時計の本場スイスで業界を牽引し続ける「オメガ」は、スピードマスターやシーマスターなどのスポーツウオッチを中心に日本でも親しまれているビッグブランドだ。そのなかでも常に特別な存在として扱われてきたのが「センタートゥールビヨン」である。実用主義の追加機能が多いオメガにあって、ほとんど唯一コンプリケーションウオッチ製造の技術力の高さを示す稀有な一本が、2020年にアップグレードを果たす。全世界に発表されたばかりのこのモデルの性能を詳しく見ていこう。
世界で唯一、超高耐磁性能を有するトゥールビヨン
近年のオメガは、ほぼすべての腕時計の「マスター クロノメーター」化を推進している。これは、オメガとスイス連邦軽量・認定局(METAS)によって定められた、新たな時計の品質検査規格である。多くのスイスウオッチがスイスのクロノメーター協会の認定を受けているCOSCの基準をベースとし、さらに耐久性などの新規項目が追加された内容となっている。驚くのは耐磁性能で、15000ガウスの磁場にも耐える性能を備える必要があるという。これは、MRI検査機械に通しても時刻表示の正確性を維持できるレベル。構造と素材を進化させることで、オメガはこれを実現したのである。
そして、すでに多くのシリーズで「マスター クロノメーター」の取得を済ませたオメガが、ついに着手したのが「センタートゥールビヨン」というわけだ。
トゥールビヨンとは、1873年に天才時計師のアブラアン-ルイ・ブレゲが1801年6月21日に特許を取得した時計界の複雑機構の代名詞。この機構は、時計の精度を司る調速・脱進機をケージと呼ばれるパーツ内に収め、そのケージごと一定の周期で回転させることにより、ヒゲゼンマイやテン輪などにかかる重力の負荷を分散させて精度を安定化させる役割を持つ。そして、トゥールビヨンを製造できることは、それ自体が自社の優れた技術力を誇示することにもつながる。
オメガは1947年にトゥールビヨンを開発し、その50年後にセンタートゥールビヨンを完成させている。トゥールビヨンは装置自体にある程度の専用スペースが必要なため、多くの時計ブランドは3時、6時、9時など中心以外の場所に設置することが多い。こうしなければ、肝心の時分針の置き場所がなくなるか、ダイアルをオフセットするしかないからだ。この問題を見事に解決したのがオメガで、センタートゥールビヨンの周囲に針型の突起を持つ2層の回転リングを設置し、それを時分針としたのである。もちろん、輪列構造は複雑になるが、それを感じさせない機能美溢れるデザインもまた、オメガのセンタートゥールビヨンの魅力でもあった。
2020年にバージョンアップした最新型では、マスター クロノメーター認定を受けただけでなく、外装素材でもオメガ独自の技術力がいかんなく発揮されている。ケース本体とバックル、リューズのロゴにホワイトゴールドの合金で透き通る白さと眩い輝きを持ち、経年変化耐性にも優れた18Kカノープス™ゴールドを使用。これに組み合わさる18Kセドナ™ゴールド製のラグ、ベゼル、ケースバックの燃えるような色味が見事に調和し、最高峰に相応しいデザインを構築している。
ムーブメントのメインプレートやブリッジ、文字盤も18Kセドナ™ゴールド製の豪華仕様だ。文字盤はブラックPVD加工を施すことで奥深いブラックを表現。その中央に座するトゥールビヨン ケージもチタンを硬化皮膜処理して黒く仕上げられている。
新作「デ・ヴィル トゥールビヨン ナンバード エディション」は、オメガのアトリエ トゥールビヨンにて、少数精鋭のウオッチメーカーが1点ずつ手作業で製造するため、生産ペースは約1か月で1本。ビッグブランドらしからぬ時間のかけ方は、一方でこの時計の特別さを何よりも雄弁に物語っている。
誰もが知っているブランドの、誰もが所有できない特別モデル。2076万8000円と価格も最高峰だが、これほど耐久性に優れたコンプリケーションウオッチは他にない。まさしく時計蒐集家の“上がり時計”に相応しい一本といえよう。
問い合わせ先:オメガお客様センター TEL.03-5952-4400
https://www.omegawatches.jp/ja/
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