新型コロナウイルスの世界的まん延の関係から、改めて日本には輸入品が数多く出回っていることに気付かされた人もいるだろう。時計市場においても欧州勢を中心に入荷が遅延し、予定されていた発売日が延期となった新作もある。
そこで時計だけではなく注目を集めているのが、“国産”だ。スイスに次ぐ時計大国の日本には、長い歴史を持つ4大メーカーが存在し、国内外問わず高く評価されている。いま再び、“国産”の底力を見つめ直すきっかけとして大手4社のキーパーソンに取材し、その高度な技術や斬新なアイデア、先進的なデザインの魅力あるコレクションについて尋ねた。
第7回は、【シチズン(CITIZEN)】が誇る技術の結晶=「エコ・ドライブ ワン」について迫る。
デザインの幅を広げ、もっと“いつもの時計”として認識される存在に
シチズン初の光発電ウオッチ「クリストロン ソーラーセル」から40年の節目、2016年に誕生したのが「エコ・ドライブ ワン」である。
厚さわずか1mmのムーブメントは世界で驚きをもって迎えられ、その技術はいまも他の追随を許さない。とはいえ“極薄” “軽量”という機能性の認知は、残念ながらまだ充分ではない。そこで、さらに訴求を強化すべく誕生したのが、ベゼルにジルコニア・セラミックを採用したバリエーションである。このモデルについて、シチズンブランドの商品企画を牽引する御園昭二さんは、
「“真っ黒”を表現したくて、選んだのがセラミックスのなかでも高い硬度と耐傷性を誇る“ジルコニア”でした」と説明する。
それを踏まえて、ベゼル部分に施されたヘアライン加工に注目いただきたい。そもそもジルコニアは素材表面に表情をつけるのが困難な素材で、加工には非常に苦労したと振り返る。それでもエコ・ドライブ ワンに向き合うときは、
「徹底的に突き詰める気持ちがないと求める時計は作れない」と話す。
「厚さ1mmのムーブメントに見合ったデザインとは何か。その答えが美しさの追求でした。薄さを最大限に生かす唯一無二の美しさこそが、愛着に繋がると考えたからです」
デザイナーとして1992年入社。以後、香港駐在、ブラジルでの拠点運営ほか、シチズンブランドのブランディングに従事。現在は商品開発本部にて世界140か国以上で展開されているシチズンブランドの商品企画を牽引する。
御園さんはシチズンブランドの商品企画を牽引する立場だが、デザイナーとして入社した経歴を持つ。ゆえにデザインへのこだわりは強いのだ。
さらに、普段使いに最適な防水スペック(5気圧)へと高めたRef.AR5060-58Eもリリース。裏蓋を使わない新たな2ピース構造を考案した。ケースは磨き分けによって、薄さのなかでも立体感を演出する作り。またベゼルを留めるビスをファーストモデルよりも大きくすることで、タフさを表現している。
2000年以降で見ても、エコ・ドライブに関する特許出願は300件を超えているという。
「エコ・ドライブ ワン発売以降の5年間分の経験により、表現力を含めてかなりの蓄積ができた」と御園さん。
これら技術と経験値を踏まえれば、新型ムーブメントや新たなケース形状、素材などを採用した次世代のエコ・ドライブ ワンの登場が近いのではないかと期待してしまう。これからのエコ・ドライブ ワンが楽しみだ。
高い硬度と耐傷性に優れるジルコニア・セラミックをベゼルに使用
シチズン「エコ・ドライブ ワン(セラミックスベゼル)」Ref.AR5074-53E 44万円
ファインセラミックスのなかでもっとも高い硬度と優れた耐傷性を備えるジルコニア・セラミックをベゼルに採用。ステンレススチール製のケースとブレスレットにデュラテクトDLCを施す。その一体感とブラックの色合いは見事!!
スペック:クオーツ(光発電エコ・ドライブ/自社製Cal.8826)。ステンレススチールケース&ブレスレット(デュラテクトDLC加工)、サファイアガラス風防(クラリティ・コーティング)。直径39mm、厚さ3.48mm(設計値)、重量76g。日常生活防水
シリーズ初となる5気圧防水を達成した超スリムな光発電モデル
シチズン「エコ・ドライブ ワン(5気圧防水ステンレスモデル)」Ref.AR5060-58E 44万円
ケースバックのない2ピース構造を採用し、超薄型ながら5気圧防水を実現したエコ・ドライブ ワン。ステンレススチール製のケースとブレスレットには、美しい色合いと傷への強さを同時に成立させるデュラテクトプラチナを施す。
スペック:クオーツ(光発電エコ・ドライブ/自社製Cal.8826)。ステンレススチールケース&ブレスレット(デュラテクトプラチナ加工)、サファイアガラス風防(クラリティ・コーティング)。直径38.0mm、厚さ3.88mm(設計値)、重量96g。5気圧防水
問い合わせ先:シチズンお客様時計相談室 TEL.0120-78-4807 https://citizen.jp/
- TAG