クオリティと価格のバランスで高い評価を得ているスイスメイドウオッチを輩出する【オリス(ORIS)】は、社会貢献の面でも積極的な姿勢を見せている。特に日本法人オリスジャパンの行動力にはスイス本社も関心を寄せており、昨年はビーチクリーンを含む初のエコツアーを神奈川県南西部の真鶴町にて実現した。そのレポートとともに、ファンとの絆を重視するオリスの真髄を探る。
ブランドによるエコフレンドリーな活動の理想形
まずはじめにオリスがどういった時計ブランドなのかに触れておきたい。
オリスは1904年、スイス北部バーゼルに近いヘルシュタインにて創業された。自然豊かなこの小さな村に産業をもたらしたブランドとして、現在も同地のシンボルとなっている。当初から日常使いで価値を実感出来る手に取りやすい価格のコレクションで成功を収め、その伝統的な製造技術や方針を現在も引き継ぐ、まさに時計界のサステナブルな存在と言える。
↑「オリス X チェルボボランテ」 各35万2000円/オリスの代表作である「ビッグクラウン ポインターデイト」と、廃棄される鹿革をレザーアイテムに生まれ変わらせる企業「チェルボボランテ」が製作した鹿革ストラップを組み合わせたコラボモデル。同じ革素材の携帯収納ケースが付属する。
そんな歴史あるオリスは「チェンジ・フォー・ザ・ベター」のスローガンのもと、地球や社会をより良い方向へと導くための取り組みを実施している。例えば「オリス X チェルボボランテ」のように、サステナブル企業とのコラボレーションを行なっているほか、スイスの独立系気候専門家クライメートパートナーとのパートナーシップ締結によって、オリスによる環境に負荷をかけないための努力などを「オリスサステナビリティレポート」として公開している。これは、昨今広がりを見せているラグジュアリーブランドによるエコフレンドリーな活動とは一線を画すもので、オリスの本気度や誠実さを垣間見ることができる。
↑「オリスサステナビリティレポート2023」は、オリスの公式サイトからダウンロードできる。
ユーザーに対してだけでなく、地球や社会にもホスピタリティの精神を持つオリスだが、日本国内ではその知名度をさらに高めるプロモーションの一貫として、2019年6月にオープンした国内唯一のブティックとなる「オリス銀座ブティック」で「オリス クリーンプロジェクト」を開催している。これは顧客やファンと共に月に一度、銀座周辺にて清掃活動を行うというもの。開催日はX(旧Twitter)のオリス公式アカウントで告知され、誰でも参加できるようになっている。また世界的には2018年からワールドクリーンを実施しているなど、その活動が賞賛されている。
↑「オリス クリーンプロジェクト」の様子。オリスファンや時計好き、ボランティアに興味のある人が集まり、月に一度、銀座でごみ拾いを行っている。
ファンと繋がり共感する新たなラグジュアリーブランド像を見た
では今回のエコツアーについて紹介する。オリスジャパンが募集し、応募してきた一般の25名はまず都内に集合。バスで神奈川県足柄下郡真鶴町へ向かったのだが、このバスもエコロジーを意識して家庭で使われた廃油をリサイクルして作られるバイオ燃料で走る“天ぷらバス”を採用。ほのかに天ぷらの香りがする排気は大幅にCO2が削減される一方、走行性能は通常の軽油(ディーゼル燃料)とほぼ同等だという。そんな循環型社会を具現化するバスで、神奈川随一の美しいダイビングスポットとして知られる海へと赴いた。
↑今回のエコツアーの参加者を乗せ、都内と真鶴町を往復した“天ぷらバス”。
現地でオリスのアンバサダーであるフリーダイビング日本代表の岡本美鈴選手らが合流。そもそも今回のイベントは、岡本選手が真鶴の海を練習の拠点としていることから企画されたもので、真鶴町の協力を得て実現した。この三者の行動力には感心するばかりだ。美しい景勝地として知られる琴ヶ浜ではあるものの、参加者たちが熱心に海岸清掃したことによって1時間ほどで驚くほどごみが集められ、正直驚かされた(前出の集合写真を参照)。
