ロイヤル オーク(1972年)、ノーチラス(1976年)、オーヴァーシーズ(1977年)といった“ラグスポ”が1970年代に次々と誕生しました。その魅力が認められ、人気が急上昇したのが「平成」の時代。時計王・松山猛さんが当時を振り返りました。
ロイヤル オークがスポーツ時計の概念を変えた
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同社トノー最薄の7.75㎜厚ケースに、3.6㎜厚の新型自動巻きCal.CRMA6を搭載。地板とブリッジに、エレクトロプラズマ酸化処理を施したチタンを採用した。大型リューズのおかげで、薄型ながら操作性に優れる
かつて時計の世界では、ラグジュアリーであることとスポーティであることは、同じカテゴリーとして扱われることがなかったように思います。しかし、いつの間にか機能を最重視してきたスポーティな時計が、ラグジュアリーな装いを帯び始め、今では新素材を用いたものや、永久カレンダーやトゥールビヨンを心臓部に組み込んだもの、ダイアモンドなどの貴石をあしらったものなど、これまでになかった"ラグジュアリーでありながら スポーティな時計"が作られ、そしてまたその人気が高まるという現象が起きているようです。
最初に変化が起き始めたのは、1980年代に機械式腕時計が復活したころでした。時計界のジャイアントであるロレックス社のオイスターモデルに、ダ イアモンドをセットした文字盤やベゼルを持つものが注目されるようになったころ、オーデマ ピゲ社のロイヤル オークへの注目が高まりました。
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ジェラルド・ジェンタがデザインした1972年初出のロイヤルオークに続き、1993年にロイヤル オーク オフショア、1997年にロイヤル オーク・クロノグラフが誕生した
ジェラルド・ジェンタがデザインした不朽の名作であるロイヤル オークは、それまでのスポーツウオッチの概念を変えました。ベゼルをビス止めしたそのスタイルの原点をたどると、20世紀初頭のカルティエ・サントスへ と遡る、科学時代への賛美が思い出されます。つまりは時計世界の「用の美」を具現化した、デザインであったといえるでしょう。その手法は次々と踏襲され、今ではウブロやリシャール・ミル など、様々なブランドがその路線の主役となってきました。
そしてそれを支えているのが、 新しい経済システムの勝ち組といわれる人々なのでしょう。
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創業当初のDNAを「フュージョン」で再解釈し、ビッグ・バンと並ぶ人気ラインに育て上げた。サテンとポリッシュのコントラストが際立つチタンケースに、深みのあるブルーダイアルを組み合わせる。日本限定
時計王・松山猛
作家、編集者。『帰ってきたヨッパライ』の作詞家としても知られる。 機械式時計のコレクター歴は40年以上、造詣の深さは業界随一