高品質な時計を適正価格で提供する“ジュネーブの優等生”は、ネジ1本の製造からムーブメント開発やケースデザイン、組み立てまで自社一貫生産する、スイスでも数少ないマニュファクチュールブランドです。「手の届くラグジュアリー」というブランド哲学を支えるのは、時計職人たちの情熱と高度な技術といえます。
【マニュファクチュールの真実#1】
時計作りへの情熱
「マニュファクチュール」は一生ものにふさわしいコレクション。熟練職人が手がけた1本1本に、熱い思いが込められています。
スイス時計界の至宝! 手の届くグランドコンプリケーション
マスター・ウオッチメーカー:ピム・コースラグ氏インタビュー
「手の届くラグジュアリーは技術者にとって挑戦しがいがある」
――フレデリック・コンスタントの最初の自社製ムーブメントを設計する際、ピーター・スタース社長からはどんな要望が?
「12時位置にあったハートビートを6時位置に移すよう注文されました。汎用ムーブメントを使った他社の後発品と差別化するためです。また、テンプが文字盤側に来るよう、輪列がテンプを挟み込む設計にしています」
――FC-910が完成した2004年以降も、新ムーブメントを次々と開発していますが、その情熱を支えているのは何ですか?
「ブランドコンセプトの〝手の届くラグジュアリー〞を前提に自社製ムーブメントを開発することは、それだけで価値ある挑戦です。それにFC-910や2009年のFC-700は、将来的な発展を想定した設計でした。最初からフライバック クロノグラフやトゥールビヨン、永久カレンダーまで高機能化する可能性を秘めていたのです。難しいのはただひとつ、どうやって我々の価格帯に落とし込むか。実際に永久カレンダーの自社開発をピーターからオーダーされたときは、さすがに途方にくれました(笑)。でも、この難題も永久カレンダーをモジュール化することで解決できたのです」
Accessible Luxury(手の届くラグジュアリー)を実現するためマニュファクチュール化を進めた31年の歴史
機械式時計の楽しさを世界中へ伝えるために
フレデリック・コンスタントはスイス時計界の伝統的な中心地であるジュネーブで、1988年に誕生しました。「多くの人にスイスの高品質な腕時計を、手の届く価格で楽しんでもらいたい」という、創業者のピーター・スタース氏と妻アレッタ・バックス氏の飽くなき情熱から生まれたブランドです。
時計作りの転機となったのは、1994年発表の「ハートビート」。文字盤に小窓を開け、テンプの動きが見られる独創的な意匠が話題を呼んで、世界的な大ヒットを記録しました。2004年には自社製の手巻きムーブメントを発表し、2006年にジュネーブ郊外のプラレワットにマニュファクチュール工場を設立。トゥールビヨンや永久カレンダーを含め、29個の自社製ムーブメントを開発し、創業31年にしてトップブランドの仲間入りを果たしました。
驚くべきは、こうした複雑時計にも“手の届くラグジュアリー”というコンセプトが徹底されていることでしょう。逆にその信念を実現するために、自社でコントロール可能なマニュファクチュール化を推し進めたともいえるのです。
機械式時計の楽しさを広く伝えたい――。この情熱こそが、いまなおフレデリック・コンスタントの原動力となっています。
【History】
1988年 ピーター・スタース氏と妻アレッタ・バックス氏がスイスのジュネーブでフレデリック・コンスタントを創業。高品質な時計作りをスタートする
1994年 テンプの動きが文字盤側から鑑賞できるハートビートを発表。小窓からのぞくテンプの小刻みな動きが機械式時計の楽しさを広め、その独創的意匠が当時話題となった
2003年 若き天才時計師、ピム・コースラグが入社
2004年 ハートビートをより美しく見せるため、3年の歳月をかけて完全自社製の手巻きハートビート キャリバーFC-910を開発。専用設計により小窓は6時位置に移動
2005年 手巻きハートビート マニュファクチュール キャリバーにデイト、ムーンフェイズを追加搭載
2006年 ジュネーブ郊外のプラレワットにマニュファクチュール工場が完成。同年、ハートビート マニュファクチュール キャリバーの自動巻き化を達成
2007年 自動巻きハートビート マニュファクチュール キャリバーにデイト、ムーンフェイズを追加搭載
2008年 シリシウム製のガンギ車を搭載した最初のマニュファクチュール トゥールビヨンを発表
2009年 デイト、ムーンフェイズ、24時間表示、シリシウム脱進機(2007年に自社開発)を備えたマニュファクチュール トゥールビヨン、キャリバーFC-985と、デイト付きの自動巻きマニュファクチュール ムーブメント、FC-700を開発
