス独立時計師アカデミー会員、現代の名工である浅岡 肇氏が代表取締役を務める時計企業。浅岡氏の名前を冠したハイエンドピースや先述の大塚ローテックのほか、浅岡氏のデザインや物作りの思想を手の届きやすい価格で揃える「CHRONO TOKYO」、今年からスタートした新生「TAKANO」の4ブランドを展開する。なお、TAKANOは1957年〜62年のわずか5年足らずの期間に存在した幻の国産ブランドで、これを浅岡氏率いる東京時計精密の手で復活させたものである。
4ブランドいずれもオンラインでの販売が中心となっており、新作がアナウンスされるたびに予約完売するほど好評を博している。もちろん海外の時計愛好家からも注目を集めているため、極めて入手は困難な状況が続く。では、この4ブランドの人気がどれほどのものか。そのベンチマークとなりそうなのが、世界的オークションハウスのフィリップスが11月22日に香港で行う「刻(TOKI)オークション」である。
東京時計精密は「能登チャリティ」として落札額の全額を寄付
日本をテーマにしたこのオークションは「香港時計オークションXIX」と同じタイミングで行われるもので、日本のコレクターが所有する世界的な時計メーカーのタイムピースや、日本の著名なブランド、独立系時計師による時計が出品されることになっている。その中でも東京時計精密は、“2024 年1 月1 日、石川県能登半島でマグニチュード7.6 の地震が発生し、石川県輪島市で有名な伝統工芸「輪島塗」にも甚大な被害が及びました。これを受けて、東京時計精密株式会社は、存続の危機に瀕している輪島塗の復興に貢献すべく(公式発表より引用)”、以下3モデルを「能登チャリティ」として売り上げの全額を寄付することを決めたのだ。
オークションは11月22日の日本時間で15時より開始。上記の3モデルほか、110を超える出品からサプライズはあるのかどうか。結果に注視しておきたい。
- TAG