見栄えを意識しつつも先鋭的。だから東京には、スケルトンウオッチが良く似合います。魅惑のスケルトンウオッチから街の風景を見透かしたときに生まれる「街と時計」のストーリーに、耳を傾けてみましょう。【Part3】
デザインもメカも独創的
天才時計師の矜持を感じるスケルトン
40 年前に発行された『西欧服飾大全』(けいせい出版刊/林勝太郎著) を読み直していたところ、スイス時計の歴史が書かれた文章に出会いました。
「スイス時計の始まりは16世紀にまで遡る。この頃、フランスでおきた宗教戦争で国を追われたユグノーというプロテスタントの人たちは、国境を超えてジュネーブまで逃げ込んできた。そして彼らが持ち込んだ時計づくりの技術と、スイスに古くからあった金細工師の精密な腕前などが一緒になって、スイス時計技術が開花したといわれる」
16 世紀以前、時計の産地だったのは、フランスやドイツなどです。それが18世紀に入ると多くのブランドがスイスで生まれ、この地で時計産業の華が開きました。いまでも時計はスイスを中心に回っています。
そのスイスで天才時計師と呼ばれた人物がフランク ミュラー。トゥールビヨンの複雑時計を始め、数多くの名品を世に送り出してきまた同ブランドの新時代を担うモデルが「ヴァンガード」です。メカニズムを支えるV字型のブリッジが際立つデザイン。パーツの肉抜き加工や美しい仕上げは、もはや芸術の域です。また通常は、裏側にある脱進機や調速機が表からも見られるように設計されています。
スイス時計作りの伝統と、天才時計師のクリエイティビティを、まざまざと感じることができるスケルトンと断言できる1本です。
文/小暮昌弘 撮影/シバサキフミト スタイリング/石川英治(TRS)
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