11月3日、国内6店舗目となるIWCブティックが日本に誕生した。ブランドが新たな販売拠点として選んだのは東京・新宿。すでに取り扱い店もあるエリアでの新展開にどのような意図があるのか。オープン前日のブティックを取材した。
TEXT/Daisuke Suito(WN編集部) Photo/Kensuke Suzuki(ONE-PUBLISHING)
ガラスのファサードと若いスタッフでカジュアルな雰囲気に
新宿駅の東口。待ち合わせ場所として使われることも多いスタジオALTAの前を通り過ぎ、そのまま伊勢丹方面へ向かう途中にIWC 新宿ブティックはある。取材日に通過した新宿駅から新宿三丁目駅へと続く地下通路にもデジタルサイネージに広告も展開。世界一のターミナル駅においてはとても効果のある取り組みといえよう。今回の出店について、副店長となるアシスタント ブティック マネージャーの平 幸人さんに聞いた。
「この新宿というエリアは、今までの店舗よりも圧倒的に人通りが多いのが最大の特徴です。私たちはこれから若い世代の人々にも注目されるブランドでありたいと考えています。落ち着いた雰囲気がお好みの方であれば、すでに私たちには銀座のブティックがありますので、よりカジュアルにご来店いただけるエリアとして新宿を選択したのです。そうした意図があるのでブティックの外側からでも店内が見渡せるようになっていますし、スタッフも気さくな若手が中心となっています。」(平さん)
すでに実績ある時計店や売場はあるものの、時計専業ブランドとしてブティックを構えたのは、筆者の知る限りでは今回のIWCブティックが初だ。その点では出店を決める理由は確かにあるだろう。
「有名店があるからこそ、今まで時計ブランドのブティックができなかったのかもしれませんね。ただ、私たちは、かつてアメリカからスイスに渡ってブランドを立ち上げた創業者の開拓者精神を受け継ぐブランドですので、魅力的な場所があればそこを目指すのは自然な流れと言えるでしょう。個人的な話をすると、私は2014年の銀座ブティック立ち上げメンバーでした。その当時、私たちのブティックを除いて今ほど銀座の並木通りに時計ブランドのブティックはなかったのです。それが今では時計ブティックが林立する通りになっていますよね。そうした前例があるので、今回の新宿進出も時計界の切込隊長という気持ちでいます(笑)」
友人・知人、仕事仲間に家族でも訪れやすい店内
店内は、都心としてはかなり広く売場面積を確保しており、グループでの来店にも対応可能だろう。品揃えもブティックらしくかなり豊富に揃っている。ポートフィノの最新作やレーシンググリーンのパイロット・ウォッチなどのブティック限定を含む希少モデルまで、ひと通りのコレクションが並んでおり見応えがあった。だが、直近の話題作である「パイロット・ウォッチ・マークXX」は展示されておらず、少々残念だった。その気持ちを平さんに伝えると、「とても好評いただいているモデルですので在庫を切らすこともありますが、新宿ブティックにないモデルでもお取り寄せなどご要望には可能な限りご対応しますので、お気軽にお声がけください」と答えてくれた。
–筆者は取材の翌日、夕方から行われた関係者向けのオープニングレセプションで再び新宿ブティックで平さんと話すことができた。果たしてオープン初日、11時から17時までの営業時間内でのどのような感触が得られたのだろうか。
「初日から多くのお客様にご来店いただき、おかげさまで目標としていた売り上げも達成できました。ブランドのことをよく知っている方もそうでない方も、さまざまなお客様がいらっしゃって、あっという間に1日が終わったというのが正直なところです。ただ、オープン前に期待していたように多くの方と接点を持つ店舗としてのポテンシャルがあることはよくわかったので、とてもやりがいを感じています」
かなり挑戦的な取り組みだという筆者の第一印象は、今回の取材でブランドの歴史的にも理にかなっていることがわかった。だが、人は多くともそこに高級品を購入する文化が根付いていなければ難しい状況に立たされるだろう。確かに新宿は日本で最も人通りの多いエリアであり、ポテンシャルは未知数。これからインバウンド需要も増える中、11月に誕生したIWC 新宿ブティックが目前に控えたホリデーシーズンから2023年以降にどのような顧客を獲得していくのか。他店舗との共存は可能なのか、新宿の路面ブティックとなって売れ筋に変化はあるのかなど、時計専門メディアとしての興味は尽きない。今回の人気ブランドの新宿進出は、今後のラグジュアリーウオッチブランドの趨勢を見極めるうえで重要な指針となりそうだ。
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