高級時計を熟知する有名店に最新人気ウオッチのベスト3を聞いてみた vol.2 ―― モノづくりの真髄を宿すハイエンドモデルに魅了される
便利なうえにステータスにも関係する腕時計はヒトにとって身近な存在であるし、メンテナンスのことを考えると時計ショップは地域密着型であることが理想的。そんな理由もあって、時計店は全国各地に点在している。ユーザーにもっとも近いショップだからこそ、最近店頭で勢いを感じるブランドやタイムピースを知っているに違いない。そこで WATCHNAVI Salonでは、店舗ごとの「人気時計ランキング」の連載を組むに至った。
前回のvol.1記事に続いて、全国に5店舗を展開する国内屈指の正規時計店「oomiya」に協力を要請。今回は、高級ブティックやブランドショップが軒を連ねる関西最大級の商業エリア=大阪ミナミに位置するoomiya 心斎橋店にて、店長の出水さんに話しをうかがった。
<oomiya 心斎橋店> 出水 店長
【人気No.3】
H.モーザー
パイオニア・センターセコンド ファンキーブルー ブラック エディション
【出水さんの解説】
H.モーザーは、ドイツと国境を接するスイス北東部の町、シャフハウゼンに拠点を置くマニュファクチュール(自社一貫生産が可能なメーカー)で、19世紀に活躍した同地出身の天才時計師、ハインリッヒ・モーザーの技術と哲学を継いでいます。歴史が深く、一時休眠期間を挟んで2005年に再スタートを切ったラグジュアリーウオッチブランドとなっています。
これまではミニマルなドレスウオッチを主軸としていましたが、2017年に初めてステンレススチールケースの「パイオニア」コレクションを発表し、スポーツウオッチのカテゴリーでも存在感を放つようになっています。ケースの頑丈な作りとともに注目されているのが、「フュメ」と名付けられたグラデーションがかった独自のダイアルです。ニュアンスを与えた美しい色合いはまさに芸術品の域で、熟練の技を感じさせる仕上がりと言えます。
ムーブメントにもこだわり、3日間連続で駆動可能な自動巻き「キャリバーHMC 200」を搭載しています。もちろんこちらも自社製です。人気の高いスポーティなデザイン、防水スペックに代表される実用性、そして内外ともに伝統的なウオッチメイキングが生かされている。これら“三拍子”の揃った高級時計は実のところ少数で、貴重な存在となっているのが人気の理由です。
「ブルーフュメダイアルをセットした美麗なスポーツウオッチ」
【人気No.2】
ジャガー・ルクルト
レベルソ・クラシック・ミディアム・デュオ・スモールセコンド
【出水さんの解説】
1833年創業という、スイス時計界でも屈指の歴史を誇るジャガー・ルクルトは、古くからトップマニュファクチュールとして自社コレクションの充実はもちろん、有名ブランドにムーブメントを供給するなど、並外れた技術で発展してきました。
そのアイコンとも言うべきコレクションが、アール・デコに触発されたスクエアケースが特徴の「レベルソ」になります。1931年、ヨーロッパの貴族階級で楽しまれていたポロ競技中、風防の破損を防ぐためにケースが反転する独自の構造を開発しました。現在でもこの機能を生かし、レベルソは多彩なバリエーションを展開しています。
それらの中でも、表裏にそれぞれ文字盤を設えた“デュオ”が好評です。ひとつの手巻きムーブメントでふたつの時間帯を表す便利さで海外渡航の際に役立つほか、ユニークなデザインも評価されています。表にはスモールセコンドが配されたギヨシェ彫りのシルバーダイアル、裏にはデイ&ナイト付き24時間表示のクルー・ド・パリ装飾のブラックダイアルがセットされています。趣きの異なる時計2本を1本で味わえる、そんな贅沢な逸品です。
「ケースが反転する“ギミック”が時計ファンを魅了」
【人気No.1】
A.ランゲ&ゾーネ
ランゲ1
【出水さんの解説】
1位は、古くから時計文化が根付いたドイツ東部の街、グラスヒュッテを代表するA.ランゲ&ゾーネのシンボルです。このドイツの重鎮ブランドは、第二次世界大戦に起因する東西ドイツの分断や統合、さらには休眠期間を経た後、1990年に創業者一族の尽力もあって待望の復活を遂げました。
その再興時、1994年に復興コレクション第一号モデルのひとつとして登場した「ランゲ1」は、オフセンター配置の個性的なダイアルが特徴です。時分表示のメインダイアルとスモールセコンドの直径、アウトサイズデイトの縦横の長さ、パワーリザーブインジケーターのサイズまで、黄金比に則った文字盤になっています。この絶対的な美の法則に基づく設計こそ、時計愛好家の心を鷲掴みにしてやまない理由と言えます。
oomiya 心斎橋店はカジュアルウオッチから幅広く取り揃えていますが、この「ランゲ1」はハイエンドモデルの中でも最高峰に位置づけられます。息の長いコレクションではあるものの、モデルチェンジは2015年の一回のみ。これは腕時計として完成されていることを意味しています。そのリニューアルも外観デザインはわずかな調整に留まり、内部機構に自社製ヒゲゼンマイやフリースプラングテンプ、瞬転式アウトサイズデイトなどを新たに採用したもので、より高性能な仕様へとアップデートされました。伝統を重んじて実用性に磨きをかけるブランドの姿勢が、クラフトマンシップあふれる超一流のタイムピースを生み出すことに繋がっている象徴的な例となっています。
「黄金比に裏付けられた、機能的かつ美しいデザイン」
<取材協力>
oomiya 心斎橋店
TEL:06-6251-0077
住所:大阪府大阪市中央区南船場4-7-6
営業:11:00~19:30
定休日:水曜
取扱いブランドは、オフィシャルサイト(https://www.jw-oomiya.co.jp/)に掲載。
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、休業日や営業時間の変更、一時休業などを行っている可能性があります。
※スタッフは接客時、感染症予防のためマスクを着用しています。
Text/WATCHNAVI編集部