ベゼルのビスが特徴的な「サントス」と、ラグとケースが一体化した「タンク」。これらカルティエを代表する偉大な角型時計ですが、それぞれの誕生には、後世に語り継がれるきストーリーがあります。時計史に刻まれた、その奥深き世界について解説します。
世界初の本格紳士用腕時計「サントス」のパイオニア精神
計22もの飛行マシンを設計して航空界の未来を描き続けた飛行家、アルベルト・サントス=デュモンは、洒脱な男でもありました。飛行中はキャスケットを逆さにかぶり、オーダーメイドのジャケットは飛行機の舵と連結したケーブルに通していたと聞きます。
そんな、独創的かつ機能性を追求するスタイルは、彼のリクエストによってルイ・カルティエが作った「サントス」の中に散見されます。アイコニックなスクエアフォルムは、エッフェル塔を代表とするパリの幾何学的な美意識に通じ、ベゼルのビスは急速に近代化する都市の建築をイメージ。そして何より時計にストラップを装着することで、当時の懐中時計の煩わしさを解消しました。ゆえに、世界初の“紳士用モダンウオッチ”として知られるのです。
サントス=デュモンとルイ・カルティエ。航空史における黎明期に出会った2人が、それぞれのパイオニア精神を持ち寄って生まれたのが「サントス」だったのです。その伝統と魅力は、現代も世界中の男の腕元に息づいています。
アール・デコを象徴する「タンク」の美観とその源泉
1904年のサントス誕生から13年後。ルイ・カルティエが新たな角型時計のモチーフに選んだのは、第一次世界大戦でドイツ軍を打ち破り、フランスの民衆を魅了した連合国軍の装甲車でした。
ソリッドで力強いデザインは、装甲車を俯瞰した形状から着想。なかでも注目はキャタピラーを模した角形の縦軸で、これはラグの役割を果たしています。文字盤に沿って配されたローマ数字のインデックス、サファイアカボションが埋め込まれたリューズなど、王族御用達のジュエリーメゾンとして培ったカルティエのクリエイティビティが細部に宿ります。芸術が産業と共存し、さらには一般化されていった時代において、この時計が持つ意味合いは極めて大きいものなのです。
機能美に対するデザイン思想が進んだ時代。1920年代に流行したアール・デコをそう位置づければ、「タンク」はその先駆けと表現できるのかもしれません。
問:カルティエ カスタマー サービスセンター TEL.0120-301-757
https://www.cartier.jp/
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