スイス時計産業の中心地、ル・ロックルに本拠を構えるミドーは、1918年に創業した名門。かつては日本でも展開されていたので、アンティークウオッチ好きの方にはご存知の人も多いでしょう。このミドーが日本に再上陸したのは約2年前。取り扱い店舗の増加とともに、にわかに盛り上がりつつある注目ブランドをもっと深く知るべく、同社CEOのフランツ・リンダー氏に話を伺いました。
時計界でも競合相手のいない独自のポジショニング
–ミドーは、なぜこれまで日本展開がなかったのでしょうか?
1930年頃は日本でも展開していましたよ。その後、こちら側と日本側での体制の変化があって途絶えてしまったけれど、やはり日本は目の厳しい時計愛好家の多い国ですし、ブランドの今後の発展に欠かせません。それが2015年に再上陸を決めた理由ですね。
–ミドーは、ミドルレンジのブランドを複数抱えているスウォッチ グループの一員ですが、グループ内で競合しませんか?
たとえば展開する価格帯の近いハミルトンはアメリカで発祥したブランドなので、創業に至る背景から大きく違います。ティソはテクノロジー志向ですし、ロンジンには特有のエレガントさがあります。10万円前後から購入できるトラディショナルなスイスウオッチとなると、やはりミドーしかないと考えています。
普段使いを念頭に置いた見えない部分での革新性
–ミドーは非常にシンプルなデザインが特徴ですが、これを貫いている理由を教えてください。
私たちは、適正価格でありながらスイス時計の本質に触れられる製品を作っています。装飾的なデザインではなく、本当に使いやすいオーセンティックな腕時計というのがミドーの強み。これに5つのコレクション固有のキャラクターが合わさっているわけです。
マルチフォートは1934年からの歴史がある「マスキュリン」で「ロブスト」なコレクションです。コマンダーは1959年に誕生した「アイコニック」なブランドの顔。1970年から続くバロンチェッリは「タイムレス」なクラシックデザインが特徴となっています。
これに、1944年ダイバーズウオッチの「オーシャンスター」と、エレガントスタイルの「ベルーナ」を加えた5つのコレクションで、合計300型ほどの製品を展開しています。
–こうした製品について、機能面でのカテゴライズというのはありますか?
機能的なことで言えば、クロノグラフやGMTなどといった機能を付け加えたものを除いて、スタンダード機と高性能機でわけることができます。具体的にはCOSC公認クロノメーターを取得しているかどうか。クロノメーター取得モデルの多くにシリコン製の脱進機を使っていることも挙げられますね。
実はスウォッチ グループ内の同価格帯のブランドでは、ミドーが最初にシリコン製の脱進機を使ったブランド。創業100周年の節目に発表したビッグデイトも、6時位置にビッグデイトを配置した80時間パワーリザーブの時計というのは珍しいでしょう。ミドーなら一部のハイブランドが手がけるような機能を、現実的な価格で提供できるわけです。
–同じグループであるETA社がムーブメントを製作していると思いますが、シリコン製の脱進機に置き換えるなどの工程が、あまりコストに反映されていないように思いますが。
なぜそうできるのかは企業秘密ですが、確かに通常の脱進機からシリコン製へ切り替えても、プライスには反映しないように配慮しています。それは標準性能の向上も同じ。近い将来、ミドーの製品は80時間パワーリザーブが基本となりますので、いまは性能向上に伴って価格が跳ね上がらないようバランスをとっています。
100周年記念モデルは間もなく完売。下半期の目玉は・・・
–2018年のバーゼルワールドは、創業100周年を記念した製品が注目を集めました。販売が始まってからの反響はいかがですか?
非常にポジティブな話題が多いですね。マルチフォート デイトメーター リミテッドエディションはすでに店頭在庫を残すのみですし、トリロジーもそれぞれ良い動きを見せています。これら3本は世界的には未来を表現したブラックが人気ですが、日本に関しては創業時を示したクラシックなデザインが好評と聞いています。私もこの時計が好きですね。
–上半期はお祝いムードでしたが、下半期にはどのような製品を展開されるのでしょうか?
すでにコマンダーから発表したビッグデイトを、今度はバロンチェッリから出します。クラシックなデザインと先進ムーブメントを融合させて、価格的にもかなり抑えた一本です。あとは、マルチフォートからシリコン脱進機を使ったクロノメーター仕様やGMT機能搭載モデルなどもありますよ。
日本ではまだまだ私たちの製品の全貌を見ていただく機会が少ないとは思いますが、手にとっていただければきっと気に入っていただけるはずです。
ミドー創業100周年イベントのレポート記事はこちら
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