“ジュネーブの優等生” モダン・マニュファクチュール――フレデリック・コンスタントの真実

高品質な時計を適正価格で提供する“ジュネーブの優等生”は、ネジ1本の製造からムーブメント開発やケースデザイン、組み立てまで自社一貫生産する、スイスでも数少ないマニュファクチュールブランドです。「手の届くラグジュアリー」というブランド哲学を支えるのは、時計職人たちの情熱と高度な技術といえます。

 

【マニュファクチュールの真実#1】

時計作りへの情熱

「マニュファクチュール」は一生ものにふさわしいコレクション。熟練職人が手がけた1本1本に、熱い思いが込められています。

スイス時計界の至宝! 手の届くグランドコンプリケーション

クラシック トゥールビヨン パーペチュアルカレンダー マニュファクチュール Ref.FC-975N4H6 304万3440円
ジュネーブの新工場オープンを記念した世界88本限定モデル。永久カレンダーとトゥールビヨンを同時搭載しながら、開発・製造・組み立てを自社で行うことで、アンダー300万円(税抜)を実現。6時位置のキャリッジの通し番号プレートは限定エディション番号と一致する。SSケース。42mm径。5気圧防水
自動巻きFC-975はシリシウム製のガンギ車とアンクルを備えるため、重量の影響だけでなく温度変化にも対応する

 

マスター・ウオッチメーカー:ピム・コースラグ氏インタビュー

「手の届くラグジュアリーは技術者にとって挑戦しがいがある」

Pim Koeslag(ピム・コースラグ) 1981年オランダ生まれ。アムステルダムの時計エンジニア学校でベストウオッチメーカー賞を受け、パテック フィリップ、ロレックス、ヴァシュロン・コンスタンタンなど著名な時計メーカーを訪れるなかで、創業13年(当時)のフレデリック・コンスタントのピーター・スタース社長と出会い、自由な開発環境に惹かれて2003年に入社。自社製ムーブメントを完成させ、同社の躍進を技術面で支えてきた“ブランドの頭脳”である

――フレデリック・コンスタントの最初の自社製ムーブメントを設計する際、ピーター・スタース社長からはどんな要望が?

「12時位置にあったハートビートを6時位置に移すよう注文されました。汎用ムーブメントを使った他社の後発品と差別化するためです。また、テンプが文字盤側に来るよう、輪列がテンプを挟み込む設計にしています」

――FC-910が完成した2004年以降も、新ムーブメントを次々と開発していますが、その情熱を支えているのは何ですか?

「ブランドコンセプトの〝手の届くラグジュアリー〞を前提に自社製ムーブメントを開発することは、それだけで価値ある挑戦です。それにFC-910や2009年のFC-700は、将来的な発展を想定した設計でした。最初からフライバック クロノグラフやトゥールビヨン、永久カレンダーまで高機能化する可能性を秘めていたのです。難しいのはただひとつ、どうやって我々の価格帯に落とし込むか。実際に永久カレンダーの自社開発をピーターからオーダーされたときは、さすがに途方にくれました(笑)。でも、この難題も永久カレンダーをモジュール化することで解決できたのです」

時計学校に通っていたピム氏に、「うちで自社ムーブメントを作ってみないか?」と口説いたピーター・スタース社長と妻のアレッタ氏

 

Accessible Luxury(手の届くラグジュアリー)を実現するためマニュファクチュール化を進めた31年の歴史

機械式時計の楽しさを世界中へ伝えるために

フレデリック・コンスタントはスイス時計界の伝統的な中心地であるジュネーブで、1988年に誕生しました。「多くの人にスイスの高品質な腕時計を、手の届く価格で楽しんでもらいたい」という、創業者のピーター・スタース氏と妻アレッタ・バックス氏の飽くなき情熱から生まれたブランドです。

時計作りの転機となったのは、1994年発表の「ハートビート」。文字盤に小窓を開け、テンプの動きが見られる独創的な意匠が話題を呼んで、世界的な大ヒットを記録しました。2004年には自社製の手巻きムーブメントを発表し、2006年にジュネーブ郊外のプラレワットにマニュファクチュール工場を設立。トゥールビヨンや永久カレンダーを含め、29個の自社製ムーブメントを開発し、創業31年にしてトップブランドの仲間入りを果たしました。

驚くべきは、こうした複雑時計にも“手の届くラグジュアリー”というコンセプトが徹底されていることでしょう。逆にその信念を実現するために、自社でコントロール可能なマニュファクチュール化を推し進めたともいえるのです。

機械式時計の楽しさを広く伝えたい――。この情熱こそが、いまなおフレデリック・コンスタントの原動力となっています。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
View All
TAG

人気のタグ