【チューダー(TUDOR)】は、「ブラックベイ クロノ “カーボン 26”」を2026年4月30日から順次発売する。価格は119万9000円(税込)である。モータースポーツの世界で勝敗を分けるのは、しばしばコンマ数秒の差だ。その緊張感を、単なるデザインモチーフではなく素材と構造そのものに落とし込んだのが本作である。F1チーム「Visa Cash App Racing Bulls」の2026年マシンに着想を得たカラーリングに加え、新設計の42mmカーボンファイバーケースを採用。コース上の速度感と、チューダーらしい実用機械式時計の骨太さが、1本のクロノグラフとして結晶した格好だ。
記事のポイント
- F1マシン「VCARB 03」のイエローを差し色に使った、2026本限定のスペシャルエディションである
- ケースだけでなくベゼルやエンドリンク、ダイアルの一部にまでカーボン素材を取り入れ、軽量化と世界観の統一を追い込んでいる
- 時計好きはもちろん、モータースポーツの空気感を日常で味わいたい人、語れる限定クロノグラフを探す人に刺さる1本である
サーキットの一瞬を、42mmケースに圧縮した。その核心は“カーボン”の使い方にある
このモデルの見どころは、単にケース素材をカーボンに置き換えたことではない。チューダーは本作で、新設計の42mmカーボンファイバーケースを核に、固定式タキメーターベゼル、さらにストラップを支えるエンドリンクにまでカーボンファイバーを用いている。軽量素材を象徴的に使うのではなく、構成要素の複数箇所へ徹底して展開している点が重要である。レーシングクロノグラフにおいて“軽いこと”は快適性だけの話ではない。視覚的にも装着感としても、スピードの道具らしい切れ味を生むからだ。
しかも本作は、軽さを追求しながら表情が単調になっていない。ブラックを基調とした外装に、F1マシン「VCARB 03」に由来するイエローを差し込むことで、静かな素材感の中に一気に熱を通している。ここが実にうまい。カーボンのマットな質感は本来、速さよりも無機質さを強く感じさせがちだが、本作ではその冷たさを、レーシングスーツの肩口やマシンのノーズに走る差し色のような鮮烈さで反転させた。動と静のコントラスト。WATCHNAVI的にいえば、腕元に宿るのはスペック以上の温度である。
個人的に唸らされたのは、ダイアルまわりの作り込みだ。サブカウンターと日付表示の縁にまでカーボン表現を持ち込み、積層構造で仕上げている点は、見た目の派手さより素材演出の深度を優先した設計といえる。高級スポーツクロノには、遠目で分かる派手さと、近くで見て効いてくるディテールの両方が必要だが、本作は後者に強い。写真で見るより、実機の方が確実に面白いタイプである。
“レーシングホワイト”とスノーフレーク針が効く。ブラックベイの伝統を壊さず、レース仕様へ振り切った顔つき
新作とはいえ、本作はブラックベイの文法をきちんと守っている。ダイバーズ由来のラインに連なる「スノーフレーク」針、ドーム型ダイアル、面取りされたラグ、チューダーローズ入りのリューズ。こうした要素によって、ひと目でブラックベイと分かる骨格を残している。そのうえで、ダイアルはブラックカウンターを備えた“レーシングホワイト”仕様。いわゆるパンダ系の視認性と、レーシングクロノらしい緊張感を両立した顔である。
6時位置の日付表示、3時位置の45分積算計、9時位置のスモールセコンドというレイアウトも、情報量が多すぎず少なすぎない。クロノグラフは往々にして“メカ感”を盛り込みすぎて読みにくくなりがちだが、本作はホワイト、ブラック、イエローの三層で視線を整理している。見たい情報が瞬時に拾えるため、スポーティでありながら雑然として見えないのだ。時計好きほど、この整理のうまさに気づくはずである。
さらに注目したいのは、プッシャーにチタニウムを使い、リューズとともにPVD仕上げとしている点。ケースの素材感とトーンを揃えながら、操作系だけが浮かないようまとめている。レーシングウオッチは、ともすると“速そう”を強調しすぎて玩具っぽく見えることがある。だが本作にそうした軽薄さはない。海の系譜を引くブラックベイの落ち着きが残っているからだ。アスファルトの熱狂を纏いながら、腕時計としての品を失っていない。その塩梅が絶妙である。
中身も抜かりなし。MT5813は“限定モデルだからこそ本気”を物語るマニュファクチュール クロノグラフ
外装だけで終わらないのが、いまのチューダーの強さである。本作には、クロノグラフ機能を備えた自社製ムーブメント「マニュファクチュール キャリバー MT5813」を搭載。機械式自動巻で、約70時間のパワーリザーブを確保し、COSCによるスイス公認クロノメーター認定も取得している。時・分・秒、クロノグラフ、日付という実用的な機能構成に加え、秒針停止機能も備えるため、時刻合わせの精度面でも扱いやすい。
