2017年の新作時計のトレンドとして“復刻”と“小サイズ”を取り上げてきましたが、今回は数年に渡って続いてきた継続トレンド“戦略価格”と“新素材”をピックアップ。今年は戦略価格が爆発的に増え、独自素材の開発も目立ちましたが、この傾向はまだまだ続いていくかもしれません。
平均価格の下落は依然進行
素材はカーボンが主役に!
冒頭ですでにご紹介した通り、今年は価格戦略が目立った一年。これから取り上げるもの以外にも、全体を通じて「買い」のモデルが数多くラインナップしています。ただ、20年後も価値があるかどうかに目を向けてみると、その数はグッと絞ることができるでしょう。
WN読者からも熱い指示を得ているブライトリングが久しぶりに放った25万円を切る新作を初め、伝統ある各社が持てる技術力を駆使して、価格以上に魅力の多い新作を発表しています。
新素材においては、19世紀は鉄、20世紀はシリコンと言われていましたが、今年に入ってカーボンに注目が集中。時代と共に材料の主役も変わってきました。時計界に限らず21世紀はカーボンの時代と言われていますが、今後はカーボンを使用した挑戦的なモデルがさらに現れていくに違いありません。
独自素材の使用に加えて最エントリープライスも実現
卓越した強靭さを誇りながら、スチールの約1/6の軽量さも兼ね備えた独自の「ブライトライト」をケース素材に採用。高分子加工物にファイバーを加えた複合素材なので、牽引・温度耐制の高さに優れています。
ムーブメントはクロノメーター精度のスーパークオーツなので、ブランドの魅力をカジュアルに楽しむことができます。ちなみに、モデル名はエアレースでブライトリングレーシングチームが採用する機体に由来しており、エアレーサーのミカエル・ブラジョー選手も愛用中。
紳士のために新開発された同社久々のスポーツウオッチ
上位ドレスウオッチの名を冠したコレクションから、洗練のスポーツモデルが登場。ポリッシュとサテンの仕上げを使い分けたケースは、シャツへの収まりを配慮し、厚さを10.3㎜に抑えられています。既存品でも安心価格の多い同社は、そのイメージを新作でも維持。
緻密な文字盤の作り込みはそれだけで価格を凌駕
立体的な陰影をつけた「フランケ彫り」を施した文字盤を、グラン・フーエナメルで仕上げたブルーダイアルが特徴。審美性に優れた造形は、価格以上の価値を漂わせます。文字盤は同社の傘下にある著名な工房、ドンツェ・カドランが手がけており、グループ内供給によってこの価格が実現しているのかも。シリコンヒゲゼンマイを備えた自社製Cal.UN-320を搭載し、機構面でも信頼性が高い一本です。
スウォッチ グループのブランドからシリコン脱進機を搭載した魅力作が続々
1959年からのロングセラーに、シリコン製ヒゲゼンマイを備えた最新ムーブメントを搭載。エッフェル塔をモチーフにした時計のネオ・ビンテージデザインに、ミラネーゼメッシュブレスが好相性を見せます。
1930年に世界初の耐磁性時計を完成させたティソから、磁力に強いシリコン製ヒゲゼンマイを備えた新作が登場。約80時間パワーリザーブ、COSC認定クロノメーターも魅力です。
2社共に、グループ内のETAと共同でムーブメントを開発。これが戦略モデル開発の原動力と言えるでしょう。
ハイテクカーボンの先駆者は超軽量な新素材で新記録を樹立
ステンレスの1/6の軽さで200倍もの強度を誇る新素材「グラフTPT™」を世界で初めて時計に採用。その重量はストラップを含めてもわずか40gと、身につけている感覚はほとんどありません。
初代モデルに現代的な解釈と新素材を用いてアレンジ
1960年の初代機の意匠と、当時のコンセプトだった「最高を追求する」姿勢を基に、現代的にアレンジ。ケースに使用されているチタン合金「ブリリアントハードチタン」は、純チタンと同様に軽く、ステンレススティールよりも表面が約2倍軽い高機能素材です。大型ケースにも対応する新開発ムーブ・Cal.9S68の搭載が、視認性の向上にも寄与しています。
ダイバーズウオッチに最適な独自開発の次世代素材
外装パーツに新素材の「BMG-TECH」を使った、本格ダイバーズウオッチ。「BMG-TECH」はジルコニウム、アルミニウム、チタニウム、ニッケルの合金でガラス状構造素材のため、堅牢性、耐食性、耐衝撃性、耐磁性に優れています。文字盤は、パネライ初めてのミラー仕上げのブルー。革新素材を使いながら、現実的な価格という点も魅力的です。
為替変動や素材の高騰によって上昇志向にあった時計の価格ですが、各社が戦略価格を掲げたことで平均額がぐっと下がりユーザーにとっては歓迎すべき潮流となりました。さらに現代技術を駆使した最先端の素材を使用することで、20年後も変わらない価値を持つ腕時計を生み出しています。
時計界をさらに盛り上げたこのトレンドの波は、腕時計ファンなら乗らないわけにはいかないでしょう。
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