独自に新素材を開発したり、時計に使われていない素材を採用したりと、 手を変え品を変えて他社との差別化を図るブランドが増えています。「平成」の素材の変遷を振り返ります。
外装やムーブメントなど 適材適所で使い分けも
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2000年発表のシャネル初の機械式時計にして、現在まで続くロングセラー。“硬い”“軽い”というセラミックの実用面だけでなく、非金属でありながら光沢を持ち、素材内部から醸し出す艶やかな美しさを外装に採用し、時計界を驚嘆させた
IWCが時計ケースに初めてチタンを使ったのは1980年のことです。1986年にはIWCとラドー が、それぞれセラミックケースを作りました。昭和から平成に変わった当初は素材がらみの話題も少なかったですが、世紀末になって一 気に素材革命の波が押し寄せました。
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チタンとセラミックの長所を兼ね備えた新素材「セラタニウム」を採用
まず、2000年にシャネルがセラミックの使い方を大転換。従来の実用性重視から脱却し、 巧みにデザインに取り入れました。2005年には、ロレックスが色褪せしにくいエバー ローズ ゴールドを発表し、パテック フィリップはシリコン製ガンギ車を開発。異素材ミックスを志向したビッグ・バンの登場もこの年でした。2007年にはオー デマ ピゲが世界初のフォージドカーボンケースを作りました。
他社と差別化する意味もあって、新素材の開発は現在も続いています。今年発表されたIWCのセラタニウムや、ここ数年いくつかのブランドから登場したブロンズケースはその代表格といえるでしょう。 機能性、実用性、審美性を高めてくれる新しい素材は、ユーザーにとっても魅力が大きいものです。
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自然に酸化し、ゆっくり褪色する経年変化が楽しい「ブロンズ」を採用