自動車と腕時計には非常に多くの共通点があり、それゆえ「自動車好きは時計好き」ということがよく言われています。それは企業間でも同様で、自動車メーカーと腕時計メーカーが互いに手を取り合うことがあります。そんな展開を第88回 ジュネーブモーターショーの場で新たに発表したのが、リシャール・ミル×マクラーレン&タグ・ホイヤー×アストンマーティンという2組のペア。彼らがどのような理念を持ってパートナーとなり、どんなコラボウオッチを製作したのか、詳しく見ていきます。
マクラーレン・オートモーティブとの初コラボウオッチは細部まで圧巻の造形美
リシャール・ミルは一昨年からマクラーレンF1チームとパートナーシップを締結しており、昨年には世界最軽量となる「RM 50-03 トゥールビヨン スプリットセコンドクロノグラフ ウルトラライト マクラーレンF1」を発表しています。この時計は、ムーブメントが7g、時計全体でも40gという驚異的な軽さと、1億円オーバーの価格で話題になりました。これが許容されるのは、ひとえにリシャール・ミルのブランド力というほかありません。
リシャール・ミルは1月のSIHHでは再び1億円オーバーの新作を出したばかりですが、今回のマクラーレン・オートモーティブとのコラボウオッチは、第88回 ジュネーブモーターショーでの発表となりました。
最新作RM 11-03 フライバック クロノグラフ マクラーレンは、マクラーレン デザインディレクターのロブ・メルヴィル氏とリシャール・ミルのエンジニアであるファブリス・ナムラ氏との親密なコラボレーションによって制作された時計です。ひと際目を引くのが、オレンジクオーツTPT®とカーボンTPT®を織り合わせて制作された軽量かつ高耐久性能を誇るケースを採用。オレンジはもちろん、マクラーレンの代名詞的なカラーに敬意を表したものです。
ケースに取り付けられたチタン製プッシャーはマクラーレン720Sの独特なヘッドライトのデザインを踏襲したもの。リューズもマクラーレンの軽量ホイールのデザインを再現しています。さらにマクラーレンのロゴが配されたベゼルに埋め込まれたチタンパーツは、象徴的なマクラーレンF1の吸気口と同じ形状と、カーデザインに着想を得た意匠が満載されています。
搭載ムーブメントは、自動巻きキャリバーRMAC3。アニュアルカレンダーやオーバーサイズデイト、フライバック式12時間クロノグラフ、カウントダウンカウンターを備えており、ツインバレルで約55時間のパワーリザーブを有してます。
このモデルは夏頃の発売予定で世界限定500本、2130万円(税抜)となっています(マクラーレン アルティメートシリーズの購入者に優先して販売される予定)。
多くの相乗効果が期待されるアストンマーティンとのコラボウオッチ第一弾
タグ・ホイヤーも、新作披露の場はジュネーブモーターショー。これからタグ・ホイヤーは、アストンマーティンおよびアストンマーティン・レーシングの公式パートナー、公式ウオッチ パートナーおよび公式コネクテッド ウオッチ パートナーになるとのこと。その宣言に合わせ、2型のコラボウオッチが発表されました。
3月6日に行われたパートナーシップのプレスカンファレンスで、タグ・ホイヤー CEO 兼 LVMH ウォッチ部門プレジデントのジャン-クロード・ビバー氏は、次のように述べています。
「アストンマーティンは、 タグ・ホイヤーと同じ遺伝子、 つまりラグジュアリー、 品質、 美しい製品、 革新性、 歴史、 エモーション、 およびパフォーマンスを有しています。 だからこそ、 車への情熱を共有するこのような一流ブランドと仕事ができることをうれしく思います。 このコラボレーションは、 アヴァンギャルドな高級時計ブランドとしてタグ・ホイヤーの車というセクターにおけるリーディングポジションを強化し、 多くの驚くような相乗効果を生み出すことでしょう」
そして発表されたのが、以下の2型。どちらもクロノグラフを搭載した個性的なレーシングウオッチに仕上がっています。
自社製ムーブメントのホイヤー01を搭載したクロノグラフの特別仕様。アストンマーティンの新型ヴァンテージのディテールをイメージさせるダイアルが特徴的。ケースサイドに施したラインが、スピード感やサーキットの雰囲気、ピストンなどを想起させます。
アストンマーティン・レーシングをイメージさせるライムエッセンスカラーが採用されたクオーツクロノグラフ。タグ・ホイヤー フォーミュラ 1 コレクションで初めてレザーストラップを備え、よりスポーティなスタイルに仕上げています。
高級時計に新たなプレステージ性を加えるパートナーシップに注目
今回の2組のペアに限らず、ブライトリングとベントレー、フェラーリとウブロ、IWCとメルセデスAMGなど、腕時計と自動車メーカーとのコラボウオッチは数多くあります。ただ、高級時計ブランドに関しては、単なるロゴの共有だけでなく、外装デザインや内部の設計もこだわりを持って作られているのが特徴となっています。
多くのギアで動き、それを収める外装があり、オーナーに直接触れるなど、自動車と腕時計は製品として多くの共通点があります。加えて、クラフツマンシップやラグジュアリーな世界観などの思想面でもリンクするところが多く、このように技術や哲学まで共有することで互いにさらなる高みに到達するのです。そうした関係の象徴がコラボウオッチなのです。もし時計を手に取る機会に恵まれたら、ぜひ細部までじっくり吟味してラグジュアリーカーの意匠まで堪能してください。
リシャール・ミル http://www.richardmille.jp
タグ・ホイヤー https://www.tagheuer.com/