ここで大切なのは、“限定コラボ的な外装アレンジモデル”ではなく、ベースとなる時計そのものがしっかり強いことだ。70時間駆動なら、金曜の夜に外しても月曜朝まで止まりにくい。200m防水も備えるので、レーシング文脈の時計でありながら日常使用の守備範囲は広い。サーキット専用の記念品ではなく、日常に持ち込めるプロダクトとして成立しているのである。
しかも、ブラックベイ クロノという既存の信頼あるプラットフォームに、カーボンや限定性を重ねている点がいい。奇抜な新機軸を前面に出すのではなく、堅牢な土台の上で個性を際立たせるやり方。翻って、長く付き合う時計としての安心感につながる。派手な限定モデルは一時の熱狂で終わることもあるが、本作はベースの完成度が高いから、時間が経っても腕に戻したくなる可能性が高い。
2026本限定、ケースバック刻印入り。所有欲を刺激する“語れる一本”としての強さ
ブラックベイ クロノ “カーボン 26”は、2026本限定で製造され、ケースバックには固有番号が刻まれる。限定時計の価値は、単に数が少ないことではない。その年、そのチーム、そのマシン、その配色でなければ成立しない文脈を背負っているかどうかで決まる。本作には、それがある。2026年シーズンのVisa Cash App Racing Bullsへのオマージュという具体性があり、昨年の“カーボン 25”から続く年次展開という流れもある。コレクターズピースとしての物語が、最初から設計されているのである。
腕時計の世界では、限定本数が多すぎると希少性が薄れ、少なすぎると現実味がなくなる。本作の2026本という設定は、テーマ年と結びつきながら、グローバル展開の限定モデルとしては程よい緊張感がある。見かける機会は多くないが、伝説級の非現実でもない。この“届くかもしれない、だが簡単ではない”距離感が、実はもっとも物欲を刺激する。
そして価格は1,199,000円(税込)。安価ではない。しかし、ここを単純に高いと片づけるのは早計である。新設計のカーボンファイバーケース、ベゼルやエンドリンクまで含めた素材使い、専用感の強い意匠、限定番号入りケースバック、さらに自社製クロノグラフムーブメントまで備える構成を踏まえると、プレミアムスポーツクロノとしての説得力は十分。チューダーが長年培ってきた“価格を超える価値”という立ち位置を、かなりストレートに体現した一本と見ていい。無闇なラグジュアリーではなく、熱量のある現代的な高級機械式時計。その意味で、実にチューダーらしい。
スペックで選ぶ人にも、ストーリーで選ぶ人にも届く。こんなユーザーにこそハマる
この時計が向いているのは、まずクロノグラフ好きである。42mm径、タキメーターベゼル、45分積算計という構成は、道具時計としての文脈が明快で、しかも200m防水まで備える。見た目はレーシーでも、使い勝手は案外タフ。スポーツウォッチとしての説得力を重視する人には刺さりやすい。
同時に、モータースポーツと時計の関係に惹かれる人にも魅力的だ。チューダーは1960年代からレースの現場と接点を持ち、その流れを現代のF1文脈へ接続してきた。本作は、その歴史をいまの意匠で再編集した1本である。要するに、ただの“モータースポーツ風デザイン”ではない。背景込みで語れる時計なのだ。
さらに、日常での着け映えを重視する人にも向いている。白黒ベースにイエロー差しという配色は、写真では強く見えても、実際はモノトーンの延長として合わせやすい。レザーとラバーライニングによるハイブリッドストラップ、しかもタイヤパターン入りという仕様も、手首にスポーツの余韻を残してくれる。ジャケットに合わせて外すのもいいが、週末のTシャツに合わせてこそ真価が出るタイプだろう。
チューダー「ブラックベイ クロノ “カーボン 26”」 Ref. 79377KN 119万9000円/自動巻き(Cal.MT5813)、70時間パワーリザーブ。カーボンファイバー製ケース、レザー×ラバーライニングのハイブリッドレザーストラップ。直径42mm、厚さ14.3mm。200m防水。
問い合わせ先:日本ロレックス / チューダー TEL.0120-929-570 https://www.tudorwatch.com/ja ※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/WATCHNAVI編集部
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