2018年、スイスのニドー(ビエンヌ)に設立された【ノルケイン(NORQAIN)】は、新進気鋭の時計ブランドだ。現在では少なくなった完全独立経営を軸とし、パフォーマンス、デザイン、プライスいずれも満足度の高いコレクションで日本でも存在感を示している。今回、新作発表に合わせて副社長のトビアス・カッファー氏が来日したため、インタビューの機会が得られた。
↑トビアス・カッファー氏/ノルケイン副社長。1990年、スイス生まれ。ルイ・エラールやジュエリーメーカーで活躍後、実兄のノルケインCEOベン・カッファー氏の招聘により、2021年5月に現職に就任。主にセールスを担当する。
独立経営は最重要。プロダクトにもブランドバリューにも大きく影響する
創業から10年も満たないブランドが世界中に販売網を構築し、熱心なファンを生んでいることは驚くべき事象といえる。そんなノルケインの推進力となっているのが、経営の独立体制だ。これをトビアス・カッファー氏は継続すると断言し、その重要性を解いてくれた。
(トビアス・カッファー氏)「ノルケインはインディペンデントブランドであることでアイデンティティを保ち、オリジナリティの高いプロダクトを生み出すことができています。この一貫した哲学により、デザインもメカも、細部の細部までこだわることができるわけです。かつてスイスブランドの大半がこうした業態でしたが、時代とともに変化してきました。これはブランドによっても業種によっても、状況や方針が個々で異なるためどちらが正解とは言えません。しかしノルケインの場合、国内屈指のサプライヤーがその企業理念に賛同してくれていることで、クオリティもオリジナリティも高いプロダクトを安定的に生産できています。これが我々の強みです」
伝統的な技術や文化が軽んじられてしまう傾向がある日本においても、しっかりと受け継いでいくべきとの声が高まりつつあり、地方創生のカギとしても伝統工芸や農林水産物に注目が集まっている。この季節になると駆け込み需要のある「ふるさと納税」も、そうした支援の一貫といえる。スイスでも1970年代の「クオーツショック」を経て、機械式時計の歴史的価値が見直されたのだ。
「我々は歴史こそ浅いものの、スイスの時計文化を未来へと繋ぐことをひとつの目標に掲げています。伝統的な時計製造技術を尊重しつつ、革新的なデザインと品質の保証を追求しているのです。ムーブメントでいえば、AMTを含むセリタやケニッシとのサプライヤー契約は続いていくでしょう。もちろん皆さんが期待されている未来に向けたプロジェクトも進行中です(笑)」
新たな限定モデルも、日本の時計ファンの心を掴む出来栄え
「日本の方々は本当に時計を見る目が肥えていらっしゃる。来日の度にそう感じます。ディテールの作り込みや仕上げまで確認される方も多いですし、来店される前の下調べも欠かさない。スイスの時計好きにも似たところがありますが、クラフトマンシップへの敬意の表れなのでしょう。そして幾度かの来日を経験し、スイスの時計職人と似ている職業を見つけるに至りました。それが、日本料理の料理人。調理の所作、もてなしの精神、そして道具を大切にする姿など、とても共通点が多いことに気付きました。これらはカスタマーを満足させる“作品”には不可欠な要素といえるでしょう」
ノルケインといえば、日本限定販売のコレクションも好評だ。今回、トビアス氏は本国から2型4モデルの新作を持ち込んだ。そのうち、アドベンチャー スポーツの2モデルが日本限定バージョンである。
「細部までしっかり愛してくれる日本の時計ファンに向けて設計されたアドベンチャー スポーツ JP 42mmは、お馴染みのノルケインパターンをあしらったアンスラサイトまたはミッドナイトブルーの文字盤に、レギュラーモデルにはないポリッシュ仕上げのステンレススチール製ベゼル(逆回転防止式)を組み合わせました。光を帯びた際、控えめながらベゼルの反射によって程よい華やかさが加わります。アドベンチャー スポーツは正統派のためオン・オフ問わずに使いやすく、初めて機械式時計を購入される方にも適しています。ブレスレットは長さの微調整ができる機能を搭載しているため、ホールドを強めたり、余裕を持たせたりなど、その時の好みに合わせたアジャストメントができて便利です」
↑ノルケイン「アドベンチャー スポーツ JP 42mm アンスラサイト文字盤」 Ref.N1000S11A/T101/102S 39万6000円/自動巻き(Cal.NN08)、毎時2万8800振動、約41時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ12.8mm。100m防水。日本限定モデル。