2011年 初めてGMT機能を搭載したハートビート マニュファクチュール キャリバーFC-938を発表。翌2012年には、ワールドタイマー付きのFC-718を発表
2014年 精度を司る重要パーツであるアンクルやガンギ車を、摩擦が少なく磁気に強いシリシウム素材で製造。エネルギー効率の高いこのシリシウム脱進機を搭載した、新世代のハートビート マニュファクチュール キャリバーFC-945を発表
2015年 MMT SwissConnect技術を搭載したスイス製オロロジカル スマートウオッチを他社に先駆けて発表
2016年 マニュファクチュール パーペチュアルカレンダーを備えるキャリバーFC-775を製作。2100年3月までカレンダー修正が不要な複雑機構
2017年 フライバック クロノグラフ マニュファクチュールを発表
2018年 創業30周年を記念して、トゥールビヨンとパーペチュアルカレンダーを搭載した自社製の自動巻きグランドコンプリケーション、FC-975を発表。同年、新世代スマートウォッチ、ハイブリッド マニュファクチュールを発表
2019年 マニュファクチュール工場を3000㎡増やして約2倍に拡張し、生産能力を大幅にアップした
【マニュファクチュールの真実#2】
妥協なきクオリティ
自社一貫生産のメリットは、細部までこだわりを貫けることにあります。美しく高品質な時計を作るために、いっさい妥協はないのです。
自社製ゆえにこだわり抜いた知性の宿るスリムケース
【マニュファクチュールの真実#3】
独創的メカニズム
合理的な設計思想は、コスト圧縮にも効果大となりました。老舗ブランドには真似できない、独創的技術を有する新興マニュファクチュールへと到達したのです。
クラシックデザインに秘めた天才的発想と高度な技術力
こだわりのディテールとシンプルな意匠&設計
フレデリック・コンスタントのなかでも「マニュファクチュール」は、リミテッドも多い最高峰のコレクションに位置付けられています。繊細に仕上げたエレガントなケースとダイアルが知的な印象を与え、アリゲーターストラップは快適に腕にフィット。サファイアクリスタル製ケースバックからは、コート・ド・ジュネーブで装飾された地板やローター、丁寧に磨き上げたブリッジを鑑賞できます。徹底的にこだわり抜いたディテールを積み重ねることで、無限の価値を獲得しているのです。
デザインは奇をてらわず、あくまでシンプル。だが、スイス時計の伝統を感じさせる外装の内側には、独創的技術を秘めています。たとえば、スタート・ストップ・リセットを制御する一般的なコラムホイールに対し、フライバック クロノグラフ マニュファクチュールに搭載されているキャリバーFC-760は、スタート・ストップだけを簡素な星型ホイールで行い、リセットボタンが直接リセットハンマーとクラッチギアに作用する合理的な設計です。
こうしてシンプルな設計で部品数を減らし、複雑機構もモジュール化すれば若手時計師も扱うことができ、コストの抑制にもつながるのです。常識にとらわれないピム・コースラグ氏の天才的アイデアが最大限に生かされているといえます。
2019年、ジュネーブの自社工場が2倍に拡張!
高品質にかける情熱は次世代に連鎖されていく
ジュネーブ市街からクルマで約30分。ロレックスやパテック フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタンなど、有名ブランドの時計製造や研究開発の一大拠点となっているのが、プラレワットです。2006年、フレデリック・コンスタントはこの地にマニュファクチュール工場を建造し、以来、急成長を遂げています。しかしながら、次第にスペース不足が問題になり、2年前から拡張工事をスタート。約2倍に広がった新ファクトリーが、ついに今年6月に完成しました。
ピーター・スタース社長も同席した新工場のオープンセレモニーで、マネージングディレクターのニールス・エッガーディング氏は誇らしげにこう語りました。「新しいファクトリーは時計の組み立て、技術者のトレーニング、品質テストなども行うことができる業界でも最先端の施設です。研究開発から製造、品質管理の全工程が同じ施設内に集まり、統合されました。これまで以上に効率的に時計製造に取り組むことができます」。
1階には同社の世界観や歴史を深く理解できるミュージアムも併設されています。新たな歴史を作るべく、スタッフや技術者たちの士気も上がっているとのことです。
問:フレデリック・コンスタント相談室 TEL.0570-03-1988
http://bit.ly/2YGNdch