世界最大手の時計コングロマリット「スウォッチ グループ」の中でも最高峰ブランドに位置付けられるブランパンが、1950年代にごくわずかに製造したパイロットウオッチ「エアコマンド フライバック クロノグラフ」に現代的な解釈を加えた最新作を発表。2019年に限定発表され、話題を呼んだモデルが待望のレギュラー化を果たす!
見た目はクラシックでも全てが最新・最高峰
ブランパンの「エアコマンド クロノグラフ」初号機は、1950年代半ばに軍用クロノグラフとして製造されたモデルだ。といっても、ほぼ試作レベルと言えるほどの数しか製造されていない伝説のモデルであり、その起源を知る術は、ときおりオークションハウスで出品されるヴィンテージ品の情報と当時を知る人々の子孫が語り継いできた記憶のみとなっている。
とても頼りなく思える情報ではあるものの過去の時計が現存する限り履歴は確かであり、2019年に限定500本で発表された限定モデルもヴィンテージピースのディテールを忠実に受け継いでいた。当時のモデルと限定モデルに共通する最大の特徴は、1953年にブランパンが手がけた世界初の現代ダイバーズウオッチ「フィフティ ファゾムス」に通じる回転ベゼルをカウントダウンタイプに作り替えて採用していることだ。加えて、クロノグラフは2カウンタータイプの配置で、特徴的なアラビア数字インデックスとペンシルハンドという組み合わせにタキメータースケールに届くクロノグラフ積算秒針を備えた点も共通していた。
対してレギュラーモデルとしてこれから展開される新作「エアコマンド フライバック クロノグラフ」は、ケース素材に現代技術で作られた最高級素材のグレード 23チタン(あるいはレッドゴールド)を採用。メインカラーもディープブルーにするなど、大きな差別化が図られた。特徴的なカウントダウン式の回転ベゼルはセラミックインサート構造になっており、自社製キャリバーF388B(名機F385の派生型)にはシリコン製ひげゼンマイを採用するなど、あらゆる点に現代的な要素が詰まっている。振動数は1/10秒計測が行える毎時3万6000振動。クロノグラフのリスタートが容易なフライバック機能と合わせ、緻密かつ正確な計測を繰り返し行うことができる。
1950年代、米国海軍にフィフティ ファゾムスを納入していた実績から、新たに空軍に向けて設計したとされる「エアコマンド」。アメリカでブランパンを扱っていたアレン・V・トルネックを通じ、パイロットに12本が提供されたという史実のほかは現存するオークションピースと人々の記憶だけが頼りという、まさしくコレクターの歴史研究意欲を刺激する伝説のパイロットウオッチは、当時のモデルならゆうに1000万円を超えることだろう。2000年代にあったレリーフベゼルの「エアコマンド」のディスコンモデルも、まったく異なるスタイルでありながら中古市場でにわかに注目度が高まっている。これらを考慮すれば、現在最新の技術を駆使してラグジュアリーな本格パイロットウオッチに変貌を遂げた最新作(とブランパンというブランド自体)に、定価以上の価値を見出すことは難しくないだろう。
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