↑ノルケイン「アドベンチャー スポーツ JP 42mm ミッドナイトブルー文字盤」 Ref.N1000S11A/MB101/102S 39万6000円/自動巻き(Cal.NN08)、毎時2万8800振動、約41時間パワーリザーブ。ステンレススチールケース(シースルーバック)&ブレスレット。直径42mm、厚さ12.8mm。100m防水。日本限定モデル。
スポーツ・エレガントの新境地を拓くレッドゴールドモデル
インデックスと各針には、職人技が感じられる丁寧なダイヤモンドカットが施され、立体的で美しく、優れた視認性を発揮するアドベンチャー スポーツ。ノルケインではエントリークラスに位置するが、ディテールの作りも抜かりない。次にトビアス氏が手に取ったのが、打って変わり、前衛的なデザインやCOSC認定クロノメーターの高精度を魅力とするブランド最高峰のコレクション、「インディペンデンス ワイルド ワン スケルトン」の新バリエーションだ。
「ノルケインは生まれてまもないブランドでもあるため、時計界にイノベーションを起こす存在であるべきとも考えています。その中で開発されたのが、2022年登場のインディペンデンス ワイルド ワンでした。デザイン、マテリアル、メカニズムまで、これまでになかったコレクションとしてデビューし、お陰様で予想を上回る反響を世界中でいただいています。最新作は、独自のNORTEQ®(カーボン複合素材)を初めてグレー色に仕上げ、ケージ、ベゼル、ケースバックに使ったバリエーションです。このNORTEQ®ですが、実のところ明るい色にすることが技術的に難しく、パートナー企業と研究開発を重ね、遂に完成しました。ノルケイン キャリバーNB08Sが見えるオープンワーク文字盤との融合により、モノトーンながらインパクトあるデザインに仕上がっています」
↑ノルケイン「インディペンデンス ワイルド ワン スケルトン グレー」 Ref.NNQ3000QGB1AS/B018/3W1BR.20GQ 90万2000円/自動巻き(Cal.NB08S)、毎時2万8800振動、約41時間パワーリザーブ。NORTEQ®ケージ&ケースバック+特殊ラバーショックアブソーバー+チタンコンテナのケース(シースルーバック)、ラバーストラップ。直径42mm、厚さ12.3mm。200m防水。
「そして今回の“イチ押し”が、ワイルド ワン スケルトン初のゴールドモデルです! 先に紹介したグレーモデルとともに、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)で活躍するスイス人プレーヤーのローマン・ジョシをブランドアンバサダーに据えたラグジュアリーピースです。ブラウン色のパーツがラバー製ショックアブソーバーで、これとサンドブラスト仕上げのチタン製コンテナを、パートナー企業のPXファクトリーから供給される18Kレッドゴールド製ケージ(表側)とNORTEQ®製ケースバックで挟んだ構造となっています。このコントラストがとてもユニークで、ワイルド ワン スケルトンをスポーツ・エレガントの領域へと引き上げることができました。このゴールドパーツもNORTEQ®パーツも製造に非常に手間がかかるため、年間に100本程度の生産が限界。とてもプレミアムなワイルド ワン スケルトンなので、店頭で出会えたらとても幸運です(笑)」
↑ノルケイン「インディペンデンス ワイルド ワン スケルトン ゴールド」 Ref.NNQ3000GGN1AS/N001/3W1NR.20BQ 236万5000円/自動巻き(Cal.NB08S)、毎時2万8800振動、約41時間パワーリザーブ。“PX IMPACT® Gold”の18Kレッドゴールドケージ+NORTEQ®ケースバック+特殊ラバーショックアブソーバー+チタンコンテナのケース(シースルーバック)、ラバーストラップ。直径42mm、厚さ12.3mm。200m防水。
問い合わせ先:ノルケイン ジャパン TEL.03-6864-3876 https://norqain.com/ja-jp/ ※価格は記事公開時点の税込価格です。限定モデルは完売の可能性があります。
Text/山口祐也(WATCHNAVI編集部) Photo/鈴木謙介(インタビュー)
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