↑エコツアー参加者、岡本選手のダイビングチーム、オリスジャパンのスタッフらが協力して琴ヶ浜の磯を清掃。悪天候だったが徐々に好転したのも印象的だった。
その後の昼食では真鶴産の食材を使ったランチボックスやピザ、イカ爆弾(イカを使ったコロッケ)などが振る舞われ、それらを堪能しながら参加者同士が笑顔でコミュニケーションを取る様子が見られた。オリスのファン同士が繋がり、地産地消まで行う。この様な相互関係のあるエコなアクションは、コングロマリット傘下のビッグブランドではなかなか実現が難しい点もある。独立経営で、なおかつ行動力のあるオリスならではのイベントと言えるだろう。
↑「お林」の入り口には駐車場も用意されており、遊歩道が整備されているため気軽に散策が楽しめる。
一行はその後、真鶴半島の先端部となる県立真鶴半島自然公園へと移動。ここには「お林」と呼ばれる江戸中期からの原生林が広がっており、クロマツやクスノキといった数百種類の植物、さらに野鳥などが生息している。自然に触れ合える散策を楽しみながら、地元のボランティアガイドによる解説に参加者たちは耳を傾けていた。近隣の豊かな海を支えているのも関東有数のこの森林があってこそとのことで、古くから保護されてきたのだという。海と山に繋がりがあり、ヒトがこれらを守ることによってその恵みを享受できる。まさにヒトと自然による持続可能な共生のモデルケースであり、連綿と受け継がれていることを学ぶことができた。
【インタビュー】フリーダイビング日本代表・岡本美鈴選手
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「オリスは地球を想うブランド。これからも協力関係を築いていきたい」(岡本選手)「フリーダイビングの日本代表として訪れたバハマでビーチクリーンを行ったことをきっかけに、ダイビング仲間と共に海洋保全のための“マリン アクション”を2010年に立ち上げました。海と共存するためのThinkからActionを起こしたい。これがコンセプトです。 今回のエコツアーは、オリス、真鶴町、私たちダイビングチームが海洋保全について同じ考えを持っていることで実現しました。オリスは地球を想うブランドであり、ダイビングの仲間や生徒さんたちにも自然と紹介したくなる存在です。もちろんダイバーズウオッチの機能も申し分ありません! 参加者の皆さんにはビーチクリーンだけでなく、真鶴の食やお林に触れていただくことも目的でした。保全活動やそのPRは継続してゆくことが重要と考えており、そのためには楽しみも必要です。今後もオリスと協力し、エコツアーや海に関するアクションを一緒に行なっていきたいですね」 |
ラグジュアリーブランドによる社会貢献例は散見され、団体支援や人道援助がなされている。しかしながらリアルイベントの活動はまだまだ少数派だ。その点オリスは方向性を明確に示しており、かねてよりエコ意識が高く、環境保護団体とのコラボモデルなどを通してその重要性を広めてきた。これまで高級時計とは無縁だった層も、オリスエコツアーの様なイベントに共感するだろうし、時計に興味を抱くきっかけとなるのではないだろうか。
廃漁網をアクセサリーとして蘇らせる「ブレスネット」とのコラボウオッチ
↑オリス「オリス X ブレスネット」 38万5000円/回収された廃漁網からアクセサリーを生み出す社会企業「ブレスネット」とオリスがパートナーシップを締結。これをきっかけに開発されたダイバーズウオッチで、廃漁網から作った個々に柄の異なる文字盤を備える。30気圧防水。
商品に関する問い合わせ先:オリスジャパン TEL.03-6260-6876 https://www.oris.ch/jp-JP/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。
Text/山口祐也(WATCHNAVI編集部)
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