定番クロノグラフのメカニズムを学ぶ【ブライトリング/キャリバー13】分解

クロノグラフとは、端的にいえば時計におけるストップウオッチ機能のこと。そのムーブメントは多くのパーツを組み合わせた複雑な構造となっており、時計好きやメカ好きの憧れとなっている。本記事では、クロノグラフムーブメントの定番機とされるETA7750(旧バルジュー7750)をベースに、スイスの高級時計ブランド【ブライトリング(BREITLING)】がモディファイした「キャリバー13」について解説する。

汎用ムーブメントの名機ETA7750をとことんチューンナップした「キャリバー13」


長い期間、ブライトリングの主要クロノグラフムーブメントとして活躍している名キャリバー。ETA7750のなかでも高級グレードであるクロノメータークラスをベースとしており、そのポテンシャルは理想的。さらに耐衝撃性を高めるため、ひげゼンマイのエンドカーブには熱処理を加え、テンプの片重りも自動と手動にて取り除いており、姿勢差誤差が少ない。

直径:30mm 振動数:毎時2万8800振動 巻き上げ方式:片方向 COSC認定クロノメーター。

 

厳格なパーツ選別と綿密な調整で理想的な仕上り

1973年登場したETA7750は、熟成が重ねられたクロノグラフムーブメントの傑作である。ブライトリングでは独自に各パーツの選別、アンクルのツメ石調整、テンプの片重り取りなどを行うことにより、ポテンシャルを最大限に引き出す工夫を凝らしている。

【キャリバー13のケースバック側】


※自動巻きのローターなどを取り外した状態。写真では上が時計の6時側となる。「時クロノグラフ車」は文字盤側にセットされている。

 

◆作動カム(制御パーツ)
コラムホイールのように複雑な切削加工を必要としない作動カムは、プレスの打ち抜きで製作できる。複数の板状パーツを重ねた構成で、生産効率の観点も含めて発明された。クロノグラフのオン/オフの制御を実行する。

振動ピニオン(伝達パーツ)
振動ピニオンは輪列動力をクロノグラフ機構に伝達するパーツで、水平移動方式の一種。スイングピニオンとも呼ばれる。ピニオンギア自体が簡略的かつ小型で、省スペースであることから、中間価格帯までのクロノグラフの多くが同方式を採用している。

<クロノグラフ停止中の振動ピニオン>

クロノグラフ作動中のの振動ピニオン>

ピニオンギアは小型の歯車を軸の両端に備えた細長いパーツ。片方の歯車は4番車に噛み合い、常に動力を得ている。スタートボタンを押すことで軸が傾き、逆側の歯車がクロノグラフランナーの歯と噛み合って計測がスタートする。キャリバー13のベースムーブメントであり、知名度の高いETA7750も同機構を採用している。

 

キャリバー13のスゴ技① 精度の微調整のためテンプに工作


ETA7750の上位機種であるクロノメータークラスをベースに、キャリバー13は数々の独自チューンが施されている。精度追求の余念がなく、テンプの片重りを徹底的に取り除くことで、姿勢差による誤差を解消。テンワに穿たれた穴がその証だ。

 

キャリバー13搭載モデル


ブライトリング「アベンジャー クロノグラフ 43」 Ref.A13385101C1A1 78万1000円

ミリタリーデザインが魅力のアベンジャー。ベゼルの回転を助け、スケールの視認性を高めるライダータブを備える。アベンジャー クロノグラフはキャリバー13搭載の43mmモデルに加え、ブライトリング自社製造のキャリバー01を搭載する45mmモデルもラインナップされている。

問い合わせ先:ブライトリング・ジャパン TEL.0120-105-707 https://www.breitling.com/jp-ja/

※撮影に使った分解ムーブメントは修理トレーニング用のデモ機。価格は記事公開時点の税込価格です。本記事は『ウオッチナビ Vol.88』より抜粋・編集しています。

Text/長谷川 剛(TRS) Photo/岸田克法

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