時計の第一印象を決めるのはやはり文字盤。最近は腕時計の急速な進化で「文字盤の作りが良くなってきた」といいますが、実際はどのように作られているのか、気になる人も多いはず。そこで、2本以上の時計を見比べて悩んだときに注目しておきたいポイントを、3回に分けてご紹介していきます。第1回は、高級時計に使用されるダイアルの主な仕上げを見てみましょう。
3大ダイアル製法
【エナメル】昔も今も、エナメルは文字盤製法の最高位。高級機で主に採用されるのは、ガラス質の釉薬を800℃以上の高温で金属板に焼き付けるホットエナメル。
使用モデル/ユリス・ナルダン「クラシック デュアルタイム」
炎が出るほどの高温で焼成する「グラン・フー・エナメル」を文字盤に採用。左側の上下のボタンで小窓の第2時間帯表示が調整可能。
【ラッカー】下地やUVカット、着色用など、種類の異なるラッカー塗料を何層も重ねる製法。塗料を乾燥させては吹き付ける工程を繰り返すため、完成にも時間が必要。
使用モデル/ジャケ・ドロー「プティ・ウール ミニット サウザンド イヤー ライツ」
ホワイトマザー・オブ・パールに黒のラッカーを施し、手作業で彫刻と彩色を施した芸術作。28本のみの世界限定モデル。
【ガルバニック】素材となる溶解液に地金を浸し、メッキ加工(表面をコーティング処理)する製法。耐腐食・耐久性に優れ、さらに塗装処理を幾層も重ねて重厚感が出せる。
使用モデル/グラスヒュッテ・オリジナル「シックスティーズ」
ガルバニック仕上げで繊細な青を表現したドレスウオッチ。バーインデックスを窪ませる工夫で、高級感と価格のバランスをとっています。
エナメルの装飾技法もさまざま!
細密画…エナメルダイアルを作ったのちに、職人が微小な筆でエナメル画を描いて再焼成する方式。文字盤をキャンバスに見立て、美しい世界観を作ります。
シャンルベ…日本では象嵌(ぞうがん)七宝と呼ばれ、先に地金に彫金を施してから釉薬を流し込んでいく技法。ギヨシェなどが施された文字盤に使われることも。
クロワゾネ…地金に金属のワイヤーや帯を用いて線画を描き出し、その隔壁で区切られた部分に釉薬を満たして焼成する技法。日本では有線七宝といいます。
ご紹介したダイアルの仕上げはそれぞれに特徴があり、時計の印象も大きく左右します。また、ペイントだけの文字盤は経年変化でひび割れや剥がれが生じやすいので、長く使うのであれば選ばないほうが無難です。