IWCの新工場やキーパーソンを取材【前編】――業界最長級「8年保証」の真意に迫る

2019年11月初旬、ウオッチナビ編集部は世界発表に先駆けて明かされる情報を求めてIWCの本拠地、スイス/シャフハウゼンへと向かった。そこで私たちが知らされたのは今後の重大な方針だった! その取材の模様を、全3回【前・中・後編】にわたってお伝えする。

シャフハウゼン郊外の小高い丘に新設された新工房「マヌファクトゥール・ツェントルム」。2018年の完成からすでに本格稼働しており、自社製ムーブメントの数々を製造中だ

アンドレアス・マンフレッド・ヴォル氏
1981年生まれ。2007年にIWCに入社後、いくつかの部署でキャリアを重ね2016年よりCOOに着任。新工房の設立を取り仕切った人物でもある

重大発表の決め手は新しいマニュファクチュールセンター

IWCのプロダクトの国際保証期間が、最長8年間に延長されるという。その情報を本誌掲載に間に合わせるべく、11月19日に正式発表を前に編集部はシャフハウゼンに急行。IWCの重要人物であるCOOのヴォル氏に真意を尋ねた。
「この『My IWC』という保証期間の延長プログラムは、あらかじめ計画していたというよりも“機は熟した”という方が適切。最も大きな理由となったのは、新工房の設立です。今年のスピットファイアに搭載したCal.32000系をはじめ、ベースムーブメントからのリプレースが可能な自社製ムーブメントが増え、それを量産する体制も整った。自社製品に対して作り手が自信を持つのは、当然のこと。その事実を、延長保証という形で示したわけです」

IWCの正規購入者がオンラインで「My IWC」に登録すると、従来の2年保証に6年の延長保証を加えた、合計8年間の国際保証が付くという新たなプログラム。これの対象は、現在、2年の保証期間内にある時計から適用され、すべてのIWCの時計が対象になる。ちなみに最近の腕時計に多い磁気帯び問題も、IWCではブティックで対応してくれるそうだ。
「保証期間が2年から8年になったからといって、これまで以上に修理依頼が増えるとは全く思っていません。これまで通りのクオリティで製造していれば、まず問題ないでしょう。私たちとしては、延長保証を最長8年に伸ばすことが、より安心してIWCの時計を選んでいただくひとつのきっかけになれば、と思っています」

 

新たなプロダクトラインに宿る伝統と“プローブス・スカフージア”の哲学

ヴォル氏が絶対の自信を持つIWCの新しいマニュファクチュールセンター。その内部を紹介。時計師の作業も特別に間近で見せてもらうことができた。

 

価格を軽く凌駕するIWCの製造現場

パーツ加工
原材料となるメタルを保管し、ひげ持ちなどの微細パーツまで自社製造。ワイヤ放電マシンによる超微細加工で、ハイコンプリケーション用の緻密なレバーなども作られる。ローターの種類だけでもその多彩さがわかる


 

仕上げ
棒材や板材から用途別に加工されたパーツは、検品された後に仕上げのセクションへと引き渡される。職人がプレートに施したペルラージュやコート・ド・ジュネーブの仕上げが、機能的で美しいムーブメントを支えている


 

ケース研磨
ベテランポリッシャーに聞いた話では、ケースの磨きひとつにも様々なポジションを使い分けるという。アクアタイマーでは、なんと81のポジションで磨く必要があり、ラグだけでも13姿勢で磨き分けを要するという


 

ムーブ組み立て
IWC伝統のライン方式による組み立て。古くは、1つのムーブに対し職人が10ピースずつ組んでは次に渡していたそう。現代は、5ピースずつ組み上げる。次に渡された人はまず検査を行ってから自分の担当分に組むそうだ


 

まだまだ発展の余地を残す新ファクトリー

2018年に落成した新工場は、今後増えるであろう新たな技術者、職人、工作機器を見越して余白の多い設計に。屋根の全面をソーラーパネルにする他、ゼロエミッションのための創意工夫も凝らされている。

パーツ加工のセクションには、これから新規マシンが設置されるのを待つ空きスペースが随所にある。ここで働く人々も、まだ数百人受け入れるだけの余裕があるという